昨年の9月から10月にかけて、フランスリーグを騒がせていたのは間違いなくグルノーブルだった。財政基盤が貧弱なため、リーグ・アン昇格が認められない可能性すらあったほどのクラブが、7節を終えて4勝2敗1分の4位に位置。今考えても驚くべきことだ。
1部でのグルノーブルを見たことがある方は信じられないかもしれないが、2部で3位になった2007-08シーズンは、徹底的な放り込みをすることが多かった。最終ライン、特に左のロバンからの精度の高いフィードをアクルールに当て、それを基点に攻撃を組み立てていたのだ。
筆者は正直「これは1部では通用しない」と思っていた。その理由は、2007-08シーズンのメス、2006-07シーズンのスダン…。近年、守備的なサッカーで戦おうとした昇格チームは、ほぼ必ず降格してきたからだ。グルノーブルと共に昇格したル・アーヴルはこのケースに該当。リーグ・アンと1年で別れを告げる事となった。
逆に最初から攻撃的なサッカーを志向した場合、明らかに戦力的な不安要素があっても意外に初年度“だけ"は通用するケースがある。2007-08シーズンのカーンや2005-06シーズンのトロワがそのケースにあたるチームだ。
しかし、いざ蓋を開けてみれば、グルノーブルは全く予想だにしない姿を見せた。メンバーはあまり変わっていないにもかかわらず、真面目に走る守備、ショートパスを繋ぎマイボールを大事にする丁寧な攻めを展開。攻撃の迫力のなさも含めて「Jリーグのようだ」と感じたのを覚えている。現有の戦力で放り込みを行ってもリーグ・アンでは通用しないことくらい、バズダレヴィッチ監督はお見通しだったのだ。
開幕戦でソショーを、そして第2節でレンヌを破り、いきなり連勝を達成。リヨン、ボルドーの強豪には敗れたものの、ちょうど昨年のこの時期、アウェイでPSGを下して金星を獲得している。どの勝利も試合内容から言えば決して優勢とは言い難く、耐えて転がってきたチャンスを生かしてのものだったが、戦力が乏しい彼らにとってはこの上ない結果だった事は言うまでもない。
最終的には、残留こそ出来たものの結局24得点しか取れず、下位でシーズンを終えたわけだが、開幕当初のグルノーブルには何かを期待させるものがあった。
今季は開幕から7連敗と早くも残留に黄信号が点灯している状態だが、そんなグルノーブルにも底力はあるということだ。果たしてこの絶体絶命の状況からの巻き返しはあるのか……。