「自分も受け継いでいる小さな価値観がある。どんな困難があっても、僕らにはそれを乗り越える強さがあると。

母は明るい人で、自分が疲れていても、兄弟と僕のために時間を割いてくれた。

いまは母がくれた愛を娘や恋人に注ごうと思っている。

母を亡くした時は不安のどん底にいるようだった。仕事をして帰宅する、そんな日々を送るロボットのような気分だった。

サッカーも楽しくなくてね。やらなければいけないから、プレーしているだけだった。

本当にやめようと思っていたんだ、もはや意味を見いだせなかったからね。

でも、ベンフィカのスタッフは常に電話をくれて、君の可能性を信じているから戻ってきてほしいと頼まれた。

父は事態を落ち着かせてから、僕に説いた。父も兄弟も僕を必要としていると。もう父はスイスには戻れないので残るしかなく、続ける強さを身につけて欲しいと。

すでにベンフィカとはプロ契約を結んでいて、自分のお金の多くは家族を支えるために使っていた。だから、またプレーすると決めたんだ。

最初は簡単ではなかった。自分には強さも意欲もなかったけれど、父との会話やこのスポーツへの愛で全てを乗り越えることができたんだ。

試合への愛は徐々に戻ってきて、笑顔も少しずつ戻ってきた。

それが人生さ。どんなに大きな喪失があっても、乗り越えるしかない。

戦士についての本を多く読んだし、心に響くものもあった」