「サッカーライターになりたい」。筆者もそんな想いで、この世界を志した一人だった。
インターネット上には、名刺があれば誰でもライターになれると書いてある職業だが、実際のところサッカーライターのリアルは書かれていなかった。
ライターは稼げない、ライターは激務、などネガティブな情報も目につく中、勢いでライターの世界に飛び込んだ筆者は現場で働く人間による生の声を求めた。
サッカーライター1年目の筆者が本媒体に多数の取材記事を寄稿する高橋アオ氏とともに、この世界の詳細について語り合った。
いい印象は一切ない
高橋ーー夢がない話をしてしまうと思いますが、よろしくお願いします。
浅野ーーよろしくお願いします。
髙橋ーー疑問なんですが、浅野さんはどうしてサッカーライターになろうと思ったんですか。
浅野ーー元々高校までは選手だったんですけど、プロなんて到底無理だった。だけどワールドカップにはどうしても行きたくて、それがライターなら叶えられるかもしれないと思いました。あと、サッカーの近くで仕事をしてみたかった。高橋さんはどうしてライターに?
高橋ーー成り行きですね。僕自身が海外で仕事をしていたときに、マスコミ関係の人と仲良くなったんです。そしたらその人から「ヨーロッパで大きな大会があるから、取材に行ってみないか」というお話をいただきました。
浅野ーーご縁は大きいですよね。
高橋ーーそうですね。ただ、石にかじりついてでも、サッカーライターなりたかったわけではありませんでした。そのころは元々サッカー関連の仕事をしていて、転職しようと思っていたタイミングだったから、「やってみよう」という感じですね。
浅野ーーそこから出版社や新聞社、テレビ局も経験していると思います。実際にサッカーライターになってみてどうでしたか。
高橋ーーいい面も、悪い面もある(笑)という感じですね。
浅野ーーまず、いい面から聞きたいです。
高橋ーー知らない景色をたくさん見られたことは良かった。普通に生活していたら絶対に知り得ない情報や知識にも触れられますし、絶対に話せないような人とも話せます。そういったキラキラした部分はありますね。
浅野ーーでは悪い面とは?
高橋ーー逆を言えば、闇も知った。あと、マスコミの方々にはいい人も多い反面、最低最悪な人間もたくさんいる。正直、この業界に対していい印象は一切ないですね。あと、いまはサッカー媒体自体に元気がない。浅野さんはお給料とかどうしているんですか。
浅野ーーそれでいうと、僕はバイトしていますよ。飲食とか港で力仕事したり。あと、なかなか休めないですね。
高橋ーーそこが1番問題で、ライターが食べにくい状況になっている。出版不況と言われているように、原稿料は下がっていますし、紙の媒体も減っています。新聞社や出版社は門戸が狭いですし、エリートしか行けない場所になっている。もちろん、業務委託契約やバイトという形でも入れますが、最初の2~3年は丁稚奉公のように働かされて、ほとんど経験を積めず、薄給で働かされるパターンがほとんどですね。
浅野ーーサッカーは需要がないんですかね?
高橋ーーいや、需要はあると思います。ただ。特にインターネットは広告の単価が低い。ニュース記事を書くWebの媒体だと、安くて500円とかもありますから。
浅野ーー厳しいですね。安い単価だったらなかなか休めないんじゃないですか。
高橋ーーまじで休めません(笑)。完全なオフは今月で多分3日ぐらいしかないです。正直、それでも全然いい方で、休みがない月もあります。