日本代表が本日対戦する予定となっているサウジアラビア代表。中東では最強クラスのチームであることで知られ、ワールドカップにも数多く出場してきた。
海外からも多くの監督、選手を受け入れており、現在は国内リーグ1部の全チームが外国人監督に率いられているほか、各クラブは7名まで外国人選手を獲得できる。
そのサウジアラビアで代表チームを指揮しているのが、フランス人監督のエルヴェ・ルナール氏だ。
フランスで育成の名門として知られたカンヌの下部組織でプレーしていたものの、プロになることはできず、選手としてのキャリアはほとんどない。
30歳で指導者の道に進み、下部リーグで実績を積んだあと、クロード・ルロワ監督のアシスタントに就任し、アフリカで評価を上げていった。
2008年から指揮したザンビア代表では、2010年のアフリカネーションズカップでグループステージ突破、2012年大会では同国初の優勝に輝くというミラクルを起こした。
ザンビアでは英雄的存在であり、そのトレードマークの白いシャツから洗剤のCMに出演したことも。
【動画】エルヴェ・ルナール監督が出演した粉末洗剤『BOOM』のCM
そしてルナール監督の珍しい経歴として、アマチュア時代には8年もの間「清掃員として働いていた」ということがある。後に自分の清掃会社も立ち上げていたとも。
早朝からビルの掃除を行い、そして夜は所属するアマチュアチームで練習に出る…という生活を続けていたそうだ。
2012年アフリカネーションズカップ決勝の前に、『Reuters』のインタビューでエルヴェ・ルナール氏は以下のように話していた。
エルヴェ・ルナール
「私は選手名鑑には含まれていないだろうね! 8年間ゴミ掃除をして、そしてネーションズカップの決勝で指揮を執るわけだ。サッカーはまるで魔法みたいだよ。
(カンヌ時代は)私の頂点だったね。でもデサイーやデシャンなどのトップ選手と一緒にプレーして、すぐに自分はヘタなんだと気付かされた。結局平均的な三流の選手に落ち着いたよ。
アマチュア時代の事は良く覚えている。毎朝3時に起きて、ビル掃除をしていた。辛かったけど、その経験は今とても役に立っているよ。
我々のプレーヤーのほとんどは、マンチェスター・シティのようなトップクラブに所属している者たちとは全く違う環境にいる。しかし、私はいつも自分を信じている。今我々は決勝戦でプレーし、そして勝たなければならない。例えどんなことがあろうが、ね」
このあとザンビアはアフリカネーションズカップ決勝で勝利。ルナール氏は試合中に怪我をしたジョセフ・ムソンダを「お姫様抱っこ」して祝福の和の中へと運んでいった。
あれから9年が経ち、ルナール監督は2015年にコートジボワール代表を率いてアフリカネーションズカップを再び制覇。モロッコ代表でワールドカップに出場し、2019年にサウジアラビアの監督に就任した。
また、2017年にはブルーノ・メツ監督(2013年に癌で死去)の未亡人であるセネガル人女性ヴィヴィアン・ディエイと結婚し、充実した生活を送っているそうだ。