2011-12 欧州クラブの補強戦略を占う!! vol.3 (バイエルン編)

日々、様々な移籍、退団の話が飛び交う中、Qoly編集部ではその情報を吟味した上で、大胆にも来季の欧州クラブの補強戦略を占ってみることにした。第三弾はバイエルン編!!

今季を振り返る

2010-11 バイエルン フォーメーション

(記事作成現在)CL出場権獲得を目指し、ハノーファー96とのデッドヒートを繰り広げている真っ只中にあるバイエルンだが、今季は不運に不運が重なったシーズンであった。攻撃陣のキーパーツであるアリエン・ロベン、フランク・リベリの両翼を序盤から故障で欠き、精神的な支えでもあったマルク・ファン・ボメルが抜けた中盤の守備力は明らかに弱体。本来、その穴を支えるべきDFラインも試合の度に選手が入れ替わるなど、混迷を抜け出せぬままシーズンの大半を過ごした格好だ。チームに混沌をもたらした大きな要因であるルイス・ファン・ハール監督が去り、リベリ、ロベンも怪我から復帰。さらには、リーグトップスコアラーをひた走るマリオ・ゴメスの奮闘もあり、ようやく中盤戦以降に本来の力を取り戻したが、「序盤の不振さえなければ・・・」と後悔する声は大きい。

来季を展望する

2011-12 バイエルン フォーメーション

来季から就任することが決まっているユップ・ハインケス監督にフロントが用意した補強費用は6000万ユーロと言われ、この大金をいかに利用するかに注目が集まるが、まず、バイエルンの補強戦略を語る上で欠かせないのは、言わずもがな、マヌエル・ノイアーだ。「国外移籍はない」、「マイスターシャーレを獲りたい」と明確な目標を公言する、ドイツ代表不動の守護神の加入は秒読み段階とも言われているが、ネックはその移籍金。相場は3000万ユーロと言われているが、フランス・ベッケンバウアー名誉会長が言うように、相場以上の資金を投入してでも獲得したいところだ。仮に彼の入団が決まった場合は、敵対していたファン・ハールが去ったこともあり、クラブとも契約を延長したハンス=イェルク・ブットが第二GKに。前政権下では積極的に起用されたトーマス・クラフトは今季で契約満了となるが、フリーエージェントで退団し、シャルケ04やヘルタBSCら興味を示しているクラブへ加入する線が固いか。また、ギリシャのPAOKで評価を上げている、クロアチア人GKダリオ・クレシッチが入団するという可能性もあるようだが、これは「ノイアーとの契約が破談+クラフトも流出」という最悪のケースが生まれた際のオプションと見るべきだろう。

GK陣と並び、バイエルンのウィークポイントに挙げられるのがDF陣だ。中央は、昨季まではマルティン・デミケリス、ダニエル・ファン・ブイテンが盤石の防波堤を築いていたが、前者はファン・ハールと仲違し、マラガへ移籍。ペアを失った後者は、その後、ブレーノ、ホルガー・バートシュトゥーバーらとユニットを形成したが、本来の持ち味を発揮しているとは言い難く、何かテコ入れを施したいエリア。現在、シャルケ04に所属し、ドイツ代表にも名を連ねるベネディクト・ヘヴェデスのような才能豊かな選手を獲得できれば御の字だが、「ノイアーとのダブル流出」を避けるクラブとの交渉は避け、マンチェスター・シティで苦しいシーズンを送っているジェローム・ボアテングに照準を定めたほうが賢明か。なかなか安定したパフォーマンスを披露でいないブレーノを売却してでもこのブロックの補強は急ぎたい。

また、サイドについては、一部では合意したとも報じられている、オランダ代表DFグレゴリー・ファン・デル・ヴィールの移籍を実現させたいところ。彼の加入により、フィリップ・ラームを本職の左サイドバックに戻せるだけではなく、時には中央もこなすその利便性で選手層アップにも貢献できるはずだ。ちなみに、今季で契約切れとなるために安価で獲得できる、パトリック・オックスは、両サイドバックや両サイドハーフでのプレーが可能で、面白い存在ではあるものの、「ラームのスケールダウン版」な感は否めず、オプション止まりだろう。

続いて中盤だが、ここはリベリとロベンの去就が気になるところ。仮に、チームがEL圏内に止まった場合は、最悪の事態が起こることもゼロではないが、両名共に「CL出場権次第で自分の将来が決まることはない」とファンを安堵させる発言を行っていることもあり、突如として“裏切る”ケースは極めて低いと見ていいだろう。リベリと口論したロベンが退団を視野に入れたとの報道もあるが、一時的な“喧騒”に過ぎない。となると、着手したいところは選手層の向上だ。リベリ、ロベンの二枚看板が不在になると途端に著しくパワーダウンする攻撃陣に光明を見出すためには、ニュルンベルクからレンタルバックする予定のメーメト・エキチ、そして、ここのところ輝きが薄れつつあるトニ・クロースの復活に期待したいところだが、(クラブ間は合意済みとも囁かれる)マーコ・ロイス、もしくは、サヴォ・イリチェヴィッチの獲得が決まり、将来的にも楽しみな陣容が整えれば最高の流れだ。

