かつて東京ガスサッカー部初の外国籍選手として活躍し、後に鹿児島実業高校でフィジカルコーチを務めたブラジル人指導者ゼ・カルロス氏。
名門サントスでデビューした守備的MFで、様々なクラブを渡り歩いた後、1990年に東京ガスサッカー部に加入した。
1992年までプレーした後ブラジルに帰国するも、2年後に再び日本へと戻り、鹿児島実業高等学校でフィジカルコーチを務めたほか、教師として外国語の授業も受け持っていた。
2010年に退任するまで15年以上指導を行い、遠藤保仁ら様々な選手の育成に関わった人物だ。
そのゼ・カルロス氏が今回『3° TEMPO』のインタビューに応じた。
現役時代はマーキングを得意とする守備的MFだった同氏は、近年のディフェンダーについて以下のように評論していたという。
「私の時代はマークをすることが最優先の仕事だった。前には出ることなく、影に隠れてプレーし、クリアをするだけだった。
相手に距離を与えることはしなかった。ボールが来た瞬間に『ガツン!』で終わりだ。タイミングとタッチがすべてで、50cmも間を開けたら、相手はターンしてしまう。それでジ・エンドだ。
今の守備的MFは、相手に考えさせる時間を与えて、体勢を変えるまで待って、観察して囲むタイプが多いね。サッカーでは、相手に考えさせたらもう終わりだよ。
私の時代では、先回りして、意志を持って戦うことが重要だった。ジトとペペ(1958年と1962年のW杯を制したブラジル代表選手)、ラモス・デルガド(サントスでプレーしたアルゼンチン代表の名DF)から学んだことだ。
彼らは言っていた。『ボールに先にたどり着いた者がボスになるんだ』とね。今の選手は、走るのは上手いが、守備はヘタだね」
近代サッカーは戦術的な要素が高まり、選手にはアスリート的な能力が求められている。
ゼ・カルロス氏の考えでは、現代の選手は走ることは上手くなっているものの守備の技術は落ちているとのことだ。
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また同氏は、かつて対戦した名選手の中でもっとも記憶に残っているのはジーコとソクラテスであるとも語っている。
「ソクラテス、ジーコ、ゼノン、ライー、ジョルジュ・メンドンサ、レナート…次から次へといい選手との対戦があったね。手強かった。
特にジーコは強烈だった。彼を前に出したままにしておくと、ボールをあらゆるところに出されてしまう。だから、まずパスを渡らせないことが大切だった。
また、ソクラテスは頭の回転が速い選手で、マークするのがとても大変だった。独特のタッチで、頭を上げて、ヒールで正確なパスを出す。今、彼のような知性を持った選手は一人もいないね」
67歳になったゼ・カルロス氏はポウゾ・アレグレで忙しい日々を過ごしており、11月にも元選手向けの複数のイベントや追悼式典に走り回る予定だという。