筆者は以前に「近未来が楽しみなスリーライオンズ」というコラムを書いた。このコラムでは、ロンドン五輪、EUROで輝いたスリーライオンズ(イングランド代表の愛称)の未来を担うべきタレントを一挙に紹介したのだが、今回はその続編・追記として、改めて超有望株をリポートしていきたい。

・「完全復活」を果たしたウィルシャー

スリーライオンズを背負って立つタレントとして、真っ先に名前が上がるのが、若き天才司令塔のジャック・ウィルシャー(アーセナル、21歳)だろう。2010-11シーズンに”要注目の若手逸材”として脚光を浴びたウィルシャーだったが、2011-12シーズンは痛めた左足首のリハビリに費やし、公式戦の出場がなかった。だが、迎えた今シーズンは、第9節対QPR戦でカムバックを果たすと、その後は徐々に試合勘を取り戻し、負傷離脱前と変わらぬパフォーマンスを披露。ピッチ上で躍動するその姿は観る者に「完全復活」を印象付けた。

アーセナルの「10番」を背負うウィルシャーの最大の武器は「正確な左足のキック」と「視野の広さ」である。相手ディフェンダーのプレッシャーをものともせず、長短を問わずに繰り出されるその正確なキックは、相手チームの急所をぐさりと刺す。また、優れたプレービジョンを持つウィルシャーは試合のリズムを作り、コントロールすることのできる稀有なプレーヤーでもあり、今夏にスペインのマラガから加入したサンティ・カソルラとの連携も日増しに深まっている。

更に、攻撃面で違いを生み出すウィルシャーはイングランド人のセンターハーフらしく”ハードワーク”も厭わない。ボールホルダーへの果敢なチャージ、球際の激しさは、ユニフォームを泥まみれにするウィルシャーの姿が物語っている。長きに渡るリハビリ生活を乗り越えたメンタリティーの強さも特筆すべき点であり、このまま順当に成長すれば、ガナーズ(アーセナルの愛称)、スリーライオンズの押しも押されもせぬ中心選手として活躍することは間違いない。

 

・日進月歩のクレヴァリー

ウィルシャーと同じく中盤センターでプレーするトム・クレヴァリー(マンチェスター・ユナイテッド、23歳)も今後の成長が楽しみな好タレントだ。所属チームでは、”ポスト・スコールズ”として期待されるクレヴァリーだが、今シーズンは随所に成長を裏付けるプレーを披露し、怪我に祟られた昨シーズンのうっ憤を晴らす活躍で首位を走るチームを支えている。

クレヴァリーのプレースタイルは、ボールをシンプルに捌きながらリズムを作り、自らも積極的にフィニッシュに絡むエネルギッシュなモノ。このスタイルは大先輩のポール・スコールズと似通う部分が多く、今シーズンは特にフィニッシュの場面でスコールズを彷彿とさせる攻め上がりを見せている。攻撃の最終局面での精度を高めることができれば、ユナイテッドの積年の課題となっている「スコールズの後継者問題」にけりを付けることができるかもしれない。

 

・抜群の加速を誇るスターリング

その天与のスピードで多くのサッカーファンに衝撃を与えたのが、ウインガーのラヒーム・スターリング(リヴァプール、18歳)だ。第2節対マンチェスター・C戦において、若干17歳の若さでスタメンに名を連ねると、この一戦以降定位置を確保。相手ディフェンダーを一瞬にして置き去りにする抜群の加速と果敢に1対1を仕掛ける強気な姿勢を武器にサイドを疾走し、観る者に特大な驚きを提供するこの若き韋駄天は、伝統的にサイドアタックが重視され、これまでも質の高いウインガーを数多く輩出してきたイングランドが誇る「最新作」にして「近年の最高傑作」なのだ。

2012年11月14日に行われたスウェーデンとの国際親善試合では、17歳と342日(史上5番目の若さ)でフル代表デビューを飾るなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのスターリング。最近のリーグ戦では、前半戦のフル稼働の代償からか出場機会に恵まれていないが、将来性・スター性は抜群なだけに、今後の活躍を楽しみにしたい。

 

・念願の「センターフォワード」で起用されて輝いた俊英たち

ダニエル・スターリッジ(リヴァプール、23歳)とセオ・ウォルコット(アーセナル、23歳)。この2人に共通するのが、かねてから熱望していた「センターフォワード」で起用され、結果を残しているという点だ。

これまで、この両者は主に「右サイドアタッカー」として起用されることが多かった。左利きのスターリッジはカットインからのフィニッシュワーク、右利きのウォルコットは快速を活かした縦の突破が持ち味だったが、両者とも中央でのプレー志望を公言してきた。特にスターリッジの場合、前所属のチェルシーではスペイン代表のフェルナンド・トーレスの陰に隠れ、「センターフォワード」での出場が叶わなかったことが今冬の移籍につながったが、新天地のリヴァプールでは希望通り「センターフォワード」でプレー。チームの得点源であるウルグアイ代表のルイス・スアレスとの相性は抜群で、加入後のリーグ戦7試合で4ゴールを奪う活躍を披露している。

一方のウォルコットも、絶対的なエースとして君臨したロビン・ファン・ペルシー(現マンチェスター・U)の移籍とフランス王者のモンペリエから加入したオリヴィエ・ジルーの不調という絶好のチャンスを活かし、念願かなって「センターフォワード」の位置で起用されると、これまでの”ウォルコット像”を覆す印象的なゴールを連発。ウォルコットには期待の裏返しから来る批判が絶えなかったが、第28節が終わってキャリアハイとなる11ゴールをマークするなど、完全に一皮むけた印象だ。

両者とも、チーム状況によっては、これまでと同様に「右サイドアタッカー」で起用されることが少なからずあるかもしれない。だが、「センターフォワード」で起用されたことによって得た”確かな自信”と”新たな引き出し”は「右サイドアタッカー」としてプレーする際にも間違いなくプラスとなるはずだ。今後のスリーライオンズを引っ張っていくであろうスターリッジとウォルコットにはこれからも注目していきたい。

2013/3/7 ロッシ


筆者名:ロッシ
プロフィール:エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
ツイッター:@antelerossi21

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