結果を見れば快勝。しかもターンオーバーしたメンツでのことだから文句はない。ただ、上2つも揃って快勝してしまったので順位的な喜びも得られたかと言えばそうではない。リーグ戦も終盤、アーセナルの失速とともに上位は非常に面白いことになっている。
【バランスと香川と条件】
序盤はバランスを保つことに苦心していた。フェライニが良くない感じにフラフラしており、ビルドアップがなかなかスムーズにいかず、いい形で前線の2人にボールが入らない。20分経たないうちにヤングが負傷交代しヤヌザイが投入される。試合が面白くなったのはここからだった。
ヤヌザイが入ってもしばらくはヴィジョンが合わずにバランスはイマイチ取れていなかったが、マタのパーフェクトなフリーキックで先制し前半を終えると、後半は前半で合わせたピントが徐々に効果を見せ始める。
フェライニの自由なポジショニングが空回りした感はあったが、右サイドに回った香川が尻拭いに近い形でポジショニングをし、バランスを取ることで前線と中盤のリンクマンとして機能していたことは見逃せない。ミドルサードで積極的にボールに絡み、リズムを作ることでチームを11人にしていた香川はゲームメイカーとして良い動きを見せていた。
ドルトムント時代のようなトップ下としてバイタルエリアを蹂躙する動きは減ったが、元々ボランチとしてキャリアを積み始めたことを考えれば、このような仕事が出来てもなんら不思議ではない。
この日見せた動きは秀逸であったがいくつかの条件が生み出した産物であった。
①ヤングのアクシデントによってヤヌザイが投入され、香川が右サイドに回ったこと。
②相手の左サイドには強力なサイドアタッカーがいなかったこと。
③おかげで後ろはバレンシア1人である程度どうにかなっていたこと。
④香川が守備に追われず、また相手が前から追ってかなかったので比較的自由にボールに絡めたこと。
以上のように、あまりプレッシャーを感じること無くボールに絡み前を向けていたことが、ボールの出し手としてうまいことプレー出来ていた要因だろう。自分を活かすことよりも味方を活かすことに徹したプレーであった。もちろんチャンスがあれば前線に飛び出してゴールを狙いにかかった場面も見られ、虎視眈々と狙うものは狙っている。
特に2点目はコロッチーニのロングボール処理をミスにしてしまった香川の動きは素晴らしかった。リターンからゴールはならなかったがマタの2ゴール目を生み出したのは間違いなく香川真司からであった。
【テクニカルな2列目の3人】
ヤングに代わって投入されたヤヌザイは、最後にゴールネットを揺らしたものの本調子ではなかった。しかし調子は乗らなくともボール扱いはそうおかしくはならない。ヤングと違って常時ルックアップできているためにどこを突けばいいかを常に伺っている。3点目のゴールはスペースを突いた香川にきっちりとボールを出したヤヌザイから生まれたゴールだ。あれがヤングならば香川にきっちり合うボールが伸びて最終ラインを割っているか、パスではなくカットインしてミドルだった姿が容易に想像できる。
相手が容易にボールを持たせてくれれば、ボール扱いに長けた人間が活躍するのは当然だ。もちろん相手がニューカッスルではなく、受けに回らなければならない強豪相手であれば話は変わっていただろう。ただしひとつの可能性として何か光るものが見えたことは事実として残る。
チチャリートも精力的にフィニッシュに絡み続けた。前のコラムでもポストワークが改善されていると触れたが、おかげで2列目との関係性は良好そうに見える。特に香川との連携は何度も見て取れ、お互いの動きをかなりわかっているように見えた。以前チチャリートのポストワークが優れないために相性が良くないと書いたが、それを覆す改善ぶりだ。この調子ならよほど好調で戻ってこない限りファン・ペルシーを優先する必要はどこにもない。
【競争は内外に】
黒子だろうと主役だろうとチームとしてのパフォーマンスを高めるプレーヤーを評価しないわけにはいかない。その上で自身に数字という結果が訪れれば文句のつけようはない。以前とは違い、チームとしてパフォーマンスを発揮できなければ勝てなくなってしまったプレミアでは、潤滑油的役割は非常に重要である。試合に出なければ結果を出す場もない。まずは便利屋扱いでもいい。限られた環境で何かを勝ち取ってこそ、本来欲しかった仕事を得ることが出来る。
内外に認められるパフォーマンスを発揮できるか。新入社員も中堅社員も、フットボーラーもやることに大きな差はない。やるべき仕事の価値を決めるのはまずは自分自身なのだ。受けに回っては人生面白くない。さて、あなたはいかがだろうか。
筆者名:db7
プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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