ルーニーは移籍してきてしばらく経つが、モイーズ、フェライニ、フィル・ネビルらスタッフ陣にとっては古巣との対戦となった。

ラファエルが復帰し、スモーリングがセンターバックに入った。前線は変わりなく、センターハーフにはフェライニとギグス。日替わりセンターハーフに苦しい事情が伺えることは誰の目にも明らかだろう。事実苦しいのは試合で見てとれる。

結果を先に述べてしまえば本拠地で0−1の敗戦。これをどう見るかは視聴者や関心のある人それぞれに任せるとして、内容としては拮抗したものだった。最も、昨期までを考えれば内容が五分であることがまず許せない人もいるだろう。常勝ユナイテッドは五分の試合を常にモノにしてきたからタイトルがある、といっても過言ではない。

エヴァートンにも決定機と呼べる場面は何度もあった。ただユナイテッドにPKが与えられておかしくない場面も何度かあった、プレミア基準にしても流し過ぎな印象を持ったのは私だけであろうか。笛を吹く気がないような印象さえ受けた。

愚痴はこのくらいにして先に進もう。

【芯が通らない縦のライン】

ポイントとしては前節同様「縦のライン」に芯を通せないユナイテッドが一体感のない攻守に終始してしまったことがこの結果を招いた。芯が通らないふにゃふにゃのポジショニングは、流動性というものではなくバランスを欠いたものだった。ここ数試合常に感じさせられるが、キャリックの復帰が一刻も早く待たれる。

スパーズ戦ではクレヴァリーの物足りなさについて指摘したが、この試合ではギグスについて語らなければならない。プレミアのレジェンドはセンターハーフでもプレーできるのだが、いかんせんウィングにいるときよりも非常に「波」がある。いい時はもちろん文句ないが、悪い時は非常に悪い。センターハーフで調子が悪ければチーム全体のリズムに関わってしまう。潤滑油がサビを招いてしまっては元も子もない。ただ、ギグスをセンターハーフで起用せざるを得ない状況であることが問題であるのでこのジャックナイフ1人に責任をなすりつけるわけではない。彼はやはり生粋のレフトウィングである。

ギグスと共にセンターにいたフェライニも同罪か、と問われるとこの日は懸命にバランスをとっていたように見えた。辛口の採点が付いているところもあるようだが、私は極端に悪かったとは思わない。ただ、この2人を並べてしまうと、機動力に優れないセンターハーフの出来上がりでしばしばバークリーらを自由にバイタルエリアで野放しにしてしまうことがあった。ギグスがフラっと上がってしまうところを埋めきれず、香川がしばしば下がって穴埋めしていた。

【香川は器用なのか不器用なのか】

あまり香川香川と他のメディアのように言いたくはないのだが、ユナイテッドのポイントとして避けて通れないので言及しないわけにはいかない。

責任感あるプレーをしようというのは伝わってくる。ただそれがどのようなプレーであるべきか、という点で非常に迷いが見られる。チームの中での役割がどうあるべきかという点なのだろう。賢いプレーヤーであるが故にバランスの不均衡がもどかしいはずだ。

キャリックが離脱してから、以前にもまして「個」による打開で攻めなくてはならなくなっている。ゲームメイク、オーガナイズ、ビルドアップする人間がピッチにいないからだ。カウンターフットボールを目指しているのならこれも問題ないが、そうではないチームにとっては前後が繋がらず、連動性に欠けてしまう。スパーズ戦では位置を下げずに前線に残り続けたが、ビルドアップがままならず結局サイドへとポジションを変えている。この試合ではビルドアップがうまくいかないことにはどうしようもないと悟ったのか、しばしばフラつくギグスの穴埋めをする形で、定位置から降りていく場面が多かった。しかし彼の本来の姿は「フィニッシュに絡むレシーバー」である。ポール・スコールズのような仕事ではない。

