皆さんこんにちは、いかがお過ごしですか?

いろいろと書くべきネタをちゃんとサポートできないまま、どんどん日が過ぎてしまうのがQoly読者の皆さんに対しても心苦しい限りです。

それでも何とか、ソチオリンピック(五輪)では世界のトップアスリートの戦いを楽しめました。また、続くパラリンピックでも日本選手団の皆さんが逆境に負けない力強さを見せてくれました。これでソチでの熱戦は終わり、ロシアでの2014年の冬の思い出は素晴らしいものに。その後の春が世界を揺るがすクリミア問題で始まっているのが、なんともやりきれなく悲しいですが。

それにしても、2020年には東京でこの2つの大会をやるのですが、特にパラリンピックについて、今の国立競技場の小規模な改修でできると思っているのでしょうか、あの人達は?……いや、この話は長くなるので、掲示板のポスターを見てくれ!という事ではなくて。

今回はこの五輪を見ながら考えた一種の「思い付き」について、いろいろ考えてみました。

それがこのタイトル、冬季五輪でフットサルを実施する方法です。今回は短く、たった2ぺージ(苦笑)。

 

◎余裕と見込みのありそうな「新種目増設」

五輪で新しい競技や種目を行うためには、もちろん国際オリンピック委員会(IOC)総会での承認が必要です。現在の五輪では競技の肥大化が問題となり、2012年のロンドン大会では野球とソフトボールが実施競技から外されています。2016年のリオデジャネイロ大会ではゴルフと7人制ラグビーが追加採用されましたが、この2つを加えた28以外の新競技を五輪で採用するなら既存の競技との入れ換えが必要で、かつそれは大会の7年前までに決めるという五輪憲章の規定があります。これは、1つの競技団体にまとまって五輪への復活を目指す野球&ソフトボールが苦戦し、一方でレスリングがあわや外されそうになったというニュースの中で伝えられてきました。

ただ、2013年に就任したトーマス・バッハIOC会長はこの厳しい制約にこだわらず、「開催都市がやりたいならそれでもいい」という意見を持っているようです。それで一度は消えた野球&ソフトボールの復活に道が開けてきましたし、恐らく関係者は水面下で必死の交渉を続けているでしょう。確かに東京ならどちらも多くの観客を集めるのは間違いないですし、特に野球はもう巨大な「試合会場予定地」もありますね。

ところが、これらの制約は全て夏季大会の問題です。冬季大会で行われているのは現在7競技で、1998年の長野五輪でカーリングが正式競技として74年ぶりに採用され、次の2002年のソルトレイク大会でスケルトンがボブスレーの新種目として54年ぶりに実施された時も、他の競技を取りやめる事はありませんでした。今回のソチ大会でもジャンプ女子やフィギュアスケートの団体戦が純増の形で新設されています。

また、新種目の採用も非常に素早いです。ソチ大会では小野塚彩那が銅メダルを獲得しましたが、彼女は2011年4月にフリースタイルスキーのハーフパイプが正式採用されると決まった後の7月に、Xゲームで実施されていたこの種目への専念を発表しています。もちろん、そこからの練習で世界のトップクラスに立てるだけの基礎技術もあったのですが、わずか3年、つまり前回大会が終わった後から追加された種目でのメダル獲得でした。人気と普及の実績さえあれば、冬季五輪での種目増はこのように比較的簡単に進みます。

ましてフットサルの場合、間違いなくさらにハードルが低い「新種目」としての採用になるはずです。夏季五輪で1996年のアトランタ大会から正式に始められたビーチバレーは、国際バレーボール連盟(FIVB)が世界大会を組織し、バレーボールの新種目として採用にこぎつけました。フットサルも国際サッカー連盟(FIFA)が統括しているので、サッカーの新種目として問題なく認められるでしょう。

2018年の冬季五輪会場は平昌ですが、韓国代表はアジアフットサル選手権で4大会連続のグループリーグ敗退なので、自ら動く事は無さそうです。しかし、2022年はフットサルが盛んなヨーロッパ開催になる可能性が高いので、ここでの新種目採用は十分に目があるのではないでしょうか。

