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去る8月6日、スーペルコッパ・イタリアーナ2011年度の決勝戦ミラン-インテルが開催された。2009年度に続いて会場となったのは北京鳥の巣スタジアム。かつてはアメリカのジャイアンツスタジアムなどでも開催されたことがある。スーペルコッパ・イタリアーナは、前シーズンのセリエA王者とコッパ・イタリアの王者が一発勝負で雌雄を決する大会だが、今回の決勝戦はミラン(セリエA王者)とインテル(コッパ・イタリア王者)によるミラノダービーとなったため、2009年度に比べるとより大きなイベントとなった。

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2009年のインテル対ラツィオの際は倍耐力(Pirelli China)が全面的なスポンサーであったせいかインテルが前面に推されていた印象だった。しかし、今回の試合を見て驚いたのは、10万人近いスタジアムの80%以上がロッソネーリに染まっていたことだ。インテルを応援するネッラズーリはゴール裏に固まっていたのみ。これは2年前のインテル対ラツィオのラツィアーレとまったく同じ状況であり、「前回の盛況ぶりはどうしたのか?」、「あのものすごい数のインテリスタたちはどこへ行ったのだろうか」と問いたくなる状況であった。では、実際2年前はどうだったのか。手元のレポートを元に2年前の状況についてお伝えしよう。

2年前のスーペルコッパ

2009年のスーペルコッパは中国倍耐力(Pirelli China)の大きなスポンサー力が働き、全面的にインテル寄りの大会であった。中国倍耐力は記者発表をインテルとともにホテルで行い、100人近いマスコミ関係来場者、招待客には一人一枚オフィシャルのゲームシャツをノベルティとして配るなど、宣伝に力を入れていた。キックオフ前には中国の歌手がインテルのチームソング”PAZZA INTER”を特設ステージで熱唱。鳥の巣スタジアムはインテルファンを中心に盛り上がりを見せた。対するラツィオはイタリアからの訪中も少なく、ラツィオ側のゴール裏には数が少ないながらも中国人のラツィオファンによるまとまりで大きな盛り上がりをみせる程度であった。

インテルが滞在しているホテルにはファンが連日押しかけてパニックを引き起こした。事件こそ起きなかったが最終的には軍隊がホテル内へ投入されるなど物騒な雰囲気となった。選手達が移動に使用するインテルのロゴマーク入りのバスは中国人ファンによる愛のメッセージでいっぱいになり、白地のバスが真っ黒に。ファンは選手を見かけるとカメラとゲームシャツを持って追いかけた。

北京市内の大型ショッピングモールの一角にはインテルのオフィシャルショップ。店の規模は2階建てで、十分な広さがあった。2009年はこのオフィシャルショップで、連日選手を招いてイベントを開催。サムエルとトルドのイベントの日は、激しいスコールに見舞われたが、200人を超えるファンがスコールを耐えながら店外に行列を作った。

以上が2009年のコッパ・イタリアの概況であり、インテルの大会だったと言って過言ではない。しかし今回はミランの大会と呼ぶのが相応しくなっていた。

前回はインテル、今回はミランが利用したホテル

今回、偶然にもミランの選手達と同じスタジアム付近のホテルに宿泊することになった。なお、このホテルはインテルが前回利用したホテルだった。前回インテルファンがホテルでも大きな盛況ぶりを見せた事を既にお伝えしたが、今回のミランファンはそれ以上の盛況ぶりを示した。常時200人を超えるファンがロビー、玄関と、至る所で溢れかえった。選手が出入りのためにロビーを通る際は、カオスと言うにふさわしい大騒ぎ。停止線として貼られたロープは数十秒で決壊し、押すな、喚けやの大騒ぎ。選手に触ろうと殺到する為、ミラン側の警備員も本気であった。日本同様に、ミランはファンの女性率が圧倒的に高く、全体の6~7割は女性が占めていた。

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ミランと比べてインテルのホテルはどうだったろうか。インテルは北京市内の商業中心部にあるホテルに宿泊していた。出待ちをしているファンいたが、ミランに比べると桁違いに規模が小さかった。30人~50人ほどで男性ファンが中心なのはインテルファンの特徴だろうか。警備の出動も非常に穏やかで、怒号が飛び交うなどということは皆無だった。しかし、2009年度の盛況ぶりは忘却の彼方・・といいたくなるような現状には、中国人の気持ちの移り変わりの速さを感じずにはいられなかった。

ルイス・フィーゴのサイン会

04インテルは6日午前中、インテルオフィシャルショップにて、ルイス・フィーゴのサイン会及び写真撮影イベントを行った。店舗は2009年度の場所から、同じショッピングモール内で移転していた。

今回のイベントは先着順でフィーゴに会えるというものだったが、ショップの前には例に漏れず男性のインテリスタでごった返す。ざっと見て200人はいただろう。フィーゴひとりにこれだけ集まっているのか?!と驚くような人数である。フィーゴが車から降りてくれば、「フィーゴ!」と大歓声が上がる。この状況を見て、実はインテリスタがまだまだ沢山いる、と安心した。

