現ユベントス、元ACミラン指揮官であるマキシミリアーノ・アッレグリが執筆したUEFAコーチライセンスの卒業論文「3MFにおける各MFの特性」から、アジアカップ2015における日本代表の中盤の構成について読み解くコラム。
今回は後篇。(中盤の底の「4番」にスポットを当てた前篇はこちら)
8番と10番。役割の異なる2人のセントラルハーフ。
4番の前に並ぶことになる2人のセンターハーフを、アッレグリは「8番」と「10番」に分類した。過去に指揮したACミランではノチェリーノやフラミニ、ムンタリ、モントリーヴォ、現在のユベントスではマルキージオ、ポグバ、ヴィダル、パドインなどが使われているこのポジション。こちらについても、アッレグリが求める能力について並べて行こう。
まずは、2ポジションに共通すべき特性だ。
・4番と比べると運動量が求められることから、スタミナ面で優れた選手である必要がある。
・コンビネーションの中から攻撃に絡む事はどうしても増えるポジションであることから、クロスなどの能力は高い方が良い。
特に、攻撃的な「10番」にアッレグリが求めるものは、下記のようになっている。
・数的有利を作り出す上でのドリブル能力。
・優れたパス能力。
・遠距離からのシュート力。
・概して、優れたプレー速度。3人のアタッカーで数的有利を作り出して、簡単に崩すことが理想。
これと比較して、8番に求めるものは、
・戦術的に優れた理解力を持つこと。
・10番と比べて、組んだMFを助ける意識が高いこと。
・相手がボールを持っていない時に、質的な貢献が出来ること。解りやすく言うと運動量。
・フィジカル的な強さとヘディングで競り勝つ能力。
・10番と比べるとテクニック面は劣っていても構わないが、攻撃において遠距離からのシュート能力は必要。
・ボールの回収力と、全体のバランス調整を助けるバランス感覚。
では、日本代表に当てはめてみよう。レギュラーとしてプレーした遠藤と香川は、「8番」というより2人とも「10番」に近い。遠藤はむしろ「4番」的な特性を強く持つ選手とも言えるかもしれない。
控えとして出番がいくつかあった柴崎は「8番」だが、守備においては物足りない部分が目立った。「質的な貢献」面では献身的に走り回ったものの、周りのバランスを調整するような部分では物足りないと言わざるを得ない。また、一朝一夕ではどうしようもないことではあるが、彼は空中戦やフィジカルの競り合いにも弱い。
「4番」として起用された長谷部が「8番」としての特性を強く持っていることも当然ながら見逃せない。本来クラブなどでは「8番」としての役割でプレーすることが多いことから当然かもしれないが、彼は底でプレーするよりも「8番」の方が輝いたはずだ。戦術的な知識面を補う豊富な経験があり、「質的な貢献」と、「味方を攻守において助ける意識」においては申し分ない。
この「8番」としての特性では日本代表において長谷部に勝る選手はいないだろう。更にその競り合いでの思い切りも、後ろにサポートをこなす「4番」がいることによって更に生きる。