大津祐樹や森岡亮太、金崎夢生など、Jリーグ、さらには日本代表レベルでも本格的なフットサル経験のある選手が最近出てきている。
では実際、フットサルの何がサッカーに役立つのか?を先日『サッカーで大事なことは全てフットサルで学んだ』という著書を発表したサッカーライターの北健一郎氏に聞いてみた企画。その第3回をお届けしたい。(第2回は こちら)
今回はチェルシーのブラジル代表MF、オスカルの得意技!
3.オスカルのトゥーシュート
トゥーキックでタイミングをずらす
2014年にブラジルで行われたサッカーのワールドカップ。その開幕戦・ブラジルvsクロアチアではフットサル発のテクニックからゴールが生まれました。ブラジルの3点目、オスカルが打ったシュートはツマ先でインパクトした「トゥーキック」だったのです。
トゥーキックは「足裏」と並んで、フットサル的なプレーの代名詞です。トゥーキックのメリットは打つまでのモーションが小さいこと。サッカーで一般的にシュートを打つときに使われるインステップキックでは、「イチ・ニ・サン」という3段階のリズムで打ちますが、トゥーキックは「イチ・ニ」の2段階のリズムで打たれるので、GKはタイミングが合いません。
このようなトゥーキック技術はブラジルで行われていたフットサルの前身となった「サロンフットボール」が発祥と言われています。サロンのボールはずっしりと重たく、足の甲(インステップ)で打つと痛かったので、足の中で最も硬いツマ先で打つようになったそうです。
オスカルは試合後にゴールについて「〝ロマーリオ・スタイル〟さ。フットサルで学んだものだよ」とコメントしています。ロマーリオとはブラジルの伝説的なストライカーで、GKのタイミングを外して、トゥーキックでシュートを決めるプレーを得意としていました。ロナウドやロナウジーニョなどフットサル出身のブラジル人選手はトゥーキックを普通に使います。
特筆すべきは、オスカルはゴールまで20メートル以上ある位置からトゥーキックを狙ったこと。ドリブルをしながらGKがどういうポジションをとっているのか、どんな構えをしているのかを見て、「このタイミングで打てば決まる」とひらめいたのでしょう。
ゴールが小さいフットサルでは、サッカーのようにコースを狙ってシュートを打っても防がれてしまいます。そのため、シュートはコースよりもタイミングを重視します。実際にオスカルのゴールも最高のコースに飛んだわけではありませんでしたが、GKのタイミングを外したことによって決まったのです。(北健一郎)
このようなシュート技術の向上に加え、フットサルはコートが狭いためシュート機会自体が多い。よって、「ゴールを決める」という成功体験を積む場としても優れているというのが個人的な印象だ。
ゴールを決め慣れていないと、決定機にどうしても力が入ってしまうもの。フットサルとはいえ、実戦でゴールを決めきる経験というのはそれを“日常”に近づける手助けをしてくれる。
『サッカーで大事なことは全てフットサルで学んだ』
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北健一郎プロフィール
1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経て、フリーライターとしての活動を始める。2005年からサッカー専門誌・ストライカーDX(学習研究社)の編集者として働くかたわら、フットサル専門誌・フットサルナビ(白夜書房)を中心に原稿を執筆。2009年3月、ストライカーDX編集部を離れて独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。