10月6日にカシマスタジアムで行われた第28節FC東京戦で5-1の快勝を飾った鹿島アントラーズ。この試合では、攻守の歯車ががっちりと噛み合った素晴らしいパフォーマンスを本拠地のサポーターの前で披露した。7回目を迎えた今回の鹿島リポートでは、最近の試合から読みとれる「浮上のキッカケ」を述べていきたい。
・功を奏した『4-2-3-1』へのシステム変更
Jリーグ発足以来『4-4-2』を基本システムとして戦ってきたアントラーズだが、今シーズンから指揮を執るジョルジーニョは開幕戦で新機軸の『4-3-1-2』を採用するなど、チームに変革をもたらす動きを見せていた。だが、『4-3-1-2』は上手く機能したとは言い切れず、ジョルジーニョは選手たちの体に染みついている『4-4-2』をメインシステムとして戦うことを決断。『4-3-1-2』はオプションとして(主に後半の途中から)、流れを変える手段として用いられるようになった。
そのジョルジーニョが再びシステム変更に踏み切ったのが、第27節のガンバ大阪戦からだ。ジョルジーニョは攻撃力が自慢のガンバ大阪対策として、大迫勇也を1トップの位置に配し、柴崎岳、レナト、ドゥトラの2列目が大迫を支えるバランス重視の『4-2-3-1』を選択したのだ。
結果として2度のリードを守れず、2-2のドローに終わったものの、
「守備の安定性を求めて戦った。対戦相手のG大阪は中盤の構成力があるので、そこをしっかりとして攻守の早い切り替えを意識させた。それは全員が良くできたと思うし、先制しリードできた」(ジョルジーニョ)
「サコ(大迫)に負担がかかるけどボールも収まるし、4-2-3-1は手応えを感じている」(本山雅志)
(http://www.so-net.ne.jp/antlers/games/973)と監督、選手からもポジティブなコメントが聞こえた。
次節のFC東京戦でも『4-2-3-1』が採用され、冒頭でも触れたように、約一ヶ月ぶりにリーグ戦で勝利を収める。この試合でも、攻守のバランスがしっかりと取れており、特に試合の進め方は3連覇を達成した時の強さを想起させるものだった。
監督、選手のコメントからも
「前節から新たなシステムにトライしているが前節も手応えがあったし、選手たちもプラスと考えていた。遠藤が入って、相手陣内でボールを持てるようになった」
「私が強く望んだのは守備の徹底と攻守の切り替え。それがうまく出来るようになったし、レナトも本来のポジションでやれるようになり、いいパスが出せ、彼の力を活用できるようになった。」(ジョルジーニョ)
「チャンスを作れていたし、うまくボールを回せていた。コースを切ったり、サイドにボールを追いこんだり戻るのも早く、バランスもタイミングも良く意識の高いゲームだった。チームとしてしっかり勝てたことが良かった」(曽ヶ端準)
(http://www.so-net.ne.jp/antlers/games/974)
と確かな手応えを掴んでいることがうかがえた。
システム変更後のガンバ大阪戦、FC東京戦では、DFラインを低めに設定し、ブロックをしっかりと作る守備が徹底されれていた。また、攻撃面では、奪ったボールを最前線の大迫に集め、そこからの多彩な攻めが効果的であった。特に、柴崎に代わってテクニックに優れる遠藤康を2列目に起用したFC東京戦では、遠藤、レナト、ドゥトラの3人が流動的に動くことで、幾度となくチャンスを演出していた。
・高まる大迫の存在感
新機軸である『4-2-3-1』のカギを握るのは、1トップの選手であることは間違いない。2列目の選手を生かすポストプレー、チャンスメイク、そしてフィニッシュを担うだけに、ハイレベルな人材が求められるが、アントラーズの「9番」を背負う大迫はその豊かな才能を1トップで開花させようとしている。 前監督のオズワルド・オリヴェイラ時代にも『4-2-3-1』(通称・本山システム)が採用されていた時期があったが、その時の大迫は1トップでは無く、左サイドのウインガーとして、得意とする左サイドからの仕掛けを担っていた。だが、その後のU-23代表では、1トップとして起用され、2列目の選手たちを生かすポストプレーを習得。U-23時代の経験が現在に繋がっていると言えるだろう。
前述したガンバ大阪戦、FC東京戦では、ゴールこそなかったものの、安定したポストプレーと、前線からの守備で確かな存在感を見せた。いずれの試合でも決定的なチャンスを逃してしまったが、チャンスを確実にモノにする勝負強さが備わってくれば、フル代表の扉も見えてくるはずだ(幸いなことに、フル代表を率いるザッケローニが求める1トップ像と大迫のプレースタイルは重なる部分が多い)。挫折を味わったロンドン五輪メンバーからの落選を経て、「頼もしさ」「逞しさ」を身に付け始めた大迫から目が離せない。
・タイトル獲得に期待!
FC東京戦の後に行われた天皇杯3回戦のガイナーレ鳥取戦、ナビスコ杯準決勝第2戦の柏レイソル戦でも引き続き『4-2-3-1』が採用され、天皇杯は4回戦進出、ナビスコ杯は2年連続の決勝進出を決めるなど、『4-2-3-1』が完全に軌道に乗ってきた。
リーグ戦では、第28節を終えて13位と不甲斐無い成績ではあるが、スルガ銀行チャンピオンシップに続くタイトル獲得は、就任一年目のジョルジーニョにとって大きな自信となるはずだ。まずは、11月3日に行われるナビスコ杯決勝(対戦相手は清水エスパルス)を制して、来シーズン以降の反攻の起爆剤にしたいところ。通算16冠目を達成できるよう、筆者も心の底から応援しようと思う。
2012/10/14 ロッシ
※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。
筆者名 | ロッシ |
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プロフィール | 『鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックを応援している大学生。ダビド・シルバ、ファン・ペルシー、香川真司など、足元が巧みな選手に目が無いです。野球は大のG党』 |
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