飛行機の機内では、離陸前に機内説明や緊急事態の行動手順について説明する「安全ビデオ」が流される。
このビデオの中でCAたちは、老若男女が理解できるようジェスチャーを交えて説明している。
そうしたお馴染みのビデオをモチーフとし、ベンフィカは今回の演出にエミレーツ航空のCAたちを起用したのだ。
例えば"This stadium has 32 doors(このスタジアムには32の通用口があります)"というアナウンスだが、これは明らかに「安全ビデオ」を意識したものである。機内のビデオでは、飛行機の扉についてこのようにして説明する。
このアナウンスの部分でスタジアムが湧いているのは、おそらくファンたちがそうした演出であることに気付いたからであると思われる。
そしてアナウンスはこのように続く。
「これから入場してくるベンフィカの選手のために、準備がございます。
皆さまのカバンをしっかりと足元に置いていただき、電子機器がおしまいになられていることをご確認ください。
そうすることで、チームに相応しいだけの最大限の声援を送ることに集中できます。
それでは、スカーフに関する説明にしっかりとご注意いただきますようお願いします。
“ベンフィクイズム(ベンフィカに熱狂的であるということ)”の証として、スカーフを肩の上から首に巻いてください。そして試合中、離さないようにしてください。
ゴールが決まった時には、スカーフは自動的に頭上に上がることになるでしょう。
スカーフを頭上に掲げ、いつものように呼吸をしてください。
お子さんをお連れのファンの方は、予め抱きかかえる姿勢をご確認ください。
さて、まもなく試合が開始されます。
エミレーツ航空は皆さまのご好意に感謝いたします。 皆さま試合をお楽しみください」
この試合に訪れたサポーターは、まるでこれから90分のフライトが始まるかのような錯覚にとらわれたのではないだろうか。