関塚ジャパンの快進撃が止まらない。

準々決勝のエジプト戦で3-0の快勝を収め、1968年に行われたメキシコオリンピック以来44年ぶりのメダル獲得に大きく前進。準決勝のメキシコ戦に勝利すれば、オリンピックの男子サッカー競技において、日本サッカー界初の決勝進出となる。

向かうところ敵なしといった感じの関塚ジャパンを支えるのが4試合連続で完封中の守備だ。前線からの連動したプレスとオーバーエイジで招集され、チームに落ち着きをもたらした吉田麻也(VVVフェンロ)、徳永悠平(FC東京)、抜群の安定感を誇る守護神・権田修一(FC東京)を中心としたDFラインが相手の攻撃陣を沈黙させている。

そして、その堅守に絶大なる貢献を果たしているのが、今回のコラムの主役である山口螢(セレッソ大阪)だ。

・山口の特筆すべき武器

ボランチの位置でプレーする山口の最大の武器は卓越した危機察知能力とバランス感覚である。出足の鋭いプレスでボールホルダーからボールを奪うプレー、相手DFからMFまたはFWへと送られるくさびのパスにいち早く反応し、ピンチを未然に防ぐプレーや、サイドバックの攻め上がったスペースをきちんと穴埋めし、チームのバランスを保つプレーが彼の持ち味なのだ。

特に、その危機察知能力の高さとバランス感覚は現役時代に世界屈指のボランチとして鳴らした元フランス代表クロード・マケレレ(レアル・マドリー、チェルシーなどでプレー)、フル代表のキャプテンを務める長谷部誠(ヴォルフスブルク)、Jリーグで長く活躍している明神智和(ガンバ大阪)を想起させるものである。

また、山口のもう一つの武器として試合の終盤になっても衰えない豊富なスタミナが挙げられる。関塚監督が山口に厚い信頼を寄せ、起用し続けている最大の理由は山口が「調子の波が少なく、試合を通してチームの為に貢献できる」数少ないプレーヤーだからなのだ。

そして、ボールを奪ったあとの正確なつなぎも山口の価値を高めている。セレッソ大阪、関塚ジャパンの両方でコンビを組む扇原貴宏は正確な左足のキックを持ち味とする司令塔ということで、相手選手からのマークが厳しい。だが、的確なつなぎができる山口が隣にいることで、扇原の負担が軽減されているのだ。ボールを奪うだけではなく、味方にその奪ったボールをきちんと供給するプレーもハイレベルにこなせる山口は関塚ジャパンにおいて欠かすことのできない重要な選手の一人である。

・山口にもスポットライトを!

前述したように活躍が目立つ山口だが、テレビ番組で特集されたり、スポーツ新聞の一面を飾るようなことはほとんど無い。その理由として、彼のプレーぶりが地味であり(地味だからといって価値が無いわけでは決してないが)、清武弘詞、大津祐樹、永井謙佑といった前線の選手のプレーの方が華やかであることが挙げられる。このことに対してとやかく言うつもりは筆者に無いが、恐らく多くのサッカーファンは「山口の貢献ぶりをもっと取り上げて欲しい」と考えているはずだ(筆者もその一人である)。

ロンドンオリンピックの予選、そして本大会でも山口の気の利いたプレーに助けられたシーンは数多い。筆者の記憶が正しければ、各試合の解説者は必ず一回は山口のプレーを褒めている。ここまでの山口の黒子役としての活躍は永井謙佑、大津祐樹といったゴールスコアラーに勝るとも劣らないだろう。準決勝のメキシコ戦でもチームのために働く山口の一挙手一投足に注目していきたい。

2012/8/5 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 『鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックを応援している大学生。ダビド・シルバ、ファン・ペルシー、香川真司など、足元が巧みな選手に目が無いです。野球は大のG党』
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