先頃、発表されたEURO2012に向けたイタリア代表候補32名のなかで一番のサプライズとなったのはセリエBのペスカーラでプレーするマルコ・ヴェッラッティの抜擢だろう。弱冠19歳にしてセリエBで躍進をみせるペスカーラを牽引するヴェッラッティは類稀なテクニックとパスセンスを駆使する小柄なゲームメーカー。本大会のメンバー23人に入れるかどうか現時点では定かでないが、一躍注目の的となったヴェッラッティについて現地メディアの情報をもとにご紹介する。

1992年生まれのヴェッラッティはペスカーラ県のマイエッラという街で生まれ育った。マイエッラは1208年に建立された Santa Maria Arabona修道院と、ペスカーラに多くの有望なフットボーラーを送り出す地区として知られている。そして2005年、ヴェッラッティもおよそ5千ユーロの移籍金でペスカーラのプリマヴェーラに引き抜かれる。当時は今よりも背が低く、内向的な性格だったそうだが、目には力強さを宿していたという。

2008年、弱冠16歳でトップチームにデビューするとコッパ・イタリア・レガ・プロ対サンジュステーゼ戦でプロ初ゴールも記録、翌シーズンにはセリエBで8試合に出場した。 さらに、2010-11シーズン、ディ・フランチェスコ(中田英寿ともにローマでプレーした元イタリア代表MF)監督のもと一気に出場数を28に伸ばすと、2011年5月には初めてアッズリーニのユニフォームにも袖を通した。

成長著しい若き才能はさらに今シーズン、ズデネーク・ゼーマンが監督に就任したことでさらに勢いを増し、ここ20年で最も有望なプレーメーカーと目されるまでになった。ポジション柄アンドレア・ピルロと比較されることが多いヴェッラッティだが、そのピルロがいるユヴェントスがデル・ピエーロの後継者として10番を用意して迎え入れるのではないかとの噂が強まっている。


ーペスカーラに移籍する際、ユヴェントス戦のチケットを5枚ほど貰ったというのは本当ですか?

「はい。10枚のはずだったんですが・・・」

ーそのユヴェントスへの移籍が噂されています。ユヴェンティーノなんですか?

「母も兄弟もそうです。父はフットボールに興味がなくて」

ーアズーリに選出後、あなたの市場価格は急騰しています。

「そんな感じのことは新聞で読みましたけど、自分にどれほどの価値があるかなんて分かりませんよ(笑)」

ーあなたの身長は169cmです。何かを諦めたことはありますか?

「たくさんありますよ。まず最初にそこで判断されますからね。でも、プリマヴェーラに入ってから変わりました」

ーそのプリマヴェーラ時代、ほとんどあなた一人でミラン相手に勝ったことがありましたね。ミランはあなたを欲しがったけど、それを断った。

「テストを受けるため滞在が数日延びたんですが、家に帰りたくて泣いてしまって。それに、ペスカーラのトップチームでやりたかったんです」

ーゼーマンが監督に就任して、ポジションをレジスタに下げました。コンバートはどうでしたか?

「ずっとポジションを変えるのもありだなと思っていました。提案されたとき、前にもプレーしていたポジションだったこともあり、問題なく移行できると思いました。ゼーマンからは低い位置のほうが合っていると言われ、そのことを信じたんです。今では監督は正しかったと断言できますよ」

ーピルロと同じポジションですね?

「イタリア、いや世界でも最高のMFです。マネしようといつもテレビで彼のプレーを見ています」

ー来シーズンには生でピルロを見れるかもしれません。

「そうなれば素晴らしいけど、シーズンが終わるまでこのことは口にしたくありません」

ーまずは、セリエA昇格を決めたいですね。

「僕らはそれを夢見てます。みんなを驚かせたいんですよ。(セリエA昇格を)誰も考えてなかっただろうから」

ー今週末、アウェーで行われるサンプドリア戦にはロベルト・マンチーニとアッティーリオ・ロンバルド(元イタリア代表MF、現マンチェスター・シティコーチ兼スカウト)があなたとロレンツォ・インシーニェ(ナポリからのローン中の20歳のFW)を視察するため訪れるようです。

「それは知りませんが、嬉しいことですね。僕が知っているのはいつも通り勝利を求めてジェノヴァへ行くということです。盾突くことが許されないゼーマンは常に攻撃的な姿勢でプレーすると同時に結果も求めますから。それに、僕らにとってはセリエA昇格への旅路ともいえるので」

ーいずれにしろ、あなたはプランデッリのお眼鏡に適い、アズーリへの招集を勝ち取った。

「最初はジョークだと思いました。いまでもまだ信じられません。日曜の試合のあと(アズーリの合宿地)コベルチャーノに行くことが待ちきれません。ポジション争いは激しいけれど、監督を悩ませるよう頑張りますよ」


ミランの誘いを断り、ペスカーラに残ったヴェッラッティ。10代にして10番を背負い、チームを牽引する存在にまで成長を遂げた彼がアズーリに選出されたその日、マイエッラの市庁舎にはこんな垂れ幕が掲げられた。

「これまでずっと、あなたはこの街の誇りでした。マルコ、あなたはいまでは国全体の誇りとなりましたね!」

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