今年5月CL決勝が史上初のドイツ対決になり、メディアは「ドイツの時代の幕開けだ!」と騒ぎ立てた。しかし実際は今シーズンのCLを見ればわかる通り、ドイツで欧州を席巻する力を持つのはバイエルンとドルトムントのみである。シャルケもレヴァークーゼンも5節終了時でグループリーグ3位と、当落線上である。
つまり実際はドイツ国内のリーグ状況は二強時代…のはずだった13節が終了するまでは。 そうその13節とは「ドイツ版クラシコ」ことドルトムントvsバイエルンである。両チーム多くの怪我人を抱えていたとはいえ、ドイツ時代を牽引するチーム同士の最強対決には注目が集まった。それゆえにアウェイのバイエルンが3対0でホームチームを下したのはあまりにショッキングであった。内容がどうであれ、スコアが示す衝撃の意味は「バイエルンは国内で強すぎるのではないか?」ということだった。これがきっかけでブンデスリーガはスコティッシュプレミアリーグのように一強時代に突入してしまうのではという意見が様々なところから聞かれた。さらについ先日ドルトムントがレヴァークーゼンに敗戦を喫したことによりドルトムントと首位バイエルンの勝ち点差は10まで開き、この論調は加速する可能性がある。
しかしどうだろう。バイエルンが強すぎることで生まれる一強時代は悪なのか?
確かに今はJリーグのように最終節になっても3チームに優勝する可能性があるなんて状況が生まれることは皆無だろう。
ただもっとビジネスな側面から見れば、話は変わってくるはずだ。CLでバイエルンだけでも勝ち進めば、リーグランキングで母国にポイントを還元という形で貢献できる。国内リーグで無敵ならばよりCLに専念し、ポイント稼ぎを容易にすることができるかもしれない。またバイエルンがヨーロッパの大会で活躍すれば、ブンデスリーガは新たな顧客を獲得できる可能性が生まれる。それはTVの前でブンデスリーガを見る人かもしれないし、スタジアムまで来る人なのかもしれない。知っての通り、バイエルンのホームゲームは毎試合満員である。さらにアウェイゲームでもバイエルンのスター選手目当てにいつも多くの人がスタジアムに足を運んでいる。
つまりバイエルンが強いことでブンデスリーガやライバルチームは恩恵を受けている。
また、一強時代は新たな時代を呼ぶ。04-05、05-06のバイエルンの連覇からドルトムントの連覇までの間、多くの王者が生まれた。連覇が生まれるような時代があるからこそ、レベルの高い戦力均衡の時代がやってくるのだ。もっとチーム差の実力をなくし均衡化するための努力をすべし、なんて意見がいかに無意味なことか理解できるだろう。強いチームがあるから強いチームが生まれる。バイエルンはバイエルンでCLを連覇するために新監督を招聘し、新戦力を迎え入れたわけである。そこには上層部の人知れない努力があっただろう。このような対応をバイエルンにさせたのも、ドルトムントが国内リーグを連覇する時代があったからだ。もっとも、多くのライバルチームは「バイエルンは強すぎる」なんて泣き言を洩らしていないし、リーグの均衡化も求めていない。そう言っているのは外部の人間であり、現場の人間はそのバイエルンを打ち倒すために対策を立て、スカウトは戦力を世界中探し回っている。
バイエルンの一強時代がそう長く続くとは到底思えない。それが終焉を告げたとき、最後までどこが優勝するかわからないようなリーグが生まれ、ドイツからCLに出場する全てのチームが大会を勝ち進む実力を持っているというからくりだ。
一強で何が悪い?一強万歳。
筆者名:平松 凌
プロフィール:トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター: @bayernista25