海外サッカーを見ていると必ず出くわすのが、スタジアムに不法侵入する迷惑なサポーターである。

困ったことに彼らは、それが大舞台になればなるほどそのことに命を注ぐ。主張のため、目立つため、あるいは相手選手を侮辱するため―。その目的は様々だが、海外サッカーと不法侵入者は、それほど切っては切り離せない関係になりつつあるのだ。

その日、ヨハネスブルクのピッチにも困ったファンの姿があった。しかし、それはあまりにもキュートであまりにもイノセントな侵入者であった。

とある少年

現地時間5日、国際親善試合の南アフリカ対ブラジルが南アフリカで行われ、敵地でブラジルが0-5の圧勝を飾った。

ブラジルW杯開幕まであと99日となったこの日、前回大会のホスト国が次回大会のホスト国を迎えるというある種メモリアルなマッチメイクが実現し、両国のサポーターがまもなく到来する世界的イベントの成功をともに祈った。スタジアムには前回大会のマスコットである「ZAKUMI」と次回大会のマスコット「Fuleco」も駆けつけ、スタジアムは祭りに近いムードとなった。

事件が起きたのは試合後である。

突如、どこからともなくピッチへと侵入した少年が現れたのだ。

あまりにも突然の事態に、ステュワードたちは困惑した。なにしろここは2010年W杯の決勝戦が行われたサッカーシティ・スタジアムである。FIFAが定める厳しい査定を通過し、警備にも余念がなかったはず。それなのになぜこんな少年がピッチ上へと侵入したのだろうか。