サッカー不毛の地、アメリカ――。かつては当たり前のように叫ばれていたそんな表現も、今では使われることが少なくなった。誰もがアメリカ代表チームの快進撃を目の当たりにし、誰もが国内リーグの成功を知っているのだ。

それだけに、MLB(野球)やNBA(バスケットボール)、NFL(アメリカンフットボール)やNHL(アイスホッケー)といった四大プロスポーツが圧倒的な人気を博すアメリカで、サッカーの地位向上に貢献した人の功績はやはり大きい。

このほど、アメリカサッカーの発展に大きく寄与し、アメリカサッカーを代表する真のレジェンドが自身の代表キャリアに終止符を打っている。2000年代以降の同国代表を牽引し、同国史上最高の選手と評されるFWランドン・ドノヴァンである。

ランドン・ティモシー・ドノヴァンは1982年3月4日生まれの32歳。50mのタイムは6秒を切る快速の持ち主で、確かなテクニックとゴール前での冷静さを併せ持つ同国を代表するアタッカーだ。特に瞬時に最高速度へ到達するその圧倒的な脚力により「カウンターの名手」として知られ、ここ一番での憎たらしいほどの勝負強さで代表・クラブを問わず数多のゴールを記録。10年近くに渡り、アメリカのエースとして君臨し続けた。日本代表が黄金世代として臨んだ2000年のシドニー五輪ではベスト8でその日本を退けている。

ドノヴァンといえば、2014年ブラジルW杯に挑むアメリカ代表登録メンバーからまさかの形で落選していた。2002年、2006年、2010年と過去3大会連続で選出されていただけにその衝撃は大きく、日本でも大きく伝えられた。

そんなドノヴァンがこのほど、事実上の代表での引退試合に臨んだ。レンツシュラー・フィールドで行われた、アメリカ代表対エクアドル代表の国際親善試合である。ドノヴァンは10月いっぱいでの現役引退を発表しており、MLSでも残された試合数は残り2試合となっている。

今年5月に発表されたW杯の予備登録メンバー以来の代表招集となったドノヴァンはこの日、背番号10を背負いキャプテンとして先発出場。このタイミングでドノヴァンを招集したクリンスマン監督の意図は、間違いなくドノヴァンの功績を讃えることであった。

代表通算157試合出場はコビ・ジョーンズ(164試合)に次ぐ同国歴代2位の記録であり、同国サッカー連盟の広報部もこの日のためにドノヴァンに関する様々な情報を紹介している。

ドノヴァンが代表キャリアで着用した19ものユニフォームを編みこんで作った特殊なユニフォームも贈与された。

ドノヴァン仕様のハード『Xbox』とソフト『FIFA』が当たるキャンペーンも。

アメリカサッカー連盟のFacebookページのヘッダーもかっこいい!ドノヴァンがいかに特別な選手であったかが分かる。

ドノヴァンの代表キャリアをかっこよく編集したトリビュート動画。オウンドメディアやソーシャルメディアを駆使したこのあたりのこだわりと盛り上げは、さすがはアメリカといった感じか。

ドノヴァンのキャリアを振り返る様々なデータ。57得点58アシストは史上最多であり、最も多い得点の時間帯は75-90分(14点)。2013年は代表チームだけで8得点8アシストとまさに大暴れだった。

この日のエクアドル戦も先制点はドノヴァンのクロスから!試合は1-1で終了し、ドノヴァンは前半途中まで出場した。そして試合後・・・

サポーターに出迎えられ、ゴール裏にも挨拶に行ったドノヴァン。32歳という年齢での引退は少し早い印象もあるが、その勇姿はこれからもファンの心にあり続けるだろう。

アメリカ代表通算157試合57得点58アシスト。アメリカサッカー史に語り継がれる最高クラスのエースが、今そっとスパイクを脱いだ。

【厳選Qoly】東南アジア最強を決める三菱電機カップで日本出身選手が躍動!活躍する日本出身の5選手を紹介