一般的に、Jリーグのスタジアムは安全レベルが高いとされている。
そのことはJリーグが定める安全理念の中でも触れられており、「世界に誇れる安全で快適なスタジアムづくり」の実現を目指し様々なルールが設けられ、Jクラブもこれらを遵守している。
誰もが気軽に訪れることのできるスタジアムは、地域密着を掲げる私たちのリーグにとって必要不可欠なスローガンだろう。今後ともJリーグには、世界に誇れるようなスタジアム環境の整備に努めてもらいたい。
そんなJリーグの素晴らしさが垣間見えた感動的なメッセージビデオが、2011年に話題となった。
2011年シーズンのJ1第14節ヴィッセル神戸対ベガルタ仙台戦のキックオフ前、ホームズスタジアム神戸のオーロラビジョンに流されたそのメッセージは、間違いなくスタジアムにいた人々の心を一つにした。
1995年、阪神淡路大震災で甚大な被害を被ったヴィッセル神戸から、3ヵ月前に東日本大震災を経験したベガルタ仙台およびそのサポーターに向けた応援のメッセージである。
世界的に見れば、こうした試合とは無関係な、いや両チームのサポーターを繋げようとする映像が流れることはそうあることではない。
もちろん、死者を悼みスタジアム全体で黙祷の時間が用意されることはある。しかし、勝ち点3がかかった公式戦の前に相手サポーターへのメッセージ性を持った映像が流れることはそうそうないはずなのである。
こうした文化こそ、Jリーグが大事にしてきた理念から生まれたものである。
また、こうしたものを試合とは切り離して捉えることのできる分別のようなものが、Jリーグのサポーターには備わっている。
当時私は、このスタジアム神戸のメインスタジアムにいた。
どちらを応援するわけでもなく何気なく訪れた試合ではあるが、このVTRが流れた直後、スタジアムが一体となるのを感じた。そしてそれは、試合の持つ激しさやゲームの内容に水を差すものでは一切なかった。
それ以来、両チームの対戦では試合前に度々エール交換が見受けられる。課題山積のJリーグだが、世界に誇れる素敵な文化もそれと同じくらい存在していると力強く訴えたい。
阪神淡路大震災から20年。この震災でお亡くなりになられた方々のご冥福を深くお祈り申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。