人は対象物を何か他のものに例えて表現することが多いが、それは人に対しても同様。「彼は○○みたいだ」、「○○に似ている」と称することは多々あり、「○○二世」、「○○の再来」という文言は昔から使い回されている。だが、それでも誰かに例えたくなるのが人間の性。とりわけ、サッカー界ではその風潮は根強く、スケールの大きなプレイヤーが登場するたびに、世界的なスター選手と比較する。今日までに数多の“ペレ二世”や“マラドーナ二世”が生まれてきたことは周知の通りである。

さて、本来、このような例え話を行う際には、「ベテランの名前を引用して若手に授ける」という方式が通常だが、近年はスタープレイヤーの低年齢化が進み、メッシのような20歳そこそこの“若手”も比較対象となる。たしかに、彼らの年齢自体は若手に部類されるが、その経歴と経験はベテラン組と変わらない。というより、30代の選手で彼よりも輝かしいキャリアを築いている者を探すことは簡単ではないだろう。16歳にしてベルギーリーグの得点王に輝き、A代表のエースへと上り詰めつつあるロメル・ルカクも同様だ。その年齢だけみれば、“鼻たれ小僧の高校生”だが、プロデビューから1年余りで一気にスタープレイヤーへと駆け上がり、今やその市場価値は数十億円とも言われている。そして、17歳になったばかりの彼に追随する形で、早くも“ルカク2世”が登場しているのだ。

□驚異の16歳

周囲から“ルカク2世”と称賛されている若者の名は、ネイザン・カバセレ。94年生まれの彼は、コンゴにルーツを持ち、アンデルレヒトの下部組織出身と先輩とウリ二つのバッググラウンドを持ち、U-15ベルギー代表に招集された頃から脚光を浴び、16歳の若者を獲得するために様々なクラブが獲得交渉を望んだ。最終的には、「出場機会を得やすい他クラブでプレイするよりも、アンデルレヒトでのレベルアップしたい」という自身の望みを尊重する形で、クラブに残留を決めたが、予想よりも早くアンデルレヒトで出場機会を掴んだ。先週末に行われたデンダーとの親善試合で、26分間という限られた出場時間の中でハットトリックという離れ業をやってのけ、10日のベルギリーグではベンチ入り。さらに、その試合にて後半途中から出場し、プロデビューを果たしたのだ。さすがに、「デビュー戦で初得点」という話題を提供することはできなかったが、自慢のスピードは随所で披露。ゴール前でシュートチャンスを迎えるなど、観客を沸かせた。

ネイザン・カバセレ。確かな才能を持っていることは事実であるが、今季、彼がどこまで出場試合数を伸ばし、結果を収めるかを予想することは難しい。というのも、ルカクの場合は、16歳にしてプロレスラーのような立派な体格とずば抜けた得点感覚を備えていたが、カバセレの身長は178cmほどでフィジカルコンタクトを得意としているわけでない。ルカク以上の敏捷性や足元の技術を備え、得点力も低いわけではないが、彼のような選手が、屈強なディフェンダーが集うベルギーリーグの舞台で数字を残すことは容易ではないのだ。

※通常はU-21アンデルレヒトに所属している


□期待度の高さは・・・

アンデルレヒトの監督アリエル・ヤコブスは、彼をトップチームを引き上げる際、「たしかにネイザンは若いが、彼はゴール前での決断力や爆発力を備えている。スピードがあり、技術レベルも高い。実力的には、トップチームで通用する」と太鼓判を押しているが、クラブのフロントも、この夏に彼を放出して売却益を得るという選択肢もあった中で残留させて育てることを選択。つまり、クラブ全体が16歳の若者にかけている期待度はこの上なく大きいのだ。現在、ルカクには、チェルシー、リヴァプール、ミラン、レアル・マドリーらが触手を伸ばしており、実際、今夏にはモウリーニョが獲得を熱望し、正式的なオファーを送ったとも報じられるなど、クラブを離れる時期が現実的に迫っていると言えなくはない。仮に、ルカクがチームを離れた場合、アンデルレヒトはどうするか・・・。即戦力を獲得する策もあるが、カバセレのような将来性のある大器に賭けるというのが彼らのスタイル。果たしてカバセレが“真のルカク2世”へと昇華する否か。答えは数年後まで待とう。

※写真中央がカバセレ

(Qoly編集部: T)


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