▼Podcastが変えたもの、変えるもの

では、Podcast形式の番組の台頭は、今日のようなソーシャル時代においてサッカーの楽しみ方をどのように変えるのだろうか。

それは、サッカーファンの知的好奇心をこれまでの何倍にも膨らませてくれる点だと私は考える。例えば、応援するチームをお持ちの方は想像してみてほしい。自分が愛してやまないクラブの専門番組を、毎週聞くことができるのだ。そこには一切の利害関係が存在していない。発言権のあるインフルエンサーによる配信ということもあって、内容的にも多くの人から支持や共感を得るだろう。まさに個人がメディア化し、個人がジャーナリストになった典型的な例だと言える。

また、ファンコミュニティの範囲はPodcastを中心に拡がり、その絆をより強固なものへと変化させるだろう。これは何も海外サッカーに限った話ではない。むしろ、すぐに足を運ぶことのできるJリーグやなでしこリーグにこそ、ファンが自ら発信し、サッカーの楽しみ方を何倍にも膨らませる可能性があるのではないだろうか。

そう考えた時、私には一つの懸念がある。それは、サッカー雑誌やサッカー番組の将来の姿だ

マスメディアしか情報収集の手段がなかった時代、私たちはそれに対して全幅の信頼を置いていた。いや、むしろ置くしかなかったのだ。週刊サッカーダイジェストや三菱ダイヤモンド・サッカーが海外サッカーを知る唯一の手段だった頃の話だ。マスメディアの権威は自然と維持されたし、私たちはただそれを信じていれば良かった。

しかし、そこにネットが現れたのだ。

人々は知りたいことを自由に検索できるようになり、マスメディアへの依存度は徐々に低下、更には個人が番組までを始めてしまった。これは、メディア業界にとっては一種のパラダイムシフトと言える。なぜなら、 @ichi301さんが配信している番組は、多くのユナイテッドファンにとってどんなサッカー雑誌より身近で濃く、更には安く、新たな楽しみ性まで帯びた新感覚のメディアだからだ。視聴料は当然無料、配信も各節ごとでCMも広告もない。特別興味のないチームの情報は全く入ってこないし、音声による配信は雑誌より身体性が感じられる。個人が「番組」を配信できるようになったことで、サッカー雑誌及びサッカー番組の権威が以前ほど絶対的なものではないことが可視化されるようになったと言えそうだ。

もちろん、マスメディアだから出来ることもあるだろうし、マスメディアでこそ活きる部分もあるはずだ。しかし、日本中のコアなサッカーファンの間でPodcastによる番組配信が流行し、それに伴いファンの心理に何かしらの変化が現れた時、そういった媒体の位置付けは少なからず変わってしまうのではないかと予想する。

@ichi301さんには、チョークボードを使った戦術分析を動画で配信する構想まであるという。日本全国のありとあらゆるファンの間でこういった楽しみ方が主流になった時、サッカー雑誌やサッカー番組はどのような様相を呈しているのだろうか。「楽しみ半分、怖さ半分」というのが正直な感想だ。

Podcastが変えるもの。それは、サッカーの楽しみ方やコミュニティの在り方だけではなく、周辺のメディア環境こそ本質的なものなのかもしれない。

<「マンチェスターユナイテッドに夢中」のDL及び視聴はコチラ>

Blog:http://www.voiceblog.jp/keening_on_united/
iTunes:http://itunes.apple.com/gb/podcast/manchesutayunaiteddoni-meng/id497231176
または、iTunesのPodcastより「マンチェスターユナイテッドに夢中」で検索

※サーバーの不具合により、現在では直近の3収録のみが視聴可能だそうです。
過去の配信についてはサーバーの不具合解消をお待ちください。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 くわけん
プロフィール 『兵庫県西宮市在住の大学生。競技としての魅力はもちろん、文化や側面としてのサッカーの魅力を一人でも多くの人に伝えたいです。サッカー実況界の神=倉敷保雄さんと写真撮ったことだけが自慢。』
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