2020-21シーズンにフットボールリーグ・チャンピオンシップ(2部)のプレーオフを勝ち抜き、プレミアリーグ昇格を成し遂げたブレントフォード。

そのオーナーを務めているのはマシュー・ベンハム氏。彼はMLBで流行した「マネーボール」理論をサッカーに持ち込んだことで有名だ。

ブレントフォードの他にもデンマーク1部のミッテュランを所有しており、その2つのクラブで自身の経営理論を現場に落とし込んでいる。

11歳の頃からブレントフォードのサポーターだった彼は、1989年にオックスフォード大学の物理学科を卒業し、金融機関で働き始めた。バンク・オブ・アメリカの副社長にまで上り詰めたあと、2001年にスポーツギャンブルの世界に足を踏み入れた。

ベッティング会社のプレミア・ベットに入社し、分析に基づいたギャンブル予測システムの開発に従事し、プロギャンブラーのトニー・ブルーム(現在ブライトンやウニオン・サンジヨワーズなどのオーナー)の下で自身も賭け士としての力量を高めた。

そして2003年に退社してからしばらくはギャンブラーとして活動し、2004年には自身のベッティング統計会社Smartoddsを設立した。

数年間に渡って集積されたアルゴリズムや統計データを提供するサービスで、このビジネスは大きな成功を収めている。

ブレントフォードとの縁が再びつながったのは2007年。クラブは大規模な財政難に悩まされていた。

サポーターズトラスト(ファングループ)はクラブの買収に動いたものの資金が足りず、ベンハムがそこに70万ドル(およそ7700万円) を貸し付けた。「もしその返済が滞った場合、クラブの保有権を譲渡すること」という条件付きで。

結局2012年、返済がなかったことからベンハムはブレントフォードのオーナーに就任。それ以降、「安く買って高く売る」を体現した補強を続けて、1947年以来初となるトップリーグ昇格を成し遂げたのだ。