ピッチの上には背番号8。アンデルソンではない。数日前まで青いユニフォームをまとっていたマタが既に赤いユニフォームを身にまといオールド・トラッフォードのピッチにいる。

クラブレコードの移籍金で加入したマタにかかる期待は、現在のユナイテッドの状況を考えれば救世主級になるだろう。この日見せたプレーのみではそうなりえるかはわからない。ただしポジティブなものになりそうなことはみなさん感じられたことだろう。

【酷かったセンターハーフの組み合わせとマタが見せたクオリティ】

カーディフ相手に行けると踏んだのか、中盤の組み合わせはギグスとジョーンズという組み合わせだった。試合をご覧になった方はお分かりになるかと思うが、ユナイテッドが実に自爆に近い形でスムーズにいかなかったのはここが原因だ。なお、前回の対戦でもクレヴァリーとフェライニという組み合わせで失敗している。

カーディフのクオリティは高いものではなかったが、攻撃に守備に経由しなければならない3列目が機能不全ならば、前後のラインの仕事の質は落ちてしまう。キレていれば文句はないが、この日のギグスは冴えずフラフラしており、ジョーンズもその尻拭いをしつつ自分の仕事もしなければならない状況でキャパオーバー。最終ラインは元同僚キャンベルを抑えるのに苦心しており押し上げられる余裕はない。発射台がしっかりしなければロケットを上手く発射することはできないが、まさにそのいい例といったところだ。芯が通らないのでふにゃふにゃなのだ。

前半はマタが受けに下がりビルドアップに絡むことで何とか形にしていた。ただ、ポゼッションはするものの、精度と判断を誤ったパスを繰り返して質のいいプレーではなかった。後半はマタが受けに下がらなくなったことでよりいっそう問題が浮き彫りになった。あの組み合わせだけは今後二度と見たくない組み合わせのひとつだろう。フィルタリングもビルドアップもできない中盤なんて最悪だ。

一点目はポジティブな形だった。というのも、前回のコラムでバレンシアにゴールとシュートをもっと意識すべきだと述べたが、いきなりそれを表すプレーだった。マタが下がって受け、そこから大きなサイドを変える大きなフィードを左に送ると、エブラに渡り一気にチャンスに。ヤングのクロスにバレンシアが頭で合わせ、弾かれたところをファン・ペルシーが詰めて先制。開始6分ほどのことだった。

プレーの精度はともかく、両サイドからゴールへの意識というものは以前よりも増して伝わってきた。マタがそうさせたのかどうかは分からないが、マタはシンプルにウィングを広く使おうと、長いパスを混ぜてプレーしていた。ルーニーがトップ下で見せるプレーに非常に近いものを感じたのは私だけではないだろう。2点目のヤングのミドルなどはもっと試合中にあってもいいと思っている。そうすることでよりファン・ペルシーらの仕事がしやすくなるはずだからだ。もっとも、この日のヤングはこのミドル以外のプレーは相変わらずで、ボールレシーブの酷さは眼を覆いたくなるものだったのだが。

中盤の出来を差し引いて見れば、マタが見せたプレーは今後にも大きな期待が持てるものと見ていいだろう。ルーニー以外にもあの位置でビルドアップに絡める人材だということに間違いはなかった。ただし、前線の組み合わせ方についてはまだまだ試行錯誤の時間が必要だ。どの組み合わせが一番効果的なのかはこの一試合だけでは分からない。そこに香川が絡めるのか、ルーニーとファン・ペルシーとの共存は、ヤヌザイは、様々な課題がそこにはある。

【童顔の殺し屋、我が家に戻る】

 

" You are my Solskjaer

My Ole Solskjaer

You make me happy, when skies are grey

Oh Alan Shearer, was f*****g dearer

So please don't take, my Solskjaer away! "

時折このチャントを口ずさむ衝動に駆られるのだが、この日は何度声にしたか分からない。現場でも数えきれないほど歌われていた。2OLEGEND、童顔というにはシワが増えたが、その顔が我々にとって笑顔を届けてくれるものだということは未来永劫変わることはないだろう。カンプ・ノウの奇跡だけでこの男を語ることはできない。スーパーサブという肩書だけでは彼の偉大さ表すことはできない。オールド・トラッフォードが我が子を暖かく迎えいれたように、彼もまたオールド・トラッフォードへの帰宅を楽しんでいた。家族との再会は対戦を抜きにしていつも感動的であり、目をつむればそこには美しい思い出たちが映し出される。

 

スールシャールのプレーを頭に思い浮かべて懐かしんでいればそこに出てくる背番号11。生まれはスールシャールが2月、彼は11月。ただし生まれは共に1973年。ああそうか、モイーズはだからギグスを使ったのか。いや、そうじゃないかもしれない。いずれにせよ勝ち点3を得て、マタが無事にデビューしてスールシャールを再会出来たのだから個人的にはお腹がいっぱいだ。もちろんプレーの良し悪しは別腹なのは言うまでもない。


筆者名:db7

プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
ツイッタ ー:@db7crsh01

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