今回はインテルに所属するアルゼンチン代表MFリカルド・アルバレス(通称リッキー)にスポットライトを当てていきたい。

開幕当初は攻守の歯車が狂い、一時は降格圏まで順位を落としたインテルだったが、ラニエリ監督が途中から指揮を執ると、「再建屋」であるラニエリ監督が巧みにチームを立て直し、15節のフィオレンティーナ戦から怒涛の7連勝を記録し、EL圏内である5位まで順位を挙げてきた。最近の4試合は1分3敗と調子を落としているとはいえ、一時の泥沼状態からの脱却は見事であったと言える。そのチームにおいて輝きを放ち始めたのが昨夏にアルゼンチンのベレス・サルスフィエルドから加入したリカルド・アルバレスだ。

・リッキーの魅力と課題

リカルド・アルバレスの魅力は卓越したテクニックと抜群のボールキープである。軽やかな身のこなしで相手DFを翻弄し、絶妙のラストパスを味方にプレゼントするプレーや180cmという長身を活かしたボールキープで味方に時間とスペースを与えるプレーこそがアルバレスのストロングポイントなのだ。しかし、そんな長所を持っているアルバレスでさえ、開幕当初はイタリアのサッカーに適応するのに手間取ってしまった。

やはり他国と比べて守備組織がしっかりとしているセリエAの舞台では、攻撃的なポジションでプレーする選手はなかなか自分のプレーをすることが出来ない例が多い。筆者がプレシーズンマッチでアルバレスのプレーを見た限りでは、「インテルは良い選手を補強したものだ」という感想を持っていたのだが、開幕当初はベンチあるいはベンチ外が定位置となってしまった。徐々に「アルバレスの補強は失敗だった」という声も聞こえ始めてきていたが、アルバレスは自らのプレーでこれらの声を封じることに成功し始めている。

アルバレスは前述したようにボールキープ力が非常に高い。しかしそのようなプレーヤーは往々にして球離れが悪いのも特徴でもあり、アルバレスが期待通りの活躍できなかったのもこの球離れの悪さが影響していた。ただ、アルバレス本人が自覚したのか、それとも監督やチームメイトから何か言われたのかは定かでは無いにせよ、アルバレスの球離れの悪さは徐々に解消され始めている。とはいえ、左サイドを猛然と駆け上がる長友には目もくれないシーンが目立つのも確かである。長友は積極的な攻撃参加でチャンスを演出しているが、アルバレスから絶妙のタイミングでスルーパスを出されたシーンはあまり多くない。アルバレスがインテルで確固たる地位を確保するためには、フォワード陣との連携だけでなく、サイドバックとの連携も深める必要があるだろう。


・スナイデルの復帰によって…

また、長期の怪我からチームの軸であるウェズレイ・スナイデルが復帰したことによって、ラニエリ監督が今後どのようなフォーメーションを採用するのか大変興味深いところである。というのも、スナイデルが復帰したことで、アルバレスがポジションを奪われる可能性があるからだ。

確かにスナイデルの適正ポジションはアルバレスがプレーしている左サイドよりもフォワードの下で自由に振る舞うことができるトップ下であり、ラニエリ監督はセリエA第23節ノヴァーラ戦でこれまでの基本システムである4-4-2ではなく、スナイデルとアルバレスを共存させ、ディエゴ・ミリートの1トップとする4-3-2-1を採用したことからも、スナイデルをトップ下で起用するつもりであることが分かる。しかし、スナイデルは中盤の左サイドでもプレーすることが出来るため、アルバレスは安泰という訳にはいかないだろう。

実績、経験値といった面でスナイデルに大きく穴を開けられているアルバレスだけに、しっかりと自分のプレーをアピールしていかなければ、長友との連携にも定評のあるこのオランダ代表の主軸にポジションを奪われる可能性も否定できない。スナイデルと共存することができるのか、それともポジション争いに敗れるのか。今後のアルバレスのプレーぶり、ラニエリ監督の采配に要注目である。

2012.2.13 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援している大学生。今シーズンはプレミアリーグを中心に観ていく予定です。当コラムに関する、感想、意見等がありましたら、下記のツイッターアカウントにどしどしお寄せ下さい。
ホームページ
ツイッター @villarreal442
Facebook
{module [170]}
{module [171]}

【Qolyインタビュー】パリ五輪出場の東京ヴェルディMF山田楓喜、トッテナムのクルゼフスキを「自分の究極系」と語るワケ

大谷翔平より稼ぐ5人のサッカー選手