ジーコサッカーの中身がエロゲーになった理由

インタビューの後、当時の事情に詳しい編集部Qにこの話を伝えるとその背景が理解することができた。つまりこういうことだ。

当時スーパーファミコンのソフトは軒並み1万円前後と高かった(ジーコサッカーは定価9,800円)。

しかし地域格差も大きく、秋葉原の電気街では当時有名だった安売り店(メッセサンオーやゼット、ソフマップなど)が発売日にはもう2~3割引きで売っていた。ということは売れない作品は値崩れを起こすのも早かった。

『ジーコサッカー』はその中でも歴史的なスピードで「ワゴンセール」の常連になったソフトだ。売れないので問屋が発売前から激安で卸していたとか、EAの後のソフトで「もうスポーツゲームはこりごりだ」というフレーズが出るなど、数々の伝説を残している。

ちなみに後年ジーコが他のゲームを監修した際に「これまではプロモーションとかで協力しただけ(意訳)」とぶっちゃけている。

1993年頃の秋葉原の様子

そんな状況に目を付けたのがアンダーグラウンドなソフトウェア業界である。

当時、任天堂が許可をしたゲームとは別に、“ちょっとH”なソフトがアングラで売られていた。雑誌の裏とかの怪しい通販を見たことがあるという人がいるかもしれない。

スーパーファミコンのソフトが高騰した理由は、このソフトウェアのROMと呼ばれる基盤も高かったことがある。アングラなメーカーは売り上げがたくさん立つわけでもなく、ROMの仕入れ価格が高かった。

そこで閃いた“天才”がいた。ジーコサッカーは最安では100円や300円といった値段で取引されていたこともあり、ROMを買うよりもジーコサッカーを買ってそのROMを書き換えたほうが安上がりだったのだ。

その結果、中身はアングラなソフト、外面はジーコサッカー(の上にラベルを貼っただけ)という異形のソフトが誕生することになった。

そう、男性はその異形なソフトを求めて『ジーコサッカー』を買い漁っていたのだ。

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筆者は今回この話を初めて聞いたのだが、一部ゲーマーたちの間では都市伝説として有名だったようである。

「100本は買ってないですけど3~40本ぐらいは買ってると思います。宝くじを買う感覚ですね」

最後に淡々とこう語ってくれた男性。サッカーファンとしては何とも複雑ではあるが、彼にいつかお目当てのエロゲーが当たることを切に願いたい。

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