2011-12 欧州クラブの補強戦略を占う!! vol.4 (アーセナル編)

日々、様々な移籍、退団の話が飛び交う中、Qoly編集部ではその情報を吟味した上で、大胆にも来季の欧州クラブの補強戦略を占ってみることにした。第四弾はアーセナル編!!

今季を振り返る

リーグ優勝の可能性が消滅し、多くのサポーターの気持ちは既に来季以降へ向いているかもしれないが、その前にタイトルに近づけなかった要因を簡潔にまとめる必要があるだろう。まず、最も大きな問題は、周知の通り、ゴールマウスに不安を抱えていたことにある。マヌエル・アルムニアからはかつての輝きが失せ、ウーカシュ・ファビアニスキ、ヴォイツィエヒ・シュチェンスニの才能に賭ける以外に道がなくなり、最終的にはケガ人続出のためにイェンス・レーマンを呼び寄せるハメになったこの現状を憂う声は強い。ここ数シーズンのアーセナルは攻撃面ばかりが注目されてきたが、強かった時代はいつの時代も守護神が存在感を見せていた。どのチームにも言えることだが、このポジションが安泰にならない限り、黄金期を築きあげることはできない。そして、それは同様にDFラインにも言えることだ。守備の要であるトーマス・ヴェルマーレンが不在になると同時に著しく脆弱化した守備陣も不安材料であったことは明確だ。他にもエースであるロビン・ファン・ペルシーの故障離脱など、マイナス要因は発見できるが、何よりも上記の二点は来季が始まるまでに解決するべき最優先課題だろう。

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来季を展望する

筆頭株主がアメリカの大富豪スタン・クロンキとなったが、アーセナルがヴェンゲル政権下で築き上げてきた“潮流”には変化はないだろう。つまり、獲得候補は将来性のある若手を優先的に選び、大金を投じる補強は最小限に抑える手法だ。だが、来季の補強については、その流れに反してでもヴェンゲルが手を施す可能性はある。それは、前述で問題点に挙げた、ゴールキーパーとセンターバックのポジションに関して、指揮官自身も不安に感じているからだ。

まず、ゴールキーパーについては、全盛期と比べて出場機会が激減しているマヌエル・アルムニアはほぼ間違いなく退団すると見られている。そうなると、ファビアニスキ、シュチェンスニ、レーマン、さらに、レンタルバックされるヴィト・マンノーネで守ることになるが、レーマンはあくまでも“ピンチヒッター”であり、マンノーネについても引き続き武者修行に出す確率が高い。となると、二人のポーランド人に頼らざるを得ないわけだが、チームに安定感をもたらせるほどの力はまだ備わっていない。能力が低いわけではないが、今季、経験値の不足を感じさせるシーンは散見した。おそらく、ヴェンゲルが考えているのは、まだまだ伸び白が残されている彼らをベンチに置き、経験と実力を兼ね備えた守護神を擁立するプランだろう。となると、筆頭候補は“プレミアリーグNo.1の第2GK”と称されるシェイ・ギヴンか。その能力は第2GKに止めておくにはもったいないものであり、マンチェスター・シティから離れ、もう一花咲かせられるはずだ。リヴァプールのペペ・レイナ、ビジャレアルのディエゴ・ロペスの入団も噂されているが、彼らに高額の移籍金を支払うのであれば、リーズナブルな値段で買い取れるギヴンに本腰を入れるべきだろう。

そして、次なる課題は守備組織の立て直しだ。ガエル・クリシ、バカリ・サニャの両サイドバックのクオリティーはプレミアリーグの1、2を争うレベルにあるが、それに比べると、中央は質が落ちる。ヴェルマーレンの相方、あるいは彼が不在の時にもしっかりと穴を埋められる逸材の確保が必須だ。現時点で、ヴェンゲルが最も気に入っていると言われているのが、ボルトンのギャリー・ケイヒルとアヤックスのヤン・ヴェルトンゲンの二人。前者は188cmというその高さはもちろんのこと機動力も備えており、人へもボールへも持ち味を発揮できるハイレベルなセンターバックで、足元の巧さも特長。後者は、センターバック、左サイドバック、守備的ミッドフィルダーを高次元でこなせるタレントで、センス溢れるフィード能力など、ヴェルマーレンと似通っている部分も多いが、よりフィジカル勝負で活躍できるタイプだ。可能な限り、“二枚獲り”に挑戦したい。モンペリエからの退団の意向を示しているエミル・スパヒッチも実力者であるが、オプションとして推したい。

