日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催する『JPFAトライアウト』が11日、12日に開催された。今季契約満了を言い渡されたJリーガーたちがピッチ上でスカウトにアピールした。

今季はJ1東京ヴェルディからJFLヴェルスパ大分に期限付き移籍をしていたDF宮本優は、事前に契約満了のリリースが発表されていない中での参加となった。

「変なプライドがどこかにあった」

宮本にとって、名門・東京Vの選手という肩書は誇りであり、同時にプレッシャーでもあった。

「『自分はヴェルディから来たんだぞ』という変なプライドがどこかにあったと思います。自信は大事だと思うんですけど、それが過信になってしまったり、『なんで俺を使ってくれないんだ』と思ったり、変な方向にストレスが向いてしまった2年間でしたね…」

法政大から2022年に東京Vへ加入したが、昨季は高知ユナイテッドSC、今季はヴェルスパ大分と、JFLへの期限付き移籍を2年連続で経験。緑のプライドを捨てきれなかった修業期間を悔やんだ。

新天地を一刻も早く見つけるため、必死にアピールした25歳だったが、トライアウト開催時に契約満了のリリースは出ていなかった。

「仕事がないという感じですね。これもプロにしかできない経験ですし、この苦しい状況を打開していくのも仕事の一つかなと思っています」と気丈に振る舞っていた。

リリースが出ていない状況については「選手としては早く出してほしい気持ちはありますね…」と想いを吐露しつつも、すぐさま自分自身に矢印を向けて「再スタートです」と前を向いた。

12日の部に参加し、両サイドバックで遜色なくプレーできる強みを生かして、およそ25分間の紅白戦に臨んだ。

JFLでの学びを発揮できた一方で、対峙したJリーガーたちが見せたレベルの高いプレーに苦戦した。

「久しぶりにJ(リーグ)の選手とプレーさせてもらって違いを感じました。駆け引きなどはJFLの選手にないものを持っていたので、そこ(Jリーグ)を目指すのであれば、感覚をもう1回思い出してやっていかなければいけない」と、今後を見据えていた。

1本目は左サイドバックとして奮闘し、2本目は右サイドバックで出場。ビルドアップ時には両足から繰り出される正確なパスで攻撃を組み立て、豊富な運動量を生かしたスプリントでサイドを駆け上がってみせたが、自身のプレーに納得できていない。

「自分を出さなければいけないという独特の雰囲気の中で初めてサッカーをしました。難しかった一方で、自分に足りないところはそこだと思いますし、いい経験になったのかなと思いました」と急造チームの難しさを口にしながらも、人生初のトライアウトは血肉となった。

JFLの波にもまれ、人一倍苦しいサッカー人生を過ごしたと自負している。今後はこれまで培った経験を武器にしながら、一心不乱にはい上がる。来季はJ3以上で勝負したいと考えているが、ボーダーラインはJFLだ。

古巣・東京Vの躍進は九州から見守っていた。城福浩監督のもとJ2からJ1にはい上がった姿を、自分に重ねている。

「シーズンが始まる前は『ヴェルディ(J1で)大丈夫か』という雰囲気があったと思います。それでも毎日の積み重ねが、人生を変えていけるんだと観ていて思いました。

城福さんとは半年間一緒にやらせてもらって、ヴェルディの雰囲気や熱量は感じさせてもらえました。立ち返るところは『やっぱり、そこなんだな』と思いましたし、自分より若い選手が大活躍していたので、負けていられないという気持ちです」

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抱えていたプライドはもうどこにもない。「(ヴェルディの)肩書きがなくなり、吹っ切れました」と心機一転した宮本は、自らの手で人生を変えていく。

(取材・文 浅野凜太郎、写真・浅野凜太郎)

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