1月にアル・ワフダからフランス・リーグアンのオリンピック・リヨンへと移籍を果たしたUAE代表DFハムダン・アル・カマリ。渡欧してから1ヶ月半が経ち、トップチームでの出場機会はまだ与えられていないものの、徐々に適応を見せているようだ。
ザ・ナショナル紙のベン・リトルトン記者がアル・カマリにロングインタビューを敢行、フランスでの現状を聞いた。その内容を抜粋してお伝えする。
「4年。ハムダン・アル・カマリが欧州への移籍を待っていた期間だ。1月にリヨンへと到着したとき、そこには雪が降っていた。彼は出来るだけ早く環境に慣れなければならなかった。
『リヨンが寒いと言うことは知っていたよ。でもまさか到着したらそこが大雪とは思わなかったよ。トレーニングは雪だし、雨だし、寒いしで大変だった。難しい環境だったけど、徐々に良くなっているよ』
それは控えめな表現だ。アル・カマリは既にリザーブチームでデビューを飾った。彼がリヨンに貸し出される6ヶ月間のうち、わずか6週間での出来事だった。負傷から復帰直後のデヤン・ロヴレンと共にブール・ペロナスとの試合で好パフォーマンスを見せた。アル・カマリが英語を話せるということも大きい。
先日アル・カマリはオリンピック予選のために帰国し、オーストラリアとウズベキスタンを相手に戦った。フランスでは、予選がAマッチデーに行われないにも関わらず招集された上オーストラリア戦に使われなかったということで、リヨン側が激怒したという報道もあった。しかしアル・カマリはオリンピック出場という歴史的な偉業に立ち会うことが出来た。
『ウズベキスタンとの試合後、“僕はUAEで唯一の海外組にはなりたくない”とチームメイトに言ったんだ。UAEには良い選手がたくさんいる。欧州でプレーするのに十分な選手がね。オリンピックに出るということは、それを証明するチャンスを得たという意味を持つんだ。それは僕たち全員のための絶好の機会だし、それを獲得できた事を喜んだ。オリンピック終了後は、沢山の選手を欧州で見ることになるよ。僕を信じなよ』
彼は4年間欧州への移籍を待った。アル・カマリは今22才であるが、18歳の時に欧州からのオファーが舞い込み、その後すぐにAFC U-19選手権で優勝した。
『当時はアル・ワフダが僕を手放したくなかったんだ。それはリヨンが去年の秋に話を持ってきたときもそうだった。彼らが唯一のオファーでもなかったし。韓国、スイスのチーム、そしてモナコ。彼らは私のために3000万ディルハム(日本円にして約6億6千万円)を支払うと提示した。しかしクラブは首を縦に振らなかったんだ。
リヨンは昨年僕を欲しがっていたんだけど、クラブはそれを僕に伝えなかったんだ。その2ヶ月後に再びリヨンはやってきた。その時、新たに会長となったシェイク・サイード・ビン・ザーイドが“ハムダンは欧州でプレーさせよう。それが我々にとっても彼にとっても良いことだ”と言ってくれたんだ。僕はとても幸せだった。国が僕のために動いてくれた』
パイオニアとして、プレッシャーは感じているのだろうか?
『いや、それは全くないよ。いろいろな方からのサポートを受けているし、それは僕をリラックスさせてくれる。チームメイトも、コーチも、オラス会長も。彼らが背後で僕を助けてくれるから、プレッシャーは感じていない』
リヨンのジャン・ミシェル・オラス会長は、今週アブダビで『来シーズンのCL出場権を失った場合、2000万ユーロの損失を出す可能性がある”と認めており、投資を求めている。来季の胸スポンサーが決まっておらず、新スタジアムの命名権もまだ売れていない。
アル・カマリの移籍については、しばしばUAEとの金銭的なスポンサーシップを求めてのビジネス的な側面が取りだたされている。
『僕はトレーニングのために来たんじゃない。プレーするためにリヨンへ来たんだ。まず僕に何が出来るかを示したい。リザーブチームだけでなく、トップチームでもね。良くなっていると感じるよ。トレーニングの度に何か新しいことを勉強するし、適応でき始めている。UAEの方たちが僕のプレーを見たいと思っている。僕が出来るというところを見せせるために最善を尽くしたいんだ』
リヨンは最終ラインに問題があり、アル・カマリのデビューは近いかもしれない。
DFクリスの400万ユーロという給料は高く、契約が更新される見込みはない。デヤン・ロヴレンは負傷で今シーズンの試合の半分を欠場しており、ジョン・メンサーも今までフルシーズン働けたことは一度しかない。唯一バカリ・コネは昨年夏にギャンガンから加入してからこれまでレギュラーとして19試合に出場している。
ガルデ監督はリザーブチームからサミュエル・ウンティティを昇格させた。彼はまだ18であり、アル・カマリにもチャンスがあることを示唆している。ガルデが信頼する若手は彼だけではない。クレマン・グルニエ、マクシム・ゴナロン、アレクサンドル・ラカゼットが戦力として計算されるようになった。
『彼らは非常に良い選手だ。今あげられた選手以外もいるよ。
ここでのサッカーは高速でとてもパワフルだ。体を強くぶつけてくるし、ボールを持ったら素早い。より早く動かなければいけないし、働かなければならない』
アル・カマリの契約は、1年延長のオプションが付随している6ヶ月のレンタル移籍だ。これまでの彼の進歩、そしてコーチ陣がアル・カマリのプレーに感銘を受けているという事実がある。彼はリーグ3位の座を獲得するのに貢献できるだろう。
『僕はリザーブリーグでは良くやれている。体も切れているよ。ヨーロッパは厳しい舞台だ。しかしこのチャンスを最大限に生かさなければならない。何が何でもトップチームでプレーしたいんだ』」
(筆:Qoly編集部 K)