鹿島アントラーズの新監督にかねてから報道されていた通り、クラブOBのジョルジーニョ氏が就任した。この発表は去年の大晦日に行われたが、年越しせずに決まったというのは、スムーズなチーム作りをする上でプラスであり、大変喜ばしいことであった。今回は前回(https://qoly.jp/index.php/special/184-special/7567-kashima-antlers-2012-preview-vol1)の最後で述べたように、ジョルジーニョ新体制について個人的な意見を語っていきたいと思う。

※当コラムでは今回から新コーナー「ロッシの鹿島リポート」をスタートさせていきたいと思います。今シーズンの鹿島アントラーズを追っていきたいと思いますので、今年もよろしくお願い致します。

・新たに鹿島を去りゆく選手たち

ジョルジーニョ新体制について語る前に、新たに鹿島アントラーズを去っていく選手たちについて触れておきたい。(このコラムを書いている1月24日現在における公式発表は以下の通りである)

 

昨シーズンは横浜FCへとレンタル移籍した宮崎は今シーズンもジュビロ磐田へのレンタルが決まった。筆者は宮崎に大変期待しており、是非ともジュビロ磐田で更なる成長を遂げ、逞しくなって戻ってきて欲しいところだ。また、トリッキーなプレーが持ち味の川島は昨シーズンに続いて2年連続でモンテディオ山形へとレンタルが決まった。モンテディオ山形の新監督に昨シーズンまで鹿島アントラーズでコーチを務めた奥野僚右氏が就任したことは川島にとっては追い風であろう。まずは継続して試合に出場することを目標にして、レギュラー獲りに挑んで欲しい。昨シーズンはレンタル移籍という形で栃木SCへと移籍した鈴木は今シーズンから完全移籍することになった。鹿島では出番に恵まれなかったが、栃木での活躍を期待したい。また、クラブのレジェンドであるアルシンド氏の息子であるイゴールとは今シーズンの契約を結ばないこととなった。まだ19歳と若いだけに、成長して鹿島スタジアムへと戻って来て欲しいところだが、退団後のクラブは未定ということで、早く次のクラブが決まることを願いたい。

そして、多くの鹿島ファンが驚いたのは野沢の移籍だろう。野沢は茨城県笠間市出身でジュニアユースから鹿島一筋であり、生え抜きの選手が移籍したということは大変ショックである。筆者は鹿島アントラーズの選手の中で野沢が一番好きであっただけにとても心が痛い移籍となってしまった。一部ファンからはその持ち前のテクニックや類まれなフットボールセンスから敬意を込めて「変態」と呼ばれたり、終盤戦で貴重なゴールを連発することから「ミスター・クライマックス」との異名を持った野沢。鹿島在籍時に野沢と右サイドでともにプレーし、現在はドイツのシャルケに所属する日本代表DFの内田篤人も「生まれ変われるなら野沢さんのようなサッカー選手になりたい」と発言するなど、素晴らしい才能を持った選手でありながら、何故か日本代表には縁が無く、このことについては多くのサッカーファンが議論を交わしたことであろう。今回の移籍は大変残念であるが、鹿島残留という選択肢もある中で、移籍を決断したということで、野沢の決断を尊重し、新天地での活躍を楽しみにしたい。

・ジョルジーニョ新監督に期待するもの

ここからは本題であるジョルジーニョ新体制について語っていきたい。ジョルジーニョ新監督は1964年生まれの47歳で、現役時代のポジションはボランチ、右サイドバックであった。クラブではラジル国内の名門(CRフラメンゴ、サンパウロFC、CRヴァスコ・ダ・ガマ、 フルミネンセFC)、ドイツの強豪クラブ(バイヤー・レバークーゼン、バイエルン・ミュンヘン)、そして鹿島アントラーズでプレーし、代表では1989年のコパ・アメリカで優勝し、1994年のFIFAワールドカップでも優勝を経験したことのある名選手である。鹿島アントラーズ時代にはサッカー解説者の元日本代表DFの名良橋晃氏がジョルジーニョを慕ってベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)から移籍してきたことは有名なエピソードとして知られている。 現役引退後はブラジル国内で監督を歴任し(アメリカFC、ゴイアスEC、フィゲイレンセFC)、2010年に行われた南アフリカW杯ではドゥンガ監督の下、ブラジル代表のヘッドコーチを務めた。また、フィゲイレンセFC時代にはブラジル年間優秀監督賞の第 2位に輝くなどブラジル国内での評価も高い。監督としての評価を高めているジョルジーニョ監督であるが、クラブに栄光の時代をもたらしたオズワルド・オリヴェイラ前監督(現ボタフォゴFR監督)の後任ということで大変なプレッシャーを感じているのではないだろうか。オズワルド・オリヴェイラ前監督は前人未到のリーグ三連覇、天皇杯優勝2回、ナビスコ杯優勝1回という輝かしい戦績を残した。ジョルジーニョ新監督にもこのような黄金時代の再来を期待したいところであるが、そのためにはまずリーグ戦を制することが求められるだろう。ここ2シーズンの鹿島アントラーズはリーグ戦で4位、6位という成績に終わっている。確かに天皇杯、ナビスコ杯を制し、無冠でシーズンを終えたことは無いが、(こうして考えてみると改めてオリヴェイラ監督の凄さが分かる)リーグ戦を制することが一番優先度が高いことである。まずはリーグ戦を制し、名古屋グランパス、柏レイソルに奪われた国内での覇権を取り戻すことを期待したい。

また、有望な若手選手の育成にも期待したい。現在のチームには大迫勇也、柴崎岳、遠藤康、山村和也、土居聖真、昌子源といった若手逸材が数多く在籍している。彼らと経験豊富な79年組(小笠原満男、曽ヶ端準、中田浩二、本山雅志、新井場徹)、更なる飛躍が活躍される中堅(増田誓志、興梠慎三、本田拓也、西大伍)を上手く混ぜ合わせバランスの良いチームを作りあげていただきたいところだ。

筆者はショルジーニョ新監督の現役時代を知らないが、クラブの歴史に残る偉大なOBということで、大変期待している。ジョルジーニョ新監督のもとには鹿島アントラーズ以外のJリーグのチームからもオファーが届いていたそうだが、愛着のある鹿島を選んだということでやる気に満ち溢れていることであろう。ジョルジーニョ新監督の下、新たな黄金時代の幕開けを期待したい。

2012.1.24 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

 

筆者名 ロッシ
プロフィール 鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援している大学生。今シーズンはプレミアリーグを中心に観ていく予定です。当コラムに関する、感想、意見等がありましたら、下記のツイッターアカウントにどしどしお寄せ下さい。
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