フィーゴはインテルショップの2階で、中国メディアのインタビューを終えると、1階に設置されていたテーブルに着席。フィーゴは発表になったばかりのインテルの新しいシャツを身にまとい、選手時代と変わらない精悍なスタイルを示した。フィーゴは始終笑顔で快くサインや撮影に応じており、彼の人間的魅力も十分感じさせる素晴らしいイベントとなった。

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今回ミラノダービーとあって、前回に比べると桁違いに多くのジャーナリストが現地イタリアより送り込まれていた。もちろん中国側のジャーナリストは前回同様の人数がいたのだが、男女比率は50%50%なところを見ると、サッカーに携わる仕事は男性的なものという位置づけではないように思われる。日本ではまだまだ男性主体な部分が大きい職業だが、こういった部分では中国は進んでいるように感じた。

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試合はミランが逆転勝利を納め、今シーズンの初タイトルを手中に収めているが、スタジアムではイブラヒモヴィッチコールや、ウェーブが沸き起こるなど、中国のファンたちは非常に試合を楽しんでいる様子。

ハーフタイムにはインテルの”Pazza Inter” とミランの“Milan Milan Milan”が映像つきで大画面に流され、インテル側のクルヴァからは超巨大な“倍耐力”のロゴが入ったユニフォームが降りてきた。ミランサイドも大きな横断幕が右から左へ流されていたが、ダービー恒例のクルヴァ対決はインテルの巨大シャツが制したと言えるだろう。


試合後の記者会見では、ミランのアッレグリ監督が優勝カップを持ってにこやかな笑顔で登場。プレスマネージャーが中国人記者団へ渡して記念撮影を許可するなど、非常に明るい記者会見となった。この好感のもてる雰囲気はセリエAらしさだろう。優勝した余裕がもたらしているのかもしれないが、言語の壁を越えて繋がろうとする姿勢はとても素晴らしかった。その後、インテル・ガスペリーニ監督の記者会見へと続くのだが、試合結果をふまえて重苦しいものだった。

その後、私はスタジアムを後にして宿泊先に戻った。エレベーターに乗った際に待って待ってと飛び乗ってきたのは、ミランのパトだった。いいチャンスだと、日本でのクラブワールドカップ(2006年度開催、決勝戦インテルナシオナウ-バルセロナ)、のことを話すと、気さくに「その試合見てくれた?」と笑顔で対応してくれた。疲れているにもかかわらず、ファンが写真を頼むと嫌な顔をせずににこにこするパト。若いながらも非常にしっかりしており、人間性の素晴らしい選手である。

中国で開催された2度のスーペルコッパを観て

前回、イタリア現地からインテリスタのウルトラスが来ていたが、今回インテル側もミラン側も大がかりなイタリア人集団、ウルトラス的な団体はみかけなかった。2度目の開催ともなると、さすがに足が遠のいてしまうのだろうか。スーペルコッパは中国人にとってお祭り騒ぎの一環のようだった。スタジアム周りの活気、集客率の高さはイタリアではなかなか目にする事ができない。私たちと同じアジア人であるが、しかしその集い方には日本人とは違う、一種独特の雰囲気がある。

セリエAにとっても、いまや中国は非常に大切なマーケットだ。とにかく人口が桁違いに多い国だ。貧富の差が激しいと言っても、全国民のたった1%が裕福だったとしても日本の裕福層の人数をはるかに凌いでいる。写真をみてもわかるとおり、ユニフォーム着用率は非常に高く、これだけの人口のいる国のマーケット力は計り知れない。そして中国人の変わり身の早さを見るに、今後も数年かけて市場を開拓するのに相応しい国だ。もしかしたら来年あたりは、ナポリやローマなどセリエAのほかのクラブが大人気になっている可能性を秘めている。

実際、2009年度にはインテルやラツィオのロゴがペイントされた車などが街中を走っているのを見かけた。こういったところにまでお金をかけることができるとなると、サッカーを呼び込むことは、あらゆる部分に経済的な影響を及ぼすことになるだろう。

ふたたび日本でも!

2009年度と2011年度を比べて人々の気持ちの移り変わりの早さを肌で実感すると、欧州サッカーのファンでいるということは一種のファッションのになっているのではないかと感じるのも事実。だが、ファッションの一環であれ、なんであれ欧州クラブの大イベントを国内開催できる手腕・経済力は素晴らしいものだ。近年、欧州各国クラブのアジア進出が活発になってきているが、我々日本はもはやその枠に組み込まれていない。中国とマーケット比較で劣る事が最大の要因だが、3月に起こった東日本大震災の影響も否定する事はできない。それ故に今年の12月に日本で開催予定のクラブワールドカップでは、海外のサッカークラブがまた日本へ来たいと思ってくれるような状況を見せたいと思う。中国、その他アジア圏でのイベント成功を指をくわえてみているだけの日本では寂しすぎはしないだろうか。

(筆: M. Takano)

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