2部に慣れているカーン、1年での復帰も?

オセール、ディジョンとは逆に、安定した戦いを見せているのがカーンである。かつては攻撃的なチームとして知られたが、今年は14試合で10失点と、ナントと並んで堅守を誇っている。マテュ・デュアメル、ロラン・アグアジ、ジャン=ジャック・ピエールとお金をかけた補強がしっかり戦力となっているのも重要なポイントだ。また、あまり戦力になっていなかったエンバイ・ニアングの放出で資金を得ており、冬のさらなる補強も可能だろう。


カーン:基本フォーメーション

昨季リーグ・アンから降格したが、監督は前任のフランク・デュマの元でアシスタントコーチを務めていたパトリス・ガランドが引き継いでおり、ほぼ体制に変更はない。という事は、今のカーンというチームは2度の降格、昇格を経験しているといえる。さらにソルボン、スーブなどこのチームで長く活躍してきたベテランを残した。これが波のない結果をもたらしているのではないか。

経験豊富なアグアジ、スーブが中央を締める守備は安定。前任のフランク・デュマが好む尖ったDFであるグレゴリ・レカとアレクサンドル・レノーはスタメンから外れ、よりオーソドックスな戦い方に変更されている。

攻撃面では、2部の名万能ストライカーとして知られているマテュ・デュアメルが柱となり、ベラルーシでのプレー経験を持つ異色のLSBモンタルプ、ル・マン時代は松井大輔選手の同僚であったことで知られるRSBカルヴェがクロスを供給する。また昨季台頭したファイサル・ファジルのプレーも見逃せない。強烈なミドルシュートと正確なセットプレーを持ち、彼が難しい場面で決め手を作ってくれる。



決して爆発力のあるエースはいないが全体の総合力が高く、確実に勝ち点を拾っていけるチームに仕上がっている。彼らにとっては、混戦が続けば続くほど有利になっていくのではないだろうか?

低迷した名門、ついに1部復帰か?

2部では突出した資金力を誇るナント、モナコであるが、これまでは苦戦を続けていた。モナコは昨季1シーズンのみであるが、ナントに至っては2009年に降格して以来3シーズン低迷し、15位、13位、9位と昇格争いに絡む事すら出来ていない状態にあった。しかしこの2チーム、今季は違う風が吹いている。

まずはモナコを見ていきたい。昨シーズンの迷走ぶりはあまりに有名である。ローラン・バニド監督を継続してシーズンをスタートさせたものの、結果を出せず序盤に解任。そこで迎えたのはクラブOBでもある元イタリア代表FWマルコ・シモーネ氏であったが、いくら名選手とはいえ監督初経験の彼に全くベースがないチームを与えるのは荷が重かった。後半戦で快進撃を見せ昇格争いに絡むも、一歩及ばず2部残留となった。

しかし、昨季の戦いは大きな財産を残した。それが今年1月に中東から獲得したセネガル代表FWイブラヒマ・トゥレである。イラン、UAEで圧倒的な結果を残してきてはいたが、フランスリーグは初挑戦。しかしそれを感じさせない大活躍を見せ、半年で10ゴールをあげた。今季は彼がさらにストライカーとして成長し、相棒ヴァレール・ジェルマンと絶妙なコンビを形成。11月の段階で昨年の得点数を上回っている。





モナコ:基本フォーメーション

このメンバーを見れば、1部時代のモナコから残った選手が非常に少ない事が分かるだろう。ナンパリス・メンディ、ヴァレール・ジェルマンが降格したシーズンに出場機会を少し得ていた程度で、デニス・アピアーやレイヴァン・クルザワがユースからの補強である。攻撃は総じて若いメンツで構成されており、デュモン、ラッジ、ヴォルフ、アドリアーノなどのベテランが守備を担当する。

そして監督はイタリアから迎えたクラウディオ・ラニエリ氏が務めている。彼らしくそれほど特別な戦術はなく、実際モナコの戦いはイブラヒマ・トゥレとヴァレール・ジェルマンの2トップの相互関係、そしてフェレイラ=カラスコとディラールの個人能力、ベテランディフェンダーの経験に頼る部分は大きく、若さによる波も感じる。

しかし、それでも勝っていけるほど選手の才能は豊かで、そして戦力の層は厚い。ターゲットマンとストライカー両方の役割を兼任できるイブラヒマ・トゥレ、それを支える献身的なジェルマン、そしてファンタジックなドリブルで試合を沸かせる両ウイング。

彼らが出られなくても、ベンチにはアルゼンチンから獲得した有望株ルーカス・オカンポス、スウェーデン代表MFエミル・バイラミ、デンマーク代表MFヤコブ・ポウルセンが控える。元オランダU-20代表FWナセル・バラジテ、ウルグアイ人FWセバスティアン・リバスの2名は全く出番がないほどの充実ぶりだ。





唯一苦しんでいるのはサイドバックだ。サイドバックが可能なアドリアーノは怪我でシーズンを戦えず、ザヴェラス、クルザワ、アピアー、マレステルと皆信頼を得るまでに至っておらず、カーゲルマッヒャーが担当することも多いが、そうなればセンターバックのサブがいなくなる。先日中村北斗選手を獲得するという噂も立ったが、彼でなくとも何かしらの補強は必要となるポジションだろう。

そしてナントは、そんなモナコを12節で破り、今季スタッド・ルイ・ドゥでの初黒星を付けたチームだ。カーンと並んでここまで最少失点を記録しており、それでありながらも第2節以来無得点の試合がない。戦い方も一貫しており、粘れるチームに変貌している。

それを牽引しているのは、これまで才能は高く評価されながらも結果に繋がらなかったセルビア人FWフィリップ・ジョルジェヴィッチである。




ナント:基本フォーメーション

体格に優れながらもスピード豊かで、テクニックにも長けており、左利きながら両足を使える器用さを備え、巧みなドリブル突破も備えている。一方で致命的に決定力がなく、極めて難しいシュートを決める反面簡単なチャンスをことごとく外す、計算し辛い選手であった。だが今季は彼の成長が目覚ましい。14試合全てに出場し13ゴールと驚異的なペースで得点を積み重ねている。これがチーム躍進の最大の要因である事は間違いない。

パートナーのユデリーンは2部の経験が長いベテランMF。今季は最前線にポジションを移し、献身性でエースを支える大きな働きを見せている。中盤では実績あるヴァンサン・ベサが安定した活躍を見せるほか、久々のユース出身のMFジョルダン・ヴェレトゥが1年の経験を積んで成長。4部から獲得した若きマリ人MFビラマ・トゥレが見事に当たり、レギュラーに定着したことも大きい。





才能を高く評価される元フランスU-20代表MFアドリアン・トレベルがスランプに陥っている感があるが、サイドもこなせるヴェレトゥ、ベネズエラ代表MFガブリエル・シチェロがその穴を埋めている。最終ラインはマドゥニ、ヴェニョー、イサ・シソコ(バレンシアのフランス代表DFアリ・シソコの兄である)と経験豊富。若きジロボジもようやくセンターバックが板に付いてきた。

監督を務めているミシェル・デル・ザカリャン氏は、アルメニア人ではあるが選手時代もナントでプレーし、07/08シーズンにも指揮を執った、クラブを知り尽くした指導者。クレルモン・フットを率いて昇格争いに絡み、チーム史上最高となる5位という結果を残し、古巣に凱旋。期待に応え、得意とする堅守とカウンターで結果に繋げている。

(次回に続く)

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