 

◎こんなにある実施のメリット

フットサルが冬季五輪で実施されると、いくつかのはっきりとしたメリットが生まれてきます。

今の五輪は莫大なテレビ放映権料に支えられているのは、もう皆さんもご存知でしょう。今では開会式の前から予選が始まるので、およそ20日間近くも試合が続きますが、大会の序盤から終盤までかけて優勝を決めるチームスポーツ競技は意外と多くありません。ロンドンでもサッカー・水球・バスケットボール・バレーボール(ビーチバレー含む)・ハンドボール・ホッケーの6つ、ソチではアイスホッケーとカーリングの2つだけしかありません。もしフットサルが冬季五輪に入れば、1つの金メダルの行方に世界中の視聴者が最初から最後まで釘付けになれる、特に冬季五輪では貴重な競技になります。

また、フットサルは新たな国々にも冬季五輪への関心を引き寄せます。現在の世界のフットサル界はブラジルとスペインの二強ですが、「常夏の国」ブラジルはまだ冬季五輪でのメダル獲得がなく、ピレネー山脈でスキーができるはずのスペインも1972年札幌大会の金と1992年アルベールビル大会の銅、合計2個しか取っていません(ソチではフィギュアスケートの男子シングルで4位)。アジアフットサル選手権では日本と常に優勝を争うイランも冬季五輪では「参加する事に意義がある」状態ですが、ソチには3カ国しか参加しなかったアフリカ諸国も含め、フットサルは「未開の市場」へ切り込むための重要な武器になるでしょう。

もう一つ見過ごせないのが「独自のサッカー大国」、アメリカです。ここではフットサルではなく、壁へのリバウンドプレーもOKというアイスホッケーのようなルールで行われる「インドアサッカー」が盛んで、2001年からはプロリーグも行われています。現在のメジャーインドアサッカーリーグ(MISL)は2008年に発足し、北東部を中心に8チームが参加しています。運営するのは、事実上メジャーリーグサッカー(MLS)の下にあるユナイテッドサッカーリーグ(USL)。MISLもMLSと同様にレギュラーシーズン&プレーオフ制を採用し、今年のプレーオフ決勝は先週末、3月14日と16日に行われてミズーリ・コメッツが優勝していました。1試合当たりの観客動員は4千人台、日本のFリーグでは2012/13年シーズンの全180試合で25万人強、1試合で約1500人と考えると、なかなかの入りです。ここに五輪という大きなイベントが加わればMISLをフットサルへ引き寄せられますし、MISLにしても約1万7千人のアイスホッケー、ナショナルホッケーリーグ(NHL)に迫る人気を得るチャンスです。

“Major Indoor Soccer League Official Site”
http://misl.uslsoccer.com/

五輪の主催国にもメリットがあります。他の競技と違い、夏季大会のサッカーは開催都市以外も含めた各地で開催するのが通例です。とすれば、フットサルにもこれを適用して、例えばソチだけではなくモスクワでも試合ができたかもしれません。

FIFAにとっても、フットサルの採用はIOCへの「貸し」を作れます。世界中で人気の高い「サッカー」を組み込ませる事で、テレビ放映権や観客収入でIOCに今まで以上の収益を与えられるなら、両者の関係はさらに良くなるでしょう。

また女子サッカーのように、フットサルにとっても五輪は非常に重要な大会になるはずです。現在のフットサルW杯は男子サッカーのW杯の中間、ちょうど夏季五輪と同じ年(2008、2012、2016)に開催されているので、冬季五輪で採用してもらった方がフットサルとしても都合が良いです。「世界一決定戦」が2年に一度できますね。もちろん、FIFAにもアメリカを含めた競技普及という大きな見返りがついてきます。

 

◎壁になるのは「マインド」?

