しかし、ソーシャルメディアが市民権を得た今日において20-30秒の遅延は致命的である。
今や、Twitterなどを通じて趣味縁で繋がった仲間と感情を共有する観戦はスタンダードになりつつある。
公式アカウントやニュースアカウントによる速報がリアルタイムに流れ、印象的なシーンをめぐってタイムラインが大喜利と化すこともしばしばだ。さらに、一つのプレーやジャッジをめぐって瞬時に多角的な意見が飛ぶその空間は、まさに個人が“ジャーナリスト化”したソーシャル時代の賜物である。
しかし、インターネット配信による遅延はそうした楽しみを奪い去る可能性があるのだ。
“ネタバレ”を恐れるユーザーはスマートフォンから距離を置き、情報をシャットアウトするだろう。現地にいる記者は、『DAZN』ユーザーの“ネタバレ”を配慮しリアルタイムでの実況を渋る可能性もある。
地上波民放や『NHK総合』、『NHK BS1』でテレビ中継がある場合はなおさらだ(この点、通信衛星を使って信号を送波していた『スカパー!』は同報性や大容量の伝送に利点があった)。
サーバーの負荷や配信の安定性などは、時間の経過によってある程度は改善されると踏んでいる。しかし、インターネット配信者がサッカー中継に参入してからというもの、この遅延の問題は未だ解決の糸口が見えていないのが現状であるのだ。
三つ目は、観戦する場所だ。
24日現在、『DAZN』では法人サービスを用意していない。そのため、全国で100店舗以上を展開する英国パブ「HUB」では、現時点でJリーグの店内上映に関して「未定」と発表している。
今季はJリーグがスポーツバーで見られない?人気パブ「HUB」が明かす https://t.co/cLI3faLoCA
— サッカーニュース Qoly(コリー) (@Qoly_Live) 2017年1月26日
これにより、ビールを片手にスポーツバーなどで仲間と楽しくJリーグを見るという経験はしばらく味わえなくなるかもしれない(TVで放送がある場合は別だが)。
こちらも時間の経過によりサービスインされるはずだが、その店舗が高速のインターネット回線を敷いているとは限らない。このように、『DAZN』の参入によってこれまでは「当たり前」だった観戦スタイルのいくつかを見直す必要が出てくるのは間違いないだろう。
【Qolyインタビュー】パリ五輪出場の東京ヴェルディMF山田楓喜、トッテナムのクルゼフスキを「自分の究極系」と語るワケ