ブラジル時間の7月8日午後5時。日本時間の9日明朝、その事件は幕を開けた。
ブラジル1-7ドイツ。
毎晩睡眠不足と闘いながら、
ブラジルにとっては史上最悪の敗戦・・そう捉えても過言ではないだろう。
筆者はブラジルのプロクラブでお世話になっている関係もあり、この"事件"の瞬間をサンパウロの街中で大勢のブラジル人達と過ごした。
ブラジルは前半から少し飛ばし気味にハイテンポな試合を展開。積極的な攻撃は見ていて面白いのだが、同時に守備面と体力面での不安もよぎる。そして、その不安は的中した。前半11分、ドイツ代表ミュラーのゴール。
しかしこの時点ではブラジル国内でも勿論溜め息や悲鳴はあるものの、試合を諦めるブラジル人はいなかった。そこから23分、24分、26分、そして29分。立て続けに起こる信じられない光景。
若い男性がテレビに向かって罵声を浴びせている。少女が悲しみ、その母親が祈り、後ろで見ていた観衆には諦め「もう見たくない」
ブラジル人それぞれに様々な反応があったが、私を含め、誰も心の整理がついてないのは明らかだった。
0-5となった後、試合を諦めたブラジル人の中には、不甲斐ない自国の代表を皮肉る様に、「5-0!5-0!今だドイツ!そこでシュート!10-0にしろ!」とドイツを応援する者まで出てきた。
パスが回る度、まるで牛が闘牛士に弄ばれる時かの様に「オーレー、オーレー」の大合唱と拍手。「俺は大きな誇りと愛を持ったブラジル人」という有名な歌を、"ドイツ人"に変えてこれまた合唱。ブラジル人同士で怒鳴り合いも始まった。
試合終了と同時に歌って踊ってお祭りかの様に振る舞う者も多かったが、私はどうしてもそれが逆に寂しく見えた。