だが、このポジションにおいて最も注目すべきポイントはアルトゥロ・ビダルだろう。ハイケンスが「前のクラブから選手を連れてくることはない」と明言していることは気がかりだが、本人はバイエルンへの移籍希望を公言。レヴァークーゼンの中心選手として八面六腑の活躍を披露し、今やブンデスリーガ屈指のMFへと進化した逸材の引き入れが叶えば、沈みかかった中盤の構成力、特に守備面を立て直せるはず。シュヴァインシュタイガーとビダルのコンビは、ブンデスリーガ最高のユニットになる可能性を秘めている。

そして、最前線だが、ここは補強の必要性はないだろう。獲得候補に、ゴラン・パンデフやネルソン・バルデス、さらには、ディミタール・ベルバトフやエマニュエル・アデバヨールという名前をメディアは取り上げているが、マリオ・ゴメスが息を吹き返した今、常に全力で闘うイヴィツァ・オリッチと“元FW”トーマス・ミュラーが存在するだけで十分だ。ブンデスリーガ経験者であり、それなりに計算が立つネルソン・バルデスのような選手が加われば、より安定するだろうが、「ただ、高額年俸をもらっているだけ」とも揶揄されるミロスラフ・クローゼをしっかりと売却し、他のポジションに資金を投入したほうが得策のように思える。

最後に、もう一つだけ。数ヶ月前に日本のメディアを騒がせた宇佐美貴史についてだが、実際にバイエルンが興味を抱き、スカウトを送り込んでいることは事実であるが、自身が「今はガンバ大阪のことしか考えていない」と口にしているように、多くの現地メディアも「このタイミングで、幼少期から慣れ親しんだクラブを去ることはない」と見ている。日本人サッカーファンにとっては夢のある話ではあるが、海外移籍が現実味を帯びるのは、彼がJリーグを代表する選手へ成長し、五輪などの国際舞台で活躍するようになってからだろう。

入団候補リスト

ポジション 名前 生年月日 国籍/代表歴 現所属 予想市場価格 入団の可能性 備考
ST/CF/WG/SH ゴラン・パンデフ 1983年7月27日 マケドニア代表 インテル 1500万竄ャ 10%
ST/CF/WG/SH ネルソン・バルデス 1983年11月28日 パラグアイ代表 エルクレス 500万竄ャ 20%
SH/OH イヴォ・イリチェヴィッチ 1986年11月14日 クロアチア代表 カイザースラウテルン 500万竄ャ 20%
OH/SH/ST マーコ・ロイス 1989年5月31日 ドイツ代表 ボルシアMG 850万竄ャ 50%
OH/SH/ST 宇佐美 貴史 1992年5月6日 日本U-21代表 ガンバ大阪 120万竄ャ 10%
CH/DH/SH/SB アルトゥロ・ビダル 1987年5月22日 チリ代表 レヴァークーゼン 1700万竄ャ 50%
OH/SH/ST/CH メーメト・エキチ 1990年3月25日 トルコ代表 ニュルンベルク 200万竄ャ 50% レンタルバック
SB/SH パトリック・オックス 1984年5月14日 元ドイツU-21代表 フランクフルト 500万竄ャ 20% 契約満了
SB/CB グレゴリー・ファン・デル・ヴィール 1988年2月3日 オランダ代表 アヤックス 1000万竄ャ 40%
CB/SB/DH ジェローム・ボアテング 1988年9月3日 ドイツ代表 マンチェスター・C 700万竄ャ 30%
CB/SB ベネディクト・ヘヴェデス 1988年2月29日 ドイツ代表 シャルケ04 1000万竄ャ 10%
GK ダリオ・クレシッチ 1984年1月11日 クロアチア PAOK 125万竄ャ 20%
GK マヌエル・ノイアー 1986年3月27日 ドイツ代表 シャルケ04 3000万竄ャ 80%

退団候補リスト

ポジション 名前 生年月日 国籍/代表歴 噂される移籍先 予想市場価格 退団の可能性 備考
CF マリオ・ゴメス 1985年7月10日 ドイツ代表 マンチェスター・Uなど 2600万竄ャ 10%
CF ミロスラフ・クローゼ 1978年6月9日 ドイツ代表 ドルトムントなど 700万竄ャ 70%
OH/SH/CH/SB ハミト・アルトゥントップ 1982年12月8日 トルコ代表 ドルトムントなど 600万竄ャ 30%
OH/SH/CH トニ・クロース 1990年1月4日 ドイツ代表 ドイツ方面 1000万竄ャ 20%
CB/SB ブレーノ 1989年10月13日 元ブラジルU-21代表 ドイツ方面 600万竄ャ 40%
GK トーマス・クラフト 1988年7月22日 元U-17ドイツ代表 シャルケ04など 30% 契約満了

(筆:Qoly編集部 T)

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