招集する選手の選考は監督の考えが反映されるものだが、2つの目的があってメンバーを決定しているのではないかと考えている。

1つ目は戦術の浸透と組織の熟成。ある程度固定されたメンバーで戦い続けることによって、出場している選手間の意思の疎通や組織戦術の深化を行うことができる。世界と比較したとき、決して戦力的に恵まれていない日本が最大限のパフォーマンスを発揮する方法の1つとしてメンバー固定は現実的な策の1つだろう。ここではコンディションこそ万全でもチームの戦力として機能するかわからない戦力よりも、盤石の23人を揃えたいという監督の狙いもあるだろう。

そして2つ目。それは新戦力の“テスト"と“確認"ではないだろうか。上記のとおり我々は試合を通すことでしか代表の現在を知ることができない。しかし監督はそうではなく、数日間の練習すべてがその選手を見極める“テスト"となる。ここで監督の求める水準に達したプレーを見せることが出来れば戦力と認められるが、認められなければ実戦で試す必要はないと判断されてしまうだろう。もちろん過去には清武選手や酒井高徳選手のように戦力と認められ、その後の定期的な代表招集を勝ち取った選手もいる。飽くまでも試合では組織の熟成、そして練習では新戦力の見極めを行っているのではないだろうか。

また“確認"とは何も実力だけの話ではない。性格や宿舎での生活態度など選手の内面を確かめる意味合いもある筈だ。かつて日本代表を支えたゴン中山氏や秋田豊氏は、実力だけでなくその底抜けの明るさや練習熱心な態度が周りの選手への影響やチーム全体の雰囲気作りに一役買うことも期待されてメンバー入りしていたと言わ れている。このような戦力以外の面からも代表を支えられる選手の重要性は監督も重々承知しているはずであり、適任者がいた場合にはW杯に連れて行くかもしれない。

もう一度日本代表の表をご覧いただくと、招集された79人の選手のうち現在海外クラブでプレーをしている選手は21人であることが分かる。なんと実に58人の選手はJリーグに在籍しているのだ。「国内組軽視」や「海外組優遇」といった批判を耳にしたこともあるが、この結果をどう捉えるだろうか。

海外でプレーしている選手はそれ相応の実力を認められて旅立っていった。監督がその実力者の国外で培った経験に期待をかけていることは十分理解に及ぶものであり、Jリーグの選手たちを無視している訳ではないだろう。仮に国内組があまり呼ばれていないとすれば、最終的には監督の志向するスタイルにそぐわないというこ とか。

今回はあくまでも招集人数という数字を比較してきたが、日本代表に残された問題の切り口は無数にあるだろう。これを機にみなさんの日本代表、そしてザッケローニ監督に対する印象が少しでも変わってくれたら幸いです。来年待ち受けるW杯では監督を信じるしかないのだから。


筆者名:小川裕一

プロフィール:試合全体の流れだけでなく選手個人にも注目したい。スペイン代表やバルセロナを中心に見ている自称クレのバルサ好き。国内では地元大宮を応援しています。
ツイッター: @yoooooooooouidx

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