ポゼッションスタイルの定着に必要なのは……

直近5シーズンで4度のリーグ優勝に輝いた川崎と2019年シーズンにリーグ制覇を成し遂げた横浜FMは、いかなる相手を目の前にしてもポゼッションスタイルを貫き、誰が出ても崩れることなく戦える戦術的完成度の高さが群を抜く。とはいえ、この2クラブも栄光を掴むまでに紆余曲折があった。

以前から攻撃的なサッカーを標榜していた川崎は、2012年シーズン途中から指揮を執った風間八宏氏が現在に繋がるポゼッションスタイルを構築。

後を受けた鬼木達監督が守備面の強化を図って攻守のバランスを整えると、2017年シーズンに悲願の初タイトル(リーグ優勝)を獲得。そこからの充実ぶりは周知の事実だ。

一方の横浜FMは、2018年シーズンにアンジェ・ポステコグルー氏(現セルティック監督)が就任し、それまでの堅守を武器としたクラブカラーから、「ポゼッション&ハイプレス」をコンセプトとした新機軸へと舵を切った。

大胆なスタイル変更の影響は大きく、就任1年目は12位で終える形となったが、翌2019年シーズンは失点数を大幅に減らしてリーグ制覇を実現。クラブにタイトルをもたらしたポステコグルーは2021年シーズン途中にスコットランドへと渡ったが、後任のケヴィン・マスカット監督がコンセプトを引き継いで2位でフィニッシュした。

現在のJ1を牽引する2クラブの例を見ても、ポゼッションスタイルの構築および定着にはそれ相応の時間がかかる。

大幅なスタイルチェンジから2シーズンでタイトル獲得(しかも長丁場のリーグ戦)を実現した横浜FMは例外的なケースかもしれないが、選手間の相互理解がカギを握るポゼッションスタイルを植え付けて、そこから結果に結びつけるには時間を要する。

「ローマは一日にして成らず」ということわざがあるが、ポゼッションもまた一日にして成らずなのである。