[天皇杯決勝ヴィッセル神戸1-0ガンバ大阪、23日、東京・国立競技場]
関西対決となった決勝は神戸が5大会ぶり2度目の優勝を果たした。後半19分に神戸FW宮代大聖が奪った先制弾が決勝点となり、G大阪の追撃から逃げ切った。
「仲間を信じて走り続けた」決勝点
日本代表で戦った歴戦の猛者が集う神戸を優勝に導いた決勝点は、J1川崎フロンターレより今季新加入した24歳のゴールだった。
拮抗した展開の中で訪れた後半19分、神戸はGK前川黛也(だいや)からのロングフィードからのこぼれ球を元日本代表FW大迫勇也がマイボールに収めた。
大迫が攻撃のスイッチを入れるようにFW武藤嘉紀(よしのり)へと素早くパスをつなげると、一気にゴール前へ。ボックス内左側でフリーの状態となった武藤が中へ出したボールは相手DFのクリアミスを誘い、最後はゴール前に詰めていた宮代が右足でこぼれ球をゴール左側へ押しこみ先制した。
値千金弾を決めた背番号9は「サコくん(大迫)がヨッチくん(武藤)に出した後、中でもらうつもりでした。でも観客の声もあって、なかなか声が届かなかった。ヨッチくんがシュートを打った結果としてゴールにつながりましたが、中で受けようとしたことによるポジション取りだと思うので、結果論ですが、(得点が決まって)良かったです」と胸を張った。
G大阪にチャンスをつくられるシーンもあったが、焦らずに我慢し続けた神戸がワンチャンスをモノにした。
2023年に川崎で天皇杯優勝を経験した宮代は、昨季公式戦45試合出場12得点を挙げた。昨年のファイナルでも先発出場していたアタッカーは、新たな刺激を求めて神戸にやってきた。今季はここまで公式戦42試合17得点の活躍で飛躍のシーズンを過ごしている。
この試合では左サイドを主戦場として戦いながらも、後半途中からは中央にポジションチェンジ。大迫や武藤ら、元日本代表アタッカーらとともに得点を虎視眈々と狙い続けた宮代は、「仲間を信じて走り続けた」と連係に自信を深めた。
それでも激しいスタメンの競争の中では、大迫や武藤もライバルだ。現在勝点68で首位を走る神戸の中で、24歳は結果に飢えている。
「自分はスタメンが確約されているわけではないですし、与えられた時間でどれだけ結果を出せるか。チーム内競争の激しさはチームにとってプラスですし、そこは自分だけではなくて、ヴィッセル神戸の全員が意識して戦っている。それが強さの要因だと思います」
試合終了後、ミックスゾーンに現れた神戸の選手たちに笑顔は見られなかった。試合内容を振り返ったときに、自分たちに課した高い基準をクリアできていなかったという反省の言葉が多く聞かれた。
それは常勝軍団のメンタリティに近いものだ。宮代は昨季に経験した大舞台の経験を糧にしつつも、今季は気持ちを新たに楽しむことが大事だと改めて感じていた。
天皇杯『個人2連覇』を達成した宮代だが、そこは「あまり意識していない」と強調。24歳は真っ直ぐな瞳で目の前の「Jリーグを取らないといけない」と決意を口にした。天皇杯を手にした神戸はJリーグ2連覇に向かって突き進む。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 Ryo)
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