Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊によるレポートをお届けします。

浦和レッズは夏場に酒井宏樹、岩尾憲、ショルツ、ソルバッケンと4名の主力級がクラブを離れることになりました。

まだシーズン中盤にもかかわらずこの移籍劇については大きな衝撃があり、Jリーグ界隈を賑わせていますが、フロント側の判断として理解出来る部分も多くあるため、その点を解説していきます。

開幕前予想で優勝争い一番手からの、折り返し地点で中位止まり

私自身も今シーズン開幕前のJリーグ予想では浦和を優勝クラブの一つに予想しました。
理由は大きく二点で、充実した圧倒的な戦力、そして天皇杯もACLもない、全J1クラブの中で最も楽な日程であること。

シーズンオフの浦和の補強動向からして、「浦和のフロント、今年は完全にリーグ優勝に照準を定めた」と感じさせるものでした。各メディアおよびライター陣も優勝予想で浦和が一番人気となっていたこと自体は理解できます。

その浦和が、蓋を開けてみたらまさかの中位止まり。ヘグモ監督に対する不満の声をあげるファン・サポーターもいる中でまだ解任には至っていませんし、残留争いに足を踏み入れているわけではありませんが開幕前の予想や期待からすれば大きく裏切った状況と言えます。

そこにきてキャプテンの酒井宏樹、副キャプテンのショルツ、岩尾憲、ソルバッケンと次々に移籍してクラブを離れるリリースが出て衝撃が走っています。

この事態に浦和公式も7/1付けで声明を発表。「始動時に描いていた成長曲線に対し、現時点でのチーム完成度は後れを取っていると言わざるを得ません」とコメントを残しています。

損切りとも言える戦略

21節終了時点で首位町田との勝ち点差は11。そして9位。

決してリーグ優勝を諦める勝ち点差ではないものの、その町田にホーム埼スタ直接対決で敗戦を喫していることや、その他とりこぼしの多さからしても、リーグ優勝を現実的に捉える人はそう多くないものと思料します。おまけにルヴァンカップも既に長崎との三回戦で敗退済み。

そうなると、リーグ優勝に向けたものの現実的に優勝は厳しく、その他カップ戦も全て敗退している状況でこの戦力をどうするか。つまり、来季を見据えた戦いと財政状況の点で何かしらの対応をせざるを得ないのではないか、という考えを持ちました。

それが、言葉は悪いですが損切りとも言うべく戦力の放出に至ったのではないかと。

酒井宏樹、岩尾憲、ショルツ、ソルバッケン。いずれも主力級であり高年俸、そしてソルバッケンを除けばベテランという年齢層の選手達です。

戦略としては大きく2つ。

(1)彼らを来季以降も見据えて起用し続け、今季少しでもリーグ順位を上げて成績を残し、高年俸ではあるが来季のリーグ優勝に向けて彼らを戦力として保持し続ける。

(2)現実的にリーグ優勝の可能性が低くなった今、この夏場の時点で来季に向けて大きく変革を行い、ベテラン・高年俸の選手達を一気に放出し、浮いた年俸や多額の移籍金をもとに再構築を行う。

この2つのうち、浦和フロントは後者の考えから放出を選択したのではないでしょうか。

個人的に、仮にこの思惑だったとしても否定できないし選択としては理解できるものです。折り返し地点で勝ち点11差の9位において今後もリーグ優勝に固執し目一杯の資金を費やすのも一つの戦略ではありますが、現実的な判断で各クラブから移籍金ありのオファーが来たならば来季見据えて財政面で大きく実りのある方向性に舵を切り、ここで放出をすることも一つの戦略です。

特にショルツに至っては6億円の移籍金を獲得しましたし、酒井宏樹も34歳ながら数億円の移籍金を手にできたことは浦和フロントにとっては本当に大きいことだと思います。

もちろん、仮に来季見据えた損切りのような戦略だったとしても浦和フロントとしては口が裂けてもこの方向性は表に出せません。それは今後も毎試合訪れるファン・サポーターに対する裏切りとも言えるので、今年のリーグ優勝を諦めるわけにはいきません。

「今シーズン残された公式戦17試合全てにおいて勝利を目指し、最後まで走り、戦い、貫く覚悟です」と浦和・堀之内SDも声明を発表しています。

このコメントを真に受けた場合「リーグ優勝を諦めないのに主力級4人を放出することは矛盾しているのでは」と疑問を持つ人は多くいると思います。ただ、来季を見据え財政状況に鑑みる等総合的な判断からすればこの主力級4人夏場放出、個人的には理解できるものと思料します。


ライター:中坊
1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2023年終了時点で962試合観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米・ヨーロッパ・アジアへの現地観戦も行っている。
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