一方、中盤から前にかけては然したる補強ポイントはない。主将でもあるセスク・ファブレガスの去就が注目されているが、その噂に反し、個人的には彼がクラブを離れる可能性は低いと見ている。彼の心の中にバルサという存在があったとしても、彼ほど賢い選手であれば、このタイミングでバルセロナに戻る選択は取らないだろう。バルサのシステムにおいて、チャビ、イニエスタという存在は絶大であり、セスクほどの名手であっても彼らを押しのけてコンスタントに出場機会を得ることは極めて困難だ。自身がロンドンの地で築き上げた地位を捨ててまでも移籍するのであれば話は別だが、そこまで危険なチャレンジを試みる無謀な選手のようには思えない。また、レアル・マドリーやインテルも獲得に興味を示していると言われているが、こちらはセスクが興味を持つとは思えない。以上のことから、高い確率でアーセナルに残留するのではないかと見ていると専門家も多いのが実情だ。それよりもトマーシュ・ロシツキーやデニウソンがクラブを去る可能性のほうが高いだろう。

また、最前線については、ロビン・ファン・ペルシーがフル稼働してくれさえすれば万事解決だが、彼の怪我の多さは周知の通りで、来季もマルアヌ・シャマフが代役を務めることは多くなるか。1トップというシステム上、カップ戦ですら出場機会が巡ってこないこともあるニクラス・ベントナーが退団を視野に入れているという話がある以上、“第三のFW”を得たいところだが、高額な移籍金を考えなくてはならないラダメル・ファルカオ(ポルト)やケヴィン・ガメイロ(ロリアン)と交渉するよりは、ベントナーの慰留に努めるか、もしくは、“ウォルコット2世”とも言われている、イングランドU-21代表アレックス・チェンバレンを招き入れ、即戦力として思い切って実戦で起用する手段を取ったほうが賢明か。

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入団候補リスト

ポジション 名前 生年月日 国籍/代表歴 現所属 予想市場価格 入団の可能性 備考
CF/ST ケヴィン・ガメイロ 1987/4/9 フランス代表 ロリアン 1000万竄ャ 20%
CF ラダメル・ファルカオ 1986/2/10 コロンビア代表 ポルト 1750万竄ャ 30%
CF ディエゴ・ミリート 1979/6/12 アルゼンチン代表 インテル 2300万竄ャ 20%
SH/WB/SB/CH パブロ・アルメロ 1986/11/2 コロンビア代表 ウディネーゼ 380万竄ャ 20%
SH/OH ヤシヌ・ブライミ 1990/2/8 フランスU-21代表 レンヌ 320万竄ャ 20%
SH/WG/ST アレックス・チェンバレン 1993/8/15 イングランドU-21代表 サンサンプトン 250万竄ャ 70%
CH/SH クワドウォ・アサモアー 1988/12/9 ガーナ代表 ウディネーゼ 750万竄ャ 20%
CH/DH ヤン・エムヴィラ 1990/6/29 フランス代表 レンヌ 1600万竄ャ 20%
DH/CH ブレーズ・マテュイディ 1987/4/9 フランス代表 サンテティエンヌ 800万竄ャ 30%
CB/SB/DH ヤン・ヴェルトンゲン 1987/4/24 ベルギー代表 アヤックス 1000万竄ャ 40%
CB/DH ギャリー・ケイヒル 1985/12/19 イングランド代表 ボルトン 950万竄ャ 40%
CB/SB エミール・スパヒッチ 1980/8/18 ボスニアヘルツェゴビナ代表 モンペリエ 550万竄ャ 30%
CB/SB カリム・ハグイ 1984/1/20 チュニジア代表 ハノーファー96 20% 契約満了
CB フィル・ジャギエルカ 1982/8/17 イングランド代表 エヴァートン 1200万竄ャ 30%
GK ホセ・マヌエル・レイナ 1982/8/31 スペイン代表 リヴァプール 2200万竄ャ 20%
GK ディエゴ・ロペス 1981/11/3 スペイン代表 ビジャレアル 1200万竄ャ 30%
GK シェイ・ギヴン 1976/4/20 アイルランド代表 マンチェスター・C 550万竄ャ 40%

退団候補リスト

ポジション 名前 生年月日 国籍/代表歴 噂される移籍先 予想市場価格 退団の可能性 備考
CF/ST/SH ニクラス・ベントナー 1988/1/16 デンマーク代表 イングランド方面 850万竄ャ 60%
OH/SH/CH トマーシュ・ロシツキー 1980/10/4 チェコ代表 イングランド方面 750万竄ャ 40%
SH/WG/ST アンドレイ・アルシャヴィン 1981/5/29 ロシア代表 インテルなど 2100万竄ャ 30%
CH/DH デニウソン 1988/2/16 ブラジル代表 ユヴェントスなど 900万竄ャ 40%
SB ガエル・クリシ 1985/7/26 フランス代表 ユヴェントスなど 1500万竄ャ 20%
GK マヌエル・アルムニア 1977/5/19 スペイン スペイン方面 70% 契約満了

(筆:Qoly編集部 T)

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