「サンフレッチェ広島 1-5 おこしやす京都AC」

6月16日に行われた天皇杯ニ回戦。その結果速報にこのスコアが掲載されたとき、全国のサッカーファンは驚きに包まれた。実質5部にあたる関西サッカーリーグ1部に所属するアマチュアチームが、なんとJ1のサンフレッチェ広島を相手に5ゴールを決めての「ジャイアントキリング」。しかも敵地エディオンスタジアム広島でだ。

おこしやす京都ACという名前がTwitterのトレンドワード1位になり、クラブの公式ホームページにもアクセスが殺到。しばらくはサーバーがダウンするという事態にもなった。まさに「おこしやす旋風」であった。

【動画】地域リーグのクラブでありながら、サンフレッチェ広島を相手に5ゴールを奪って勝利した「おこしやす京都AC」

おこしやす京都ACは前半に青戸翔、高橋康平のゴールで2点のリードを奪うも、ハーフタイム直前に失点し、2-1で折り返す。「後半は広島が猛攻を仕掛けて逆転するだろう」という大方の予想を裏切り、さらに3ゴールを追加するなど見事な戦いを見せた。

そして、歴史的な勝利を収めたその瞬間。放送していたスカパー!のカメラにこのような言葉が捉えられ、大きな話題になった。

「もうリーグだぞ!切り替えよう」

これを発したのが、おこしやす京都ACを率いる35歳の青年監督、瀧原直彬氏である。

瀧原直彬氏は兵庫県芦屋市出身で、あの名門滝川第二高等学校サッカー部に在籍した。卒業後は流通経済大学に進学したがJリーガーにはなれず、佐川印刷SC(当時JFL)とおこしやす京都ACの前身であるアミティエSC京都(関西1部)でプレーしたあと現役引退。

その後はコーチとしてアミティエSC京都、そしておこしやす京都ACを指導し、2020年から監督として指揮を執ることになった。まだ指揮官になってから2年目という彼は、いかにしてこの「ジャイアントキリング」を成し遂げたのか。広島戦を終えたばかりの瀧原直彬監督に直撃した。(取材日:6月18日)

なぜ広島に勝てたのか?

取材のため、新たに作られたおこしやす京都AC公式マスクを着けてくださった瀧原直彬監督

――お疲れ様でした。天皇杯2回戦はどうでしたか?

クラブとして初めての2回戦でしたし、また初のJ1クラブとの対戦ということでとても良い雰囲気が生まれ、その中でゲームができました。個人的に監督としても一歩踏み出せたという想いがあります。また、あの中で選手自身が全力を出せて、さらに結果を残せた。さらに次のステージに進めたことはとても嬉しく思っています。

――試合の3日前には関西リーグでのラランジャ京都戦がありました。しかも6ゴールを奪ってから3失点するという評価しにくい試合でしたね。

6-3というスコアでした。良かった部分は認めながら、課題として残った部分も認識しました。ただ、準備期間としては中2日だったので、我々がどれだけ回復して良いコンディションで迎えられるかという点を意識して準備をしました。