[第103回全国高校サッカー選手権大会1回戦、岡山学芸館高(岡山県代表)1-2矢板中央高(栃木県代表)、29日、千葉・フクダ電子アリーナ]
1回戦が29日に関東圏各地で行われ、2022年度大会の覇者・岡山学芸館高は矢板中央高に1-2で初戦敗退となった。
この日、キャプテンマークを巻いた岡山学芸館高の副主将DF道満(どうまん)智哉(3年-A.C.Re:Salto)は、19日に右足の後十字靱帯(こうじゅうじじんたい)を損傷した主将MF岡野錠司(じょうじ、3年-サンフレッチェ広島ジュニアユース)の想いを背負ってピッチに立った。
選手権前に負傷した主将のために
苦楽をともにした相棒のために、なんとしても勝ちたかった。左サイドバックとして先発出場した道満は、負傷によって先発から外れた岡野に代わりキャプテンマークを巻くと、選手権の舞台で声を出し続けてチームを鼓舞した。
「キャプテンがケガをしてしまい、自分が副キャプテンとして絶対に錠司を国立(競技場)に連れていくという思いでやっていました」
今年度の高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ中国では、2位の高川学園高(山口県)と9ポイント差をつける勝点41で優勝。選手権王座奪還に向けて、厳しいトレーニングに打ち込んできた成果を披露したかった。
全国大会に向けて、自分たちの強みであるハードワークを強化してきたほか、セットプレーの練習にも力を入れてきたが、大会前の19日に行われた紅白戦で岡野が右足の後十字靭帯を損傷。攻守の要を欠いたイレブンは矢板中央高に苦戦を強いられた。
「相手がスリーバックだったので、なんとか自分がスペースを見つけて得点に絡みたいと思っていた」と背番号2は狙いを明かしたが、矢板中央高の波状攻撃を前に、攻撃参加のチャンスは少なく前半は0-0で終了。
なんとかして得点への糸口を見つけたい岡山学芸館高だったが、後半17分に先制点を奪われた。窮地(きゅうち)に立たされた一昨年の王者は同36分に岡野を投入した。
医者からは全治3か月の大ケガだと言われていた。それでも「選手権に出たい」という想いをくみ取ってくれた岡山学芸館高の高原良明(よしあき)監督に背番号7は感謝し、本職であるボランチに入った。
「まだ時間はある!頼むぞ」と、副主将から主将にキャプテンマークが手渡された。
反撃の狼煙を上げたいサックスブラックだったが、直後の後半38分に失点。なんとか同点に追いつこうと、同44分にはFW香西健心(3年、岡山市立操山中)が執念の直接フリーキックを決めるも、直後に試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
「チームの100パーセントは出せたと思いますけど、力が足りなかった」とその場に倒れこんでしまった道満の元へ、岡野が真っ先に駆け寄り「お前がいままで俺の横で(チームを)引っ張ってきてくれたからやりきれた。いままでありがとう」と相棒へ感謝の言葉を送った。
日本代表、W杯に出場した「高校サッカー部出身最強ベストイレブン」
高校卒業後、道満は関西大へ、岡野は日本体育大へ進学し、それぞれプロサッカー選手を目指すと決意した。「来年こそ優勝してほしい」と王座奪還の夢を後輩たちに託した二人のキャプテンは、次のステージへ進み始めた。
(取材・文・写真 浅野凜太郎)