ロンドンオリンピックが開幕し、なでしこジャパン、U-23日本代表の活躍ぶりに多くのサッカーファンが興味・関心を持っている今日この頃。筆者は日本代表だけでなく、地元イギリス代表(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの統一チーム)の動向にも注目しているが、そのイギリス代表は2試合を終えて勝ち点4を獲得し、グループAの首位に立っている(7月30日現在)。

今回のコラムではスリーライオンズ(イングランド代表の愛称)の今後を、先日幕を閉じたEUROと開催中のロンドンオリンピックから占っていきたい。

・存在感を示したEUROでの戦いぶり

先のEUROではベスト8に進出し、存在感を示したスリーライオンズ。特筆すべきは大会前に辞任したファビオ・カペッロの後を継いだロイ・ホジソンの手腕だ。コンパクトな守備ブロックを短期間で作り上げ、チームに結束力をもたらした。大会後の世界ランキングは6位から4位へと上昇し、カペッロの辞任騒動、ジョン・テリーのキャプテンはく奪問題を見事に吹き飛ばしたEUROだったと言える。

また、今回のEUROでは数多くの若手逸材が確かな存在感を放った。アンディ・キャロル(リヴァプール、23歳)、ダニー・ウェルベック(マンチェスター・ユナイテッド、21歳)がゴールをマークし、アレックス・オックスレイド=チェンバレン(アーセナル、18歳)も堂々としたプレーで抜擢に応えた。彼らの活躍を見た筆者は「スリーライオンズの未来は明るい」と感じたが、それは前述した選手たちの他にも今後のスリーライオンズを背負うべき選手がいるからである。

・逸材たちを一挙にご紹介

例えば、天才司令塔のジャック・ウィルシャー(アーセナル、20歳)。昨シーズンは怪我の影響でリーグ戦の出場はゼロに終わったが、2010-11シーズンに示したフットボールセンスは世界中のサッカーファンを唸らせるものだった。今後はアーセナルだけでなくスリーライオンズでも中心選手として活躍することができるはずだ。

また、昨シーズンのPFA年間最優秀若手選手賞を受賞したカイル・ウォーカー(トッテナム、22歳)も今後の活躍が期待される逸材だ。レンタル先から帰還した昨シーズンは積極的なオーバーラップでチームの攻撃を活性化させ、瞬く間にチームに欠かせない選手に成長。まずは代表定着が目標となるが、いずれは右サイドバックのファーストチョイスとなるだろう。

そして、世界最高峰のセンターバックになれるだけのポテンシャルを持つフィル・ジョーンズ(マンチェスター・ユナイテッド、20歳)、攻守両面でスケール感のある大型ボランチのジャック・ロドウェル(エヴァートン、21歳)、昨シーズンは本職のセンターバックだけでなく右サイドバックも難なくこなし、新境地を開いたクリス・スモーリング(マンチェスター・ユナイテッド、22歳)、卓越したパスセンスを誇るレフティーのジョシュ・マクイクラン(チェルシー、19歳)、スティーヴン・ジェラードの後継者として期待されるジョーダン・ヘンダーソン(リヴァプール、22歳)、ユース出身の生え抜きで、ダイナミックなプレーが持ち味のマーティン・ケリー(リヴァプール、22歳)、18歳の若さでクラブの背番号10を与えられたコナー・ウィッカム(サンダーランド、19歳)など各ポジションに逸材が揃っている。

また、ロンドンオリンピックに挑むイギリス代表には“ポスト・スコールズ”の有力候補であるトム・クレヴァリー(マンチェスター・ユナイテッド、22歳)、昨シーズンはリーグ戦で11 ゴールをマークしたダニエル・スターリッジ(チェルシー、22歳)、昨シーズンのスウォンジー旋風を引っ張ったスコット・シンクレア(スウォンジー、23歳)、EUROの本大会メンバーにも選出された大型ゴールキーパーのジャック・バットランド(バーミンガム、19歳)が選ばれ、自国開催のオリンピックで奮闘している。これだけの逸材たちが順当に育てば末恐ろしいチームになることが予想されるが、実際はどうなのだろうか。カギを握るのは「スタイルの転換」である。

・能動的なフットボールを!

EUROでスリーライオンズが見せたフットボールはDFとMFが「4-4」の守備ブロックを作り、攻撃手段をカウンターに頼る守備的なフットボールだった。

このサッカーはホジソンが得意とするものであるが、世界ランキング上位のチームとは思えないほど「受け身」のフットボールであり、スペイン、イタリア、ドイツ、ポルトガルといった自分たちの技術力を生かしたスタイルと比べると見劣りするものであった。(特に伝統の「カテナチオ」に加え、ボールポゼッションを高めたスタイルを披露したイタリアを見習うべきだろう)ベスト8進出という結果は残したものの、内容面で見るものは余りなかったのが現状である。

ウィルシャー、マクイクラン、クレヴァリー、ヘンダーソンといった若手有望株はボールテクニックに優れる。ならば、彼らの特徴を生かしたスタイルで戦うことが理にかなう選択だ。つまり、守備的な「受け身」のフットボールから自分たちが主導権を握る「能動的な」フットボールへとシフトチェンジするべきということである。

プレミアリーグのチームで例えるならば、アーセナル、マンチェスター・シティ、トッテナムのスタイルが理想である。アーセナルのようなサッカーを展開できるだけの選手は育ってきているだけに、彼らが主力になる前から攻撃的なスタイルを植え付けていくことが求められるだろう。

現在のフル代表にはウェイン・ルーニー(26歳)、ジェイムズ・ミルナー(26歳)、ジョー・ハート(25歳)、セオ・ウォルコット(23歳)など若い時から順調にキャリアを積み重ね、これから脂が乗る選手が多い。彼らとフランク・ランパード(34歳)、ジェラード(32歳)、アシュリー・コール(31歳)、テリー(31歳)といったベテラン、そしてここまで述べてきた若手逸材をどうミックスするか。新たなチーム作りと「スタイルの転換」を注意深く追っていきたい。

2012.7.30 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 『鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックを応援している大学生。ダビド・シルバ、ファン・ペルシー、香川真司など、足元が巧みな選手に目が無いです。野球は大のG党』
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