この試合を天王山と呼ばずしてなんと呼ぼう。

天王山とは「勝負を分ける大事な局面」という意味らしいが、フットボールにおいての天王山は、専ら1位と2位の直接対決、優勝を決める大事な局面(試合)を指すものだ。

そして、この試合はその定義を十分に満たす。両者の勝ち点差は3であるが、2位チームの得失点差は1位チームのそれをリードしているため、2位チーム目線で見れば、「勝てば首位奪取」という条件。逆に、1位チームは「引き分け以上など」と弱気なことを言わず、ホームで勝利を掴み、2位チームの息の根を止めたいという心のうちは言うまでもない。

遅くなったが、ここで対戦カードを明かそう。

今回取り上げる試合は、ドルトムントvsバイエルン・ミュンヘンだ。

前半戦の同カードは、アウェーのドルトムントが、ドイツの若き至宝、マリオ・ゲッツェの虎の子の一点を守り切り勝利した。

しかし、今回はゲッツェが怪我の為にベンチ入りを果たせず、一方のバイエルンは前半戦では怪我で欠場したチームの心臓、シュヴァインシュタイガーがベンチ入りしているように、状況は異なる。そして、両チームのスタメンは前述の選手2名を除けばベストメンバーであり、まずまずの役者が揃った。

序盤からドルトムントはホームの大声援を受け決定的なチャンスを作り出す。ブワシュチュコフスキが裏に抜け出しシュートを試みるが、角度がなく枠を捉えられない。さらに、ゲッツェが欠場する中、良くも悪くもチームの出来を左右する存在である香川が、するすると抜けてクロスを上げ、グロスクロイツがそのボールに合わせるがノイアーが足でストップ。ゴールこそならなかったが、ドルトムントは続け様に決定機を迎えた。

一方バイエルンは、普段のリーグ戦では地力で勝る相手チームと戦うことが多いこともあり、圧倒的なボールポゼッションを武器に攻め立てるケースが多いのだが、この試合ではそうはいかず。ドルトムントの勢いに押される形で、お得意のポゼッションサッカーは鳴りを潜め、DFラインからのロングボールが増加。最前線のゴメスはボールに絡めずに試合から消えてしまったこともあり、段々とカウンターでしかチャンスを見出せなくなり、限られたシュートチャンスもミドルシュートの単発で終わるという苦しい展開に。

なおも押し気味で進めるドルトムント相手に、CKの流れからレヴァンドフスキがヘディングシュートを許し、ポストに助けられるなど前半は辛くも凌ぎったという印象だった。決定機こそは作られたものの、守備陣の奮闘によって最終局面で凌ぎ、香川にも攻撃のタクトを揮わせず、なんとか無失点で乗り切ったというのが相応しい表現だろう。ただ、先制点が欲しかったバイエルンにとっては、決してプラン通りとは言えない前半になったと言えるはずだ。バイエルンはロッベン、リベリーの両翼コンビ。「彼らがどれだけ決定的な仕事を果たせるか」で試合結果が180度変わる存在、ロッベン、リベリの両翼コンビもここまでは不発に終わっていた。

そして、後半もほぼ同じ展開が続き、カウンターから香川がヘディングでゴールを狙うなどホームのファンを沸かせる。だが、このままでは優勝が遠のく一方のバイエルンは、ドルトムントの疲労からくるプレスの遅れに乗じ、徐々に本来の形を作り始めると、ミュラーの代わりにシュバインシュタイガーを入れてクロースをトップ下に。よりトップフォームに近付こうと交代策も切る。さらに、オリッチを入れて活性化させようとするバイエルンに対抗し、ドルトムントもフレッシュな選手を入れ主導権を握ろうとする中、ここでとうとうスコアが動く。

ドルトムントがショートコーナーで一瞬の隙を突き、こぼれ球のミドルシュートをレヴァンドフスキがオフサイドラインぎりぎりでコースを変え、さすがのノイアーも反応できずにドルトムントが先制する。

ようやく試合をコントロールし始めたバイエルンにとってあまりにダメージの大きい失点となってしまった。しかしここからバイエルンは開き直り先制されるまでの膠着した展開が嘘のようにゴールに迫る。

そしてゴール前のパス回しからロッベンが抜け出しヴァイデンフェラーに倒されPKゲット。判定自体はスコアを動かすにはふさわしくないものだったが、ここでキッカー、ロッベンがまさかの失敗。ヴァイデンフェラーが判定を覆したも同然の完璧なストップでドルトムントファンの歓声がスタジアムにこだまする。なおも猛然とバイエルンは攻め立て、ロッベンに蹴り込むだけの決定的なチャンスが訪れるが、ふかしてしまい試合終了。

この試合で守備陣の奮闘むなしく敗れ去ったバイエルンを尻目に安定した戦いぶりを披露したドルトムントは、2位バイエルンとの勝ち点差を6とし連覇を決定的にした。

バイエルンが結局最後まで本来の攻めの形をジグナル・イドゥナ・パルクで見せられなかったことは、はるばるきた赤いユニフォームを着たファンを失望させるには十分すぎた。それに加え2位に甘んじることを強いられ昨季から続くドルトムントへの連敗記録を4に伸ばしてしまった。DFBカップ決勝という舞台でリベンジできることを私は一バイエルンファンとして期待するとしよう。

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※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 平松 凌
プロフィール トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター @bayernista25

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