12日、日本はアジアカップのグループD初戦、パレスチナ戦を迎える。パレスチナと言えば、政治的に大きな問題を抱えている国でもある。
1947年に旧パレスチナは分割をされ、イスラエルが建国されユダヤ人が多く入植した。それに反発したパレスチナとイスラエルは第一次中東戦争になり、勝利したイスラエル側が元々のパレスチナの8割を占領することとなった。元々、ドイツで迫害を受けるなど追い出される側だったユダヤ人だが、パレスチナでは逆の立場になってしまったのは何とも皮肉な話である。
パレスチナに元々住んでいたパレスチナ人は難民として世界各国へ飛散することとなった。その数は約490万人、世界の難民総数が約2000万人なので難民の1/4はパレスチナ人ということになる。
パレスチナ人が多く移り住んだ国はレバノン、シリア、そして今回のアジアカップでグループD同国となったヨルダンである。
パレスチナのアジアカップスケジュール、16日にヨルダンと対戦する。
難民は基本的人権と最低限の文化的な生活が約束されていない。例えば、レバノンでは職業、市民権、不動産の取得が認められていないからだ。それに対してヨルダンでは、市民権、選挙権を持ち教育を受けることができ公務員になることもできる。そのためにパレスチナ難民の42%はヨルダンへ移り住んでいる。
ヨルダンという国は建国以来、国民構成や領域を変化させてきた不思議な国家である。現在の人口は約631万人であるが、半数以上がパレスチナ難民である。
ヨルダンのサッカー国内リーグでは、パレスチナ難民キャンプ近くに本拠地を構えているチームも少なくない。例えば、ヨルダン 1部リーグに在籍するアル・バカーはアンマン郊外のバカー難民キャンプをホームタウンにしている。
国内リーグ13回の優勝を数える名門アル・ワフダートはアンマンにあるパレスチナ難民キャンプをホームタウンにしている。会長はパレスチナ出身、ファンももちろんパレスチナ系である。ライバルでヨルダン系のアル・ファイサリー(優勝32回)とのダービーマッチは熱いことで知られている。
ワフダートのファンは試合中に歌う
「アッラー、ワフダート、エルサレムよアラブのために(Allah, Wihdat, Al Quds Arabi)」
ヨルダン代表チームはアジアカップメンバー23人のうち12人がパレスチナ系の選手である。パレスチナ代表が早くから発足していたら、あるいは彼らも祖国の代表を選んだのかも知れない。
パレスチナ代表は1998年にFIFAへ加盟し2002年のワールドカップ予選より参加をしている。2008年10月にヨルダンと親善試合を行った際には試合前に全員で祈りをささげた。それは、パレスチナが初めて「母国開催した」ゲームだったからだ。