この世の記録は、全てこの男たちによって塗り替えられてしまうのだろうか。近年のリーガ・エスパニョーラを見ていると、そんなことを思ってしまう。

異次元のペースでゴールを量産するクリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシ。現在9節が終了したリーガ・エスパニョーラでロナウドはすでに16得点をゲットしているが、これはシーズン67.5得点のペースだ。

一方、メッシは2011-12シーズンに前人未到のリーガ50ゴールを記録。スペインサッカー史上伝説のストライカー、テルモ・サーラが持つリーガ通算251得点まであと1ゴールに迫っている。挙げればキリがないが、ここ数年のあらゆる記録はこの2人のスター選手により更新されてきた。

そんな2選手の登場以前、リーガであらゆる記録を樹立した選手といえば、元レアル・マドリーFWラウール・ゴンザレスだ。

「レアル・マドリーの象徴」と呼ばれ、長くマドリーの背番号7をつけたラウール。その特徴は天性のポジショニングと相手DFを手玉に取るようなフリーランの動きで、圧倒的な身体能力がなくてもゴールを奪えることを世界に証明した。UEFAチャンピオンズリーグの歴史上、彼があげた71ゴールは史上最多の記録である。

私たちは、今すぐメッシやロナウドになることはできない。しかし、ラウールのプレーから何かを学ぶことはできるはずだ。そこで今回は、メッシ&ロナウド全盛の今だからこそ、あえてラウールのプレーを振り返ってみることにしたい。

2001-02シーズンのUCL決勝での有名な先制ゴールのシーン。ロベルト・カルロスの高速ロングスローも流石だが、スローインという相手選手にとって気が抜けがちがシーンを確実に狙う抜け目のなさが光る。00:32からの別アングルからの映像が示している通り、ラウールはこれだ低いけポジションから勝負を仕掛けている。

また、シュートに威力はないが、向かい球をその延長線上に運んでいるため決して簡単なキックではない。

フェルナンド・レドンドのトリッキーなフェイントに注目が集まるこのゴールだが、ラウールのフリーランにも注目してほしい。00:05あたりから、猛然とエリア内へと侵入してくる様子が確認できる。

もう少し長編の映像が無いため検証はできないが、レドンドが左サイドでボールを持っていた頃、ラウールはおそらくまだゴールから遠いポジションにいたはずだ。しかし、そのことをプラスに考えたラウールは忍者のように相手陣内へと忍び込み、いわゆる「3人目」の動きで華麗にゴールをゲット。知性と献身性が生んだ得点である。

相手DFの陰に隠れ、裏を取るのもラウールが得意としたプレー。この場面では相手のDF3枚がボールウォッチャーになったところで背後に忍び込み、パサーの出すタイミングを見ながら直角に侵入しオフサイドラインを抜けている。ゴール前でのこうした動きはまさに職人技であった。

ラウールは「空間」を利用することにも長けていた。このシーンではエリア近辺で1vs3と数滴不利な状況になっていたにもかかわらず、空いているスペースにボールを落とし、するりするりと侵入していく。ボールを浮かせているため相手選手は容易に足を出すことができず、気がつけば美しいゴールが決まっていた。

UCL通算71得点にあと一歩と迫るメッシとロナウドの両雄。今シーズンでの記録更新は間違いなさそうだが、こうして見るとラウールの偉大さも浮かび上がる。

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