欧州のトップリーグで活躍する日本人選手の数は、今や片手では数えきれなくなっている。
プレミアリーグやリーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガやセリエAといった世界最高クラスのリーグにも日本人選手は多く在籍しており、チームにとって欠かせない戦力として機能している選手も少なくはない。日本がW杯への出場権を獲得していない頃には、想像だにしなかった世界である。
そんな欧州で活躍する日本人選手だが、躍動するのは香川真司や本田圭佑、長友佑都だけではない。現在開催中のとあるリーグに、立派な結果を残している選手がいるようだ。
その選手が所属するリーグとは、ヨーロッパの北東部に位置するエストニア。異境で輝く31歳の日本人MF和久井秀俊である。
和久井は1983年2月12日生まれの31歳。栃木県出身でアルビレックス新潟にも所属したがJリーグでの出場機会には恵まれず、スロベニアやオーストリア、ベラルーシといったクラブを渡り歩き、2011年からエストニア1部リーグ「マイストリリーガ」のノーンメ・カリュに所属している。
マイストリリーガはJリーグ同様、春に始まって冬に終わる。つまり、現在シーズンの真っ最中であるのだ。2014年シーズンは和久井にとって3シーズン目にあたり、これまですでに100試合に出場している。今年3月にはこんなゴールパフォーマンスで世界にも大きく報じられた。
そんな和久井だが、現在マイストリリーガの得点ランキングで2位タイであるという。試しにマイストリリーガの公式HPを見てみると・・・
いました!レヴァディアというチームの選手に囲まれ、和久井の名が紹介されている。
ちなみに、日本人にはあまり馴染みのないエストニアだが、欧州を代表するIT立国としても知られている。今や会議などで当たり前に使われるようになった通話サービス『Skype』はこのエストニアで生まれたと言われており、身分証明書やネットショッピングなどが「国民IDカード」1枚で利用できる。
そのためか、マイストリリーガの公式HPもどこか整備が行き届いているように感じた。
話を戻そう。マイストリリーガは10チームによる4度の総当り戦である。36試合中現在20試合が終了しており、和久井が所属するノーンメ・カリュは現在3位。総得点は44で、そのうち15点を和久井が記録していることになる。
ちなみに、おそらく世界最強のサッカーデータベース『transfermarkt』を調べたところ、和久井の得点パターンの内訳は以下の通りとなった。
・右足:5得点
・左足:5得点
・ヘディング:5得点
・合計:15得点
これはお見事!完璧すぎるバランスで15得点をゲット。和久井はアタッキングミッドフィルダーとして出場することが多く、アシストも5つ記録しているそうだ。
UEFAカントリーランキングによると、エストニアはUEFA加盟54ヵ国中51位につけている。これはフェロー諸島とサンマリノに挟まれる順位であり、たとえリーグで優勝しても、UEFAチャンピオンズリーグの予備予選1回戦への出場資格しか与えられない。和久井擁するノーンメ・カリュは今シーズン、UEFAヨーロッパリーグ予備予選1回戦を勝ち上がり、2回戦でポーランドのレフ・ポズナンと対戦。和久井は1stレグでゴールをあげたものの、2ndレグを0-3で敗れ本戦出場はならなかった。
こうして見ると、我々が普段見ている欧州のサッカーがいかに世界でもトップの中のトップであるかということが分かる。それゆえ人々の注目を集めるのであろうが、そこにたどり着くにはどこまでも険しい道があるようだ。
はたして、今シーズン和久井はどこまでゴールを伸ばすのだろうか。新しく日本代表の監督に就任したハビエル・アギーレ氏は、名前ではなくその選手のパフォーマンスで選手を起用する傾向があるとも伝えられている。センセーショナルなシーズンを送り、遠く離れた日本にまで和久井の名前が届くほどの数字を残すことができれば、そういった可能性も決して払拭しきれないだろう。
ちなみに・・・
ノーンメ・カリュ公式HPの和久井の選手紹介には、異なる選手の写真が使われていた。IT立国でもこうしたミスはあるようだ。