大津祐樹や森岡亮太、金崎夢生など、Jリーグ、さらには日本代表レベルでも本格的なフットサル経験のある選手が最近出てきている。
では実際、フットサルの何がサッカーに役立つのか?を先日『サッカーで大事なことは全てフットサルで学んだ』という著書を発表したサッカーライターの北健一郎氏に聞いてみた企画。その第2回をお届けしたい。(第1回は こちら)
今回はバルセロナの元スペイン代表MF、チャビ・エルナンデスのこんなプレーをフィーチャー。
2.チャビのボールを受ける前の首振り
首を振る習慣が身に付く
「もっと首を振れ!」
サッカーの試合中、監督やコーチが選手にこんな声をかけていることは珍しくありません。しかし、ただ「首を振れ」と言われても、どんなところを見ればいいのか、どのタイミングで首を振ればいいのか、イマイチわからない……という選手も多いはず。
まず「首を振る」という行為の目的を整理しておきましょう。タイミングはボールを受ける前です。人間の視野は180度ぐらいなので、自分の後ろの状況を確認するためには、首を振らなければいけません。首を振って、相手がどこから寄せてきているのか、味方の選手がどんな動き出しをしているのか、どこにスペースが空いているのか、そうした情報を素早くインプットするのです。
スペイン代表とバルセロナで司令塔として活躍したチャビが1試合に首を振る回数は何回だと思いますか? 正解は550回! 常に周りの状況を確認していることがわかります。だからこそ、チャビはパスミスやボールを奪われることが極端に少ないのです。
首を振って、周りを見るという習慣は大人になってからでは身に付きづらいと言われています。サッカーのようにピッチが広く、選手の人数も多い場合、首を振ったときに得られる情報量は膨大になります。その中から自分にとって必要な情報を選んで、整理しなければいけません。
サッカーで首を振ったときに、正しく情報をキャッチできるようにするためには、フットサルで訓練しておくことがオススメです。フットサルはピッチが小さく、選手の人数も少ないので、サッカーよりも「何を見るべきか」が明確だからです。
ボールを受ける前に首を振ることには、もう一つの効果があります。首を振って相手を見ることで、奪いにくる相手に「わかっているぞ」というメッセージを発します。そうすると、相手は「奪いに行ってもかわされるかもしれない」と寄せるのを躊躇します。自分の周囲に〝バリア〟を張るようなイメージです。(北健一郎)
「何を見るべきか」というのはサッカーにおいて実に重要なことで、ファンでも実感できる部分だろう。最初はボールばかり追っていた人も、気づけば周りの選手の動きやボールがラインを割れば審判など見るべき場所が定まってくる。
ただ、観客は仮にラインギリギリまで寄っても視界が180度で足りるのに対し、プレーヤーに必要なのは360度。その膨大な情報から必要なものだけを瞬時に取り入れる能力を身に着ける上で、フットサルでのプレーは役立つのだ。
『サッカーで大事なことは全てフットサルで学んだ』
http://www.amazon.co.jp/dp/4865351868
北健一郎プロフィール
1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経て、フリーライターとしての活動を始める。2005年からサッカー専門誌・ストライカーDX(学習研究社)の編集者として働くかたわら、フットサル専門誌・フットサルナビ(白夜書房)を中心に原稿を執筆。2009年3月、ストライカーDX編集部を離れて独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。