常田真太郎氏(スキマスイッチ)に聞く、
エキシビションマッチ専門サッカーチーム「SWERVES」とは?

スキマスイッチといえば、2000年代以降の音楽シーンを代表するアーティストと呼んで差支えないだろう。透き通るような歌声と独特なヘアスタイルは世間から愛され、誰しも彼らの代表作を口ずさむことができる。最近では楽曲提供やプロデュースにまで活躍の場を広げており、精力的に音楽活動に勤しんでいる。 

そんな彼らだが、実はサッカーとの関わりも深い。中でも、鍵盤兼コーラスの常田真太郎氏は芸能界きってのサッカー通としても知られており、意外なところで私たちとの接触がある。例えば常田氏は、J SPORTSのサッカー中継のゲスト解説として出演したことがあり、2008-09シーズンには、プレミアリーグ中継のハイライトに楽曲を提供している。また、2006年に設立したプライベートレーベルには「doppietta(ドッピエッタ=イタリア語で「1試合2得点」の意味)」と名付けるなど、まさに自他ともに認めるサッカー好きなのである。 

そして、常田氏が代表を務めるエキシビションマッチ専門サッカーチームが「SWERVES(スワーブス)」である。SWERVESは、「自分たちの活動で一人でも多くの人がスタジアムに足を運び、サッカーの楽しさに気付いてほしい」 という信念の下活動している、一風変わったサッカーチームである。彼らの本意は、ただ漠然とプレーすることにはない。「芸能人である自分たちを通じて、スタジアムの動員に繋げたい」 という想いから、主にJリーグやFリーグの前座試合でスタジアムを盛り上げている。 

そんなSWERVESがこのほどセレッソ大阪OBチームとの前座試合を行った。この試合はJ1第8節セレッソ大阪vs大分トリニータの前座試合として組まれ、リニューアルされたキンチョウスタジアムのこけら落としにもなった。また、あのジャニーズのアイドルや現役の民法テレビ局アナウンサー、さらには元サッカー日本代表の藤田俊哉氏らも参加するなど、豪華な面々がピッチを駆け回った。詳しいレポートはこちらを参考にしていただきたい。

▼「ライブより全然緊張します(笑)」

この日、キンチョウスタジアムには約1万4千人が押し寄せた。これは、キンチョウスタジアムの約70%を収容した計算になる。この前座試合をきっかけに、Jリーグに初めて触れた方も大勢いたことだろう。試合後、常田氏にお話を伺った。

Shintaro Tokita

「まず、お客さんがたくさん見に来てくれたことが嬉しかったです。セレッソさんのサポーターの方は本当に盛り上げ上手だなと思いました。試合については2得点と、感無量です(笑)出来過ぎなくらいで、自分でもびっくりしています」

常田氏は少し照れながら、この日の試合を振り返ってくれた。これだけ大勢の人の前での2得点は自身でも初めてのことだという。普段から大勢の人の前で演奏する機会の多い常田氏。ライブと試合では、一体どんな違いがあるのだろうか。

「これだけのお客さんの前での2得点は初めてで、高揚して正直今でもフワフワしています。ライブはほとんど緊張しないのですが、自分のところにボールが来るとめちゃくちゃ緊張しますね(笑) 」

意外なことに、自身のライブより試合の方がはるかに緊張したそうだ。これまで様々なツアーや生放送で大勢の人へと音楽を伝えてきた常田氏でも、大観衆の前でボールを蹴ることはまだまだ慣れる気配がないようだ。

▼「誰よりも会場の盛り上げ方を知っているのは、中田ヒデさん」

SWERVESは数多くのエキシビションマッチの中で、名立たる名プレーヤーたちと熱戦を繰り広げてきた。これまでプレーした選手の中で、印象に残っているプレーヤーはいるのだろうか。

「やはり元Jリーガーの方は皆さん本当にレベルが違います。中でも、森島さん(森島寛晃氏)とヒデさん(中田英寿氏)はスタジアムを盛り上げるのが本当に上手いと感じました。何をしたら盛り上がって、何をしたらダメなのかを第一に考えていますね。ヒデさんなんかは勝負しないと怒られるんですよ。一対一では「こいよこいよ!」と言ってくるし、パスを出したら『なんだよ~』と平気で怒られます(笑)」