賢いが故に自らのエゴよりもチームのバランスを気にしてしまう。そうしなければチームの結果が出そうにないからだ。言うまでもなく香川は非常に優秀な選手だ。ただ、ドルトムントで見せていたようなパフォーマンスは、優秀なパスの出し手がいて成立していたものであり今のユナイテッドにはそれがない。

優秀なレシーバーは優秀なパサー無くして力を発揮することは出来ない。前にはバリオスやレヴァンドフスキ、横にはゲッツェ、後ろにはシャヒンやギュンドアン、そして最終ラインからもフメルスが精度の高いボールを入れてくれたあの夢の様な環境はマンチェスターの地にはないのだ。生かされる側の選手が生かす側の役割を必死にこなそうとしている姿を見るのは非常に心苦しくもある。楔のパスを受けて素早く前を向くことも無ければ、ルーニーを追い越して飛び出すこともなかった。改めてドルトムント時代のハイライトと比べると別人である。

見えてしまうが故に器用であろうとするフィニッシュに絡めない香川の苦悩はひとまず置いておこう。

【早めの交代は妥当だったのか】

モイーズは香川とラファエルが早々下げたが、決定的な「ミス」だったようには私には思えない。この交代策が結果失点につながってしまったことは確かに事実だろう。サイドバックに下げられたバレンシアはまたもファーのボールを見送って詰められてしまうというミスをした。逆算していけばこの交代が決勝点を招いたと見えるが、ヤヌザイとナニを投入してからはエヴァートンを押しこんでいる。ビルドアップが期待できない以上、香川ではなくシンプルにサイドアタックで攻める、という意図があったように見えたがこの点では狙いはしっかりと遂行出来ていたように見えた。ただそれが結果には結びつかなかった。

香川ではなくウェルベックを下げるという手もあっただろうが、押し込まれていた時間もあったのでカウンター主体になることもモイーズの頭にあったのかもしれない。香川を外すことでポゼッションが落ちたとしても、広大なスペースにカウンターをしかけるならウェルベックの速さが生きる。結果は逆に押しこむことでウェルベックの生きるスペースが生まれることはあまりなかった上に、決定機も外してしまうなどいいところが発揮されることはなかった。裏目に出たのはここだろう。リスクテイクの世界は難しい。私個人の視点からすると交代自体は妥当だと見る。みなさんは如何でしょう。

結果が出なければ全てミス扱いというのは少々酷であるが、避けて通れない現実でもある。しかし中身を見ずに断罪論調で語るのは非常に危うい。采配が上手くいこうとも、不確実性の強い競技故に結果に直結しないことも多いからだ。だからこそフットボールは面白く、世界中で愛されている。

【マネージメントは難しい】

冬のマーケットが近づくに連れ、単に選手を獲ってくるというのは簡単であるがそう簡単に話がいくものでもない。ファン・ペルシーが復帰すれば無理にビルドアップに注力しなくても点が獲れるかもしれない。キャリックが復帰すればビルドアップの問題も改善するかもしれない。ただしいつどこで誰が怪我をするかは分からない。主力2人を欠いてはごまかせない現状に手を加えるのか、それとも無理にいじらないのか。いくら矢の先端が鋭くても、発射する弓が弱々しく不安定なら意味がない。大胆かつ繊細なマネージメントとは非常に難しい。

どうあろうとも私にとってマンチェスター・ユナイテッドはひとつしかない。結果が上手くでない時もあることもわかってはいる。それでも叫ばずにはいられないこともあるが、今シーズン一杯は例え例年通りの結果が残せなくとも受け入れることだろう。白旗宣言ではなく、あくまで心構えの話だ。ただ、これまで散々一喜させてもらってきたのだから、少々の一憂くらいでイライラしていてはキリがない。まだリーグ戦は半分以上残っている。どうなるかは最終節まで分からない。

にしてもルカク良かったな・・・。


筆者名:db7

プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
ツイッタ ー: @db7crsh01

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