昨日行われたW杯準々決勝ブラジル対コロンビアの試合では、見ている者の心を打つあるシーンが話題となった。

試合終了直後、惜敗に涙するコロンビアの背番号10番、ハメス・ロドリゲスに近寄り、まるで母親であるかのような愛情で彼を抱きしめたのだ。

ブラジルのベスト4は12年ぶりの快挙である。しかも、チームは終盤押し込まれた。80分にハメス・ロドリゲスがPKを決めてからというもの、試合はコロンビアペースで同点弾が決まってもおかしくはなかった。さらには、88分にネイマールが腰を負傷しストレッチャーに乗せられ途中退場。スタジアムは一瞬静寂に包まれた。緊張感から開放された安堵で喜びを爆発させ、スタジアムに押し寄せた6万人の観衆と勝利を分かち合うことこそが、優勝という使命を背負わされた彼らがまずとりうる行動に思われた。

しかし、ダヴィド・ルイスは違ったのだ。

初めに断っておくが、ダヴィド・ルイスは来シーズンよりリーグ・アンのPSGでプレーすることが決まっており、ハメス・ロドリゲスはそのライバルチーム、モナコで背番号10を背負う。ハメス・ロドリゲスが残留するのであれば、今後もマッチアップする回数は増える。彼らが無理に仲良くする必要性を、サポーターも求めていない。チームメイトと喜びを分かち合うことの方がずっとずっと気楽だったはずである。

さらに、ダヴィド・ルイスの慰めは、普通の試合でよくあるようなレベルのものでなかった。後輩の顔を直視し訴えかけるその眼差しには確かな愛情があった。その証拠に、ハメス・ロドリゲスは先輩の胸に預けたその顔をなかなか離そうとはしない。いくら慰められているとは言え、試合に負けた事実に変わりはないのだ。気持ちが落ち着くまで一人にしてほしい気分は、プロ経験のない私にでも分かる。

ハメス・ロドリゲスがそうしなかった理由は、ダヴィド・ルイスの言葉とふるまいが彼の何かを動かしたからに違いない。ダヴィド・ルイスの慰めは本能による行動であると察したはずだ。ダヴィド・ルイスはさらに、スタジアムに集まったブラジル代表サポーターに向けて拍手を要求している。チームの選手達に向けたものではない。彼の腕の中にいるコロンビア代表の10番に対してだ。なぜこの男はこれほどまでに模範的な行動をとれたのだろうか。何が彼をこうさせたのだろう。

ダヴィド・ルイスを刺激したのは、実はチアゴ・シウヴァが受けたイエローカードだったのではないかと私は考えている。