Shintaro Tokita with Hiroaki Morishima

さすがの常田氏も、日本のレジェンドには頭が上がらない様子だ。この試合では、現役時代のマラドーナに扮するお笑いトリオ「春夏笑冬」のディエゴ加藤マラドーナ氏が、なんでもないボールに神の手ばりのハンドでイエローカードを受けるなど、一般的なサッカーとはまた異なる魅せ方で会場を盛り上げた。こういった“ユルい”サッカーの楽しみ方は、これまでのJリーグにはあまりなかったものかもしれない。

▼「ピクシーの今現在のプレイって、見たくありませんか?」

スタジアムの動員向上を第一に掲げるSWERVES。今後のビジョンを伺った。

「やはり、『お客さんをスタジアムに』という部分が根幹にあるので、動員が上がらない時やお客さんを増やしたいって時に、最初に名前が挙がるくらいのチームになりたいですね。J2やJFL、なでしこはもちろん、ボールを蹴るというレベルではフットサルも同じだから、Fリーグからもお呼びがかかれば嬉しいです」

SWERVESに所属するメンバーの全員が、かつては泥だらけになってボールを追い、プロを夢見たサッカー少年であった。その夢が叶わなかった彼らだからこそ、「スタジアムを観客でいっぱいにしたい」という野心に溢れているようだ。

「個人的には、現役の監督さんがボールを蹴るところが見てみたいんです。サポーターもきっと『クルピ監督って今はサッカーって上手いのかな?』と思っているはずです。だから、例えばファン感謝デーなんかでコーチ、監督さんチームと試合をするというのもおもしろいですよね。ピクシーの今現在のプレイとかも見たくありませんか?」

Shintaro Tokita with SWERVES

密かな野望をこのように語る常田氏。確かに、現役監督がボールを蹴る姿は、サポーターとしては興味をそそる部分ではある。この構想が実現する日を期待したい。

▼「『どうすれば盛り上がるか』だけを考えている」

「当初は、77年度会(1977年生まれのアーティストやプロスポーツ選手、クリエーター、実業家などを集めた会。垣本右近氏と発足。)の草フットサルチームのような形で発足させました」

「最初のエキシビションマッチのオファーを頂いてからは『どうすれば会場が盛り上がるか』だけをとりあえず考えて、どんどん縁のある人を呼び込みました。あとはお子さんやご家族連れに人気のある方なども考えつつ、そのスタジアムの土地柄に合わせたりしながら毎回の招集メンバーを考えています。だから、例えば地元のラジオのDJさんなど、会場で初めて会う方もいます。いずれにしても、年齢や仕事が違っても、サッカーを応援してくれる方なら大歓迎です」

最後に常田氏は、SWERVESの発足の経緯を話してくれたが、インタビューを通して伝わってきたのは、「どうすれば集客に繋がるか」という一貫した姿勢だった。芸能人という自分たちを媒介にスタジアムに足を運んでほしい―。そこには、確固たる信念のようなものがあった。

まもなく開幕20周年を迎えるJリーグ。近年、その観客動員数は若干の陰りを見せている。しかし、20年前の今頃、「スタジアムをいっぱいにしたい」と活動するエキシビションマッチ専門サッカーチームができることなど夢のまた夢であったようにも感じる。

はたして、SWERVESはどれだけ日本サッカー界に貢献できるのだろうか。SWERVESという意思あるサッカーチームの存在を、是非覚えていていただきたい。

※SWERVESの情報はこちらから
http://www.swerves.jp/


 

筆者名:くわけん

プロフィール:『兵庫県西宮市在住の大学生。競技としての魅力はもちろん、文化や側面としてのサッカーの魅力を一人でも多くの人に伝えたいです。サッカー実況界の神=倉敷保雄さんと写真撮ったことだけが自慢。』
ツイッター:@kuwaken0607

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