こんなにプラスばかりな冬季五輪でのフットサル採用案ですが、今まで採用されていませんし、少なくともIOCやFIFAで公式に検討された気配もありません。その最大の、そして当然の理由は、「フットサルは屋内でやる競技だから」です。

思考力で行う「マインドスポーツ」(頭脳スポーツ)の中で、国際チェス連盟(FIDE)やトランプゲームの一種であるコントラクトブリッジの世界ブリッジ連合(WBF)などは1999年にIOCから国際競技連盟(IF)と承認され、反ドーピング規定などでIOCの規定を遵守しています。この両者は冬季五輪での正式採用を目指していましたが、2002年、大会規模の整理を進めていたジャック・ロゲ前IOC会長はマインドスポーツを五輪で行わない事を決めました。大きな理由は、

「冬季五輪は雪と氷の上でやる競技のみが行われるべき!」

これは、特にショーン・ホワイトのようなスーパースターが登場したスノーボードで盛り上がるXゲーム系種目の大量採用を招いた反面、チェスやブリッジの可能性を消す判断でした。

しかしFIDEは諦めていません。1927年に第1回が開かれ、今でも2年に1度行う自らの世界選手権は「オリンピアード」と名付けています。2014年の第41回大会は8月にノルウェーのトロムセーで開催しますが、エンブレムには五輪カラーも取り入れました。

その前の2012年は……あれ?8月から9月までイスタンブールでやってる?日本のマスメディアではほとんど報道されない部分で、2020年夏季五輪開催地を決定するIOC総会の1年前に合わせた「布石」は打っていたんですね。でも、五輪招致に失敗したらメンテナンスの意欲もなくなったようで、このオリンピアードの結果ページを見ようと思ったら、男女両方がトロイの木馬ウイルスに感染してました……。

エルドアン首相への批判を理由にTwitterも遮断したトルコ政府は、すっかりネットから引きこもってしまったようですね。

chess2014-2012

左は第41回チェス・オリンピアード・トロムセー大会、右は第40回チェス・オリンピアード・イスタンブール大会の公式ロゴ。

「Bid for 2020 -五輪候補3都市のサッカー会場比較」
https://qoly.jp/index.php/special/14357-bid-for-2020

五輪招致へ向け、サッカークラブも「イスタンブール2020」をアピール
https://qoly.jp/index.php/story/15838-20130403-istanbul-2020

一方でFIDEやWBFは国際マインドスポーツ協会(IMSA)を作り、2008年には五輪直後の北京で「第1回ワールドマインドスポーツゲーム」を開催しました。実施されたのはチェスとブリッジの他、IMSA加盟団体があってチェスボードを使って行う「ドラフツ」(西洋碁)と囲碁、これに中国象棋(シャンチー)を加えた5競技。2012年にはフランスのリールで第2回大会が行われ、囲碁では大沢摩耶が男女ペアで中曽根理樹と組んで同大会で日本史上初の金メダル、女子個人でも銀メダルを獲得しています。2016年には再び五輪開催都市のリオデジャネイロでの第3回大会を予定しています。

朝日新聞デジタル、2012年9月4日付
「ペア碁で金、個人女子銀 頭脳スポーツ五輪」
http://www.asahi.com/igo/topics/TKY201209040335.html

大沢摩耶のブログ
http://ameblo.jp/rintun/

……うーん、どうも変な方向にパスを出す癖が抜けないですね。

ともかく、冬季競技に新種目を入れるとすれば、こちらが優先かなという気も。IOC会長の交代は彼らにとってもチャンスのはずです。

あるいは同じ屋内競技、しかもフィジカルスポーツという点で、2020年の採用競技選考に最後まで残っていたスカッシュか。個人的にはフットサルもチェスもスカッシュもやればいいのにとも思いますが、なかなかそうもいかないでしょうし。

 

そんなわけで、前編でした。

後編では、もう少しシビア(?)な問題と、その劇的(?)な解決案について紹介します。

≪後半≫ ネタでは済まない「女子問題」

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