近年めざましい経済発展を見せる中東で、なんとも悲惨な社会問題が起きた。
英国紙『Telegraph』は25日、カタールで法外な労働を強いられた近隣国からの移民44名が死亡する事件が発生したと伝えている。
2022年のW杯開幕を控えるカタールでは現在、インフラ整備が国家的に急ピッチで進められており、それにともない莫大な雇用が創出されている。
しかし、この増大した雇用機会を享受しようと移住してきた近隣国からの移民らに対し、法外で劣悪な労働環境を提供する事件が国内で多発。今年6月と8月の2ヶ月間でも、少なくとも44名ものネパール人がドーハで死亡したとのこと。
同紙はカタールの労働環境について、「移民労働者はパスポートを奪われ支配権を完全に搾取され、気温50度にもおよぶ天候の中、飲料水を摂取することさえ許されない」と伝えており、「混みいった閉鎖された空間で12時間以上の労働が強制されている」との報道もある。
ネパールでは每年40万人もの移民が働く場を求め国を追われ、そのうち1/4に相当する10万人もの移民がカタールに辿り着いているという。
今回の事件で亡くなった1人、ネパール人のギャネッシュ・ビシワカルマさんは享年16。雇用を求めて母国を発ったその2ヶ月後、無残なことにカタールの地で死亡が確認されたのだった。
ギャネッシュさんの祖母は「ギャレッシュがこんなことになるなんて信じられないわ。今こうして泣いているなんて、あの時は思いもしなかった」と英国紙『Guardian』の取材にコメントを残している。
今回の一連の事件に対し、英国紙はそれぞれ“Slave(奴隷)”と大きく見出しを打った。確かに、カタールに蔓延するこの不正就労の実態は、奴隷と呼ぶに相応しいだろう。
冬季開催への移行や開催地変更がしきりに叫ばれている2022年大会に、またしても大きな問題が突きつけられた。