スポーツを応援するファン・サポーターにとって、新たな時代の到来となりそうだ。

10月9日、エンゲート株式会社はスポーツチームとファンをブロックチェーンでつなぐギフティング・コミュニティ『エンゲート (Engate)』のベータ版を今月リリースすることを発表した。

ギフティングとはいわゆる投げ銭のこと。ファンがチームや選手を応援する気持ちを、ギフトを贈る行為(=ギフティング)で実施できるコミュニティが『エンゲート』だ。

ファンが行ったギフティングは、実際にチームの運営や選手のキャリアを支えるお金として使われる。そして、これらの履歴はチームや選手とファンとの結びつきを表すものとして、改ざんができない「ブロックチェーン」の技術が活用される形となっている。

『エンゲート』の紹介動画でなんとなくイメージはつかめるはずだ。

クラウドファンディングと似ているようだが、大きく異なるのは膨大なデータを保存できるブロックチェーンを活用することにより、チームや選手と支援者によるコミュニティ、両者の相互性を長期間持続できる点だ。

スポーツ選手にはいくつかのキャリアステージがあり、それぞれ所属する組織や取り組む活動内容も異なる。

『エンゲート』では選手の育成期から、プロプレーヤーを経てリタイアした後も一貫して、ファンとの結びつきをコミュニティで支援し、思いの総量をビッグデータとして保有することが可能になる。

ビットコインなどの仮想通貨で身近な存在となりつつある「ブロックチェーン」。しかしそれ自体はコンピュータのデータ通信技術の一つで、仮想通貨はその技術を活用した“一部”に過ぎない。

ブロックチェーン技術は、数学と暗号技術が用いられ、一度記録されたデータの書き換えは非常に難しいという特徴がある。また記録されたデータは、トークン保有者のプライバシーを守りながらも、誰でも閲覧できる透明性の高さを持つ(※いくつかあるブロックチェーン技術のうち、エンゲートはNEMを採用)。

こうした仕組みが現在サッカー界でも注目されており、先月、パリ・サンジェルマンとユヴェントスが相次いでブロックチェーンの導入を発表した。

今回発表された『エンゲート』にも、日本のサッカー・フットサル界から、湘南ベルマーレ(Jリーグ)、INAC神戸レオネッサ(なでしこリーグ)、フウガドールすみだ(Fリーグ)の3チームがすでに導入することを決定。横浜F・マリノス(Jリーグ)の導入もほぼ決まっているという。

『エンゲート』は、10月20日にWebでベータ版がローンチされ、同日開催される横浜ビー・コルセアーズ(Bリーグ)のホーム開幕戦からローンチキャンペーンをスタート。

年末から2019年にかけてアプリもリリースされる予定だ。

エンゲート株式会社の代表取締役である城戸幸一郎氏(中央)は、ソフトバンク、楽天(※2012年から執行役員)を経てエンゲート社を設立。

小学校からサッカーをやっていたという城戸氏は、高校の同級生である石橋顕選手(セーリング)が北京五輪へ出場する際、仲間とともに資金調達に奔走した。その経験から、テクノロジーを使ってスポーツを支える仕組みを考え続けてきたという。

また、『エンゲート』のアドバイザーを務めるのは、漫画『アオアシ』の取材・原案協力でも知られるスポーツジャーナリストの上野直彦氏(右端)。この日の会見では、自身が90年代に体験したLリーグバブル崩壊による女子サッカー受難の時代について語り、「二度と繰り返したくない」とブロックチェーンを活用した新たな支援の仕組みに期待を示した。

彼らの思いが形となった『エンゲート』。技術的にやや難解なため取っつきづらい印象だが、各チームで行われる予定のローンチキャンペーンでは、試合の来場者に無料で100ポイントが配布される。まずはギフティングを実際に体験することで、その無限の可能性を感じることができるはずだ。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて邁進している日本のスポーツ界。一方で、2020年以降チームや選手を支えていく仕組みも重要であり、日本発の『エンゲート』がどのような世界を提供していけるのか